コカ・コーラウエスト、帝京大が健闘も
神戸製鋼とパナソニックが準決勝進出

10日、東京・秩父宮ラグビー場で日本ラグビーフットボール選手権大会2回戦2試合が行われ、神戸製鋼コベルコスティーラーズ、パナソニック ワイルドナイツのトップリーグ4強勢がそれぞれコカ・コーラウエストレッドスパークス、帝京大学の挑戦を退け、準決勝に駒を進めた。
準決勝は16日に、サントリーサンゴリアス-パナソニック(東京・秩父宮)、神戸製鋼-東芝ブレイブルーパス(大阪・近鉄花園ラグビー場)のカードで行われる。

FW力の差を見せつけた神戸製鋼がコカ・コーラウエストを破り、準決勝へ
photo by Kenji Demura (RJP)

1回戦でトヨタ自動車ヴェルブリッツを20-5で圧倒した神戸製鋼と、トップチャレンジシリーズを勝ち上がり、1週間前には筑波大学に順当勝ちしたコカ・コーラウエストの対戦は、前半だけで9トライが乱れ飛ぶ「大味で、2回戦の難しさを感じる」(神戸製鋼・苑田右二ヘッドコーチ)試合となった。

先制したのは、コカ・コーラウエスト。
キックオフ直後の開始1分にFBトゥ ウマガマーシャルが右サイドを突破。相手DFを引きつけながらのラストパスをWTB築城昌拓が受け取り、そのまま神戸製鋼ゴールへ駆け抜けた。
強烈な先制パンチで目が覚めたのか、神戸製鋼も4分のモールでのトライを皮切りに、11分にFB正面健司、15分にSH佐藤貴志、18分に再び正面、23分にCTBジャック・フーリーと5連続トライ。
トップリーグ4強の実力を見せつけるかたちで主導権を握り、いったんは33-10と23点にまでリードを広げた。

切れ味鋭い走りで2トライを挙げた神戸製鋼FB正面。FWが優勢だと決定力あるBKも生きてくる
photo by Kenji Demura (RJP)

昨季まで6季連続でトップリーグで戦っていたコカ・コーラウエストにとっては、この神戸製鋼戦が約1年ぶりのトップリーグチームとの公式戦。
今季は「DFからスコアするアタッキングラグビーを目指してきたが、FWのコンテストで対抗できなかった」(山口智史ヘッドコーチ)ことで簡単に神戸製鋼にトライを許すことに。
それでも、試合後の記者会見でFL豊田将万主将が「僕らのアタックでトライを取れたのは自信になった」と振り返ったとおり、コカ・コーラウエストも27分にNO8上本茂基が相手ゴール前のラックから飛び込んだのをキッカケに、ワイドに振るアタックが神戸製鋼DFを切り裂くかたちで連続3トライを奪って、29-33と4点差にまで迫ってハーフタイムを迎えることになった。

ひたすらボールを動かすラグビーで4トライを奪ったコカ・コーラウエストはあと一歩及ばず
photo by Kenji Demura (RJP)

「前半は横の選手とのコミュニケーションが取れていなかった」(FL橋本大輝)という神戸製鋼がDF面で修正してきた後半は、最初の40分間とはまるで異なる展開となり、コカ・コーラウエストは0得点。
一方の神戸製鋼は、後半7分にコカ・コーラウエストボールのラインアウトをターンオーバーしてNO8前川鐘平が前に出た後、BK陣がSO森田恭平、CTB南橋直哉、FB正面健司とタイミングよくパスをつないで、最後はWTB大橋由和が左タッチライン際を快走して6本目となるトライ。
13分にはスクラムを押し切ってNO8前川がトライを記録し、最終的には45-29のスコアで、コカ・コーラウエストの挑戦を退けた。

帝京大からひたむきさを学んだパナソニック

続く第2試合は、1週間前に対ヤマハ発動機ジュビロと戦った1回戦から11人を入れ替えた先発メンバーで臨んだパナソニックに対して、前人未踏の大学選手権4連覇を成し遂げた帝京大学の健闘が目立った。

WTB北川智のハットトリックなど計8トライを重ねたパナソニックが帝京大の挑戦を退けた
photo by Kenji Demura (RJP)

「パナソニックが若手を出してくれて『ありがとう』という思いだった」
そんな岩出雅之監督の言葉どおりに、立ち上がり帝京大が攻め込むシーンもあったが、完全には相手DFを崩し切るには至らず、逆にパナソニックが20分までに3トライを重ねて19-0とリード。
それでも、「コンタクトも局面のDFでも通用したし、ブレイクダウンで圧倒されることもなかった」(SO中村亮土)という帝京大は、その後の20分間、ほぼ完全に試合を支配。
27分には、すでに日本代表にも呼ばれた経験を持つSO中村が相手DFラインの裏に落としたキックをハーフウェイライン付近でCTB権裕人がさらに足にかけ、最後はパナソニックWTB三宅敬に競り勝ったCTB荒井基植が飛び込んで、帝京大学が初トライ。
31分には、再び荒井がハーフウェイライン付近で、帝京大出身のパナソニックNO8ヘンドリック・ツイのパスをインターセプトして50mの独走トライを重ねた。
後輩たちにトライをプレゼントするかたちとなったツイは「何よりチームとしてプレーできている点が素晴らしい。タクティカルも随分進歩した」と、自らの学生時代と比べての帝京大の進化に目を丸くした。

パナソニックFLバツベイを止める帝京SO中村(右)とHO泉主将。フィジカル面では十分対応できていた
photo by Kenji Demura (RJP)

それでも、後半に入ると「ただのチャンピオンではなく、大学選手権4連覇という日本の歴史を塗り替えた強いチームと対戦するということで、こちらもモチベーション高く臨めた。ひとりひとりの状況に応じた対応力という部分では差があった」(WTB三宅ゲームキャプテン)というパナソニックが、レベルの違いを見せつけるかたちで7分から34分までに5トライを重ねて、いつの間にか50点ゲームに。

この日の秩父宮ラグビー場には、トップリーグ強豪チーム同士の対戦もあった1回戦時よりも多い約8、000人の大観衆が集まったが、史上初の大学4連覇を成し遂げた帝京大学はそんな熱心なファンに対する置き土産というかたちで終了間際の37分にHO泉敬主将自らが「みんなの力で取った」、有終の美を飾るトライ。

「やり切った部分もあるし、成長できる試合にもなった」(同主将)
来季、大学選手権連覇を「5」に伸ばし、日本選手権でのトップリーグへの挑戦で勝利を記録することを目指すことになる帝京大学にとっては、これ以上ない有意義な一戦となったことは間違いないだろう。
一方、6日後にサントリーとの準決勝を控えるパナソニックサイドも「トップ4チームと対戦する時など、ひたむきさが勝敗を分けるということを改めて感じさせてくれた。学ぶべきものが多かった」(中嶋則文監督)と、清々しさだけではない逞しさを感じさせた大学チャンピオンとの対戦に少なくない意義を見出していた。

前半31分のCTB荒井の独走トライなどで前半を14-19で折り返すなど健闘した帝京大
photo by Kenji Demura (RJP)

text by Kenji Demura