「第50回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
マッチリポート

トヨタ自動車ヴェルブリッツ 5-20 神戸製鋼コベルコスティーラーズ

【1回戦/2013年2月2日(土) /大阪・近鉄花園ラグビー場】
第50回を迎えた日本選手権、リーグ戦第4位の神戸製鋼と先週ワイルドカードトーナメントでNECを破って日本選手権出場を決めたリーグ戦第5位のトヨタ自動車の対決。レギュラーシーズン第4節の対戦では今季TL唯一の引き分け(23-23)に終わっているだけに、両チームとも是が非でも雌雄を決したい一戦である。気温14度という春を思わせる晴天の下、花園ラグビー場に5,000人近い熱心なラグビーファンを迎えて、トヨタ自動車のキックオフで幕を開けた。

試合開始直後はお互いにジャブの応酬、双方とも堅実なディフェンスで相手に攻撃の糸口を掴ませない静かな立ち上がりであった。トヨタ自動車は前半12分にキック・攻撃のキープレーヤーであるSOブレットが負傷退場して暗雲が立ち込める。神戸製鋼が徐々にエリアを押し上げて攻撃を繰り返すが、肝心なところでミスが出て、こちらもなかなかペースが掴めない。
均衡を破ったのは神戸製鋼、前半23分にゴール前5mの左端ラックからSO森田が右に大きくキックパス、トヨタ自動車が一旦インゴールでボールを確保したかに見えたがCTBフーリーが奪い取って右中間に抑えた(ゴール不成功で0-5)。圧倒的にボール、エリアを支配した神戸製鋼であったが、これが前半唯一の得点で試合の行方は後半に持ち越された。

後半開始早々の5分、神戸製鋼は突破力のあるHO木津、NO8前川らを投入し、ゲームプランの変更を図る。その結果、神戸製鋼は7分にFLブラッキー、24分にHO木津がトライをあげるなど見事に作戦が的中してゲームをほぼ決定づける(0-17)。トヨタ自動車もようやく37分にBKに展開してCTBイェーツがトライを返すが時すでに遅く(5-17)、逆に終了間際に神戸製鋼SOグラントがPGを追加して勝利をものにした(5-20)。

プレーオフトーナメント・セミファイナルでサントリーに後半逆転負けを喫した神戸製鋼は、攻撃の時間を長くしようと意図したとおり最後まで果敢に攻撃を繰り返し、試合の大部分を支配することができた。しかしチャンスに細かなミスが出るなど精度はまだ不十分であり、リーグ戦4強が中心になることが予想される準決勝以降の戦いに向けて、どう課題を克服してくるかが次戦の見どころとなる。

会見リポート
 

トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○廣瀬佳司監督

「先週のNEC戦ではいいゲームが出来たので、自信を持って今日の試合に臨んだ。試合立ち上がりから良かったが、トライを獲り切れず、そこから終始神戸のペースだったと思う。細かなゲームのあやのところでミスをして、獲りきれないで点差が開いてしまった。選手は良くやってくれたし、戦術、戦略通りに動いてくれた。しっかり神戸に対してプレーしてくれたことを評価している。来年、自信をもってもう少しレベルアップをしていけば、いい成績を残せることが出来ると確信した」

○菊谷嵩ゲームキャプテン

「沢山のファンに来ていただいたが、勝利を見ていただくことが出来ず残念だ。トヨタのメンバーも気持ちは一緒だ。今日、自分達が獲り切れなかったことが課題として残ったので、次のスタートまでにゆっくり反省して、来年に向けて準備をしたい」

──リーグ戦で引き分けた相手の違いは?

○菊谷ゲームキャプテン
「リーグ戦と比べて、神戸、トヨタ自動車両チーム共レベルアップしていたと感じた。自分達のミスで獲り切れなかった後は、自陣エリアから脱出できなかった。また、ラインアウトのミス、エリアマネジメントが課題だったと思う」

──SOブレットのケガへの対応は?

○廣瀬監督
「大きくは崩れていない。黒宮もしっかり準備をしていたし、ゲームプランの変更もなかった。怪我は、ゲーム中に新たな箇所を傷めたものだ」

──ブレット退場の影響は?

○菊谷ゲームキャプテン
「プランの変更もなかった。彼のスキルはエリアを獲ってくれるが、黒宮に変わっても良かった。しかし、FWが彼にいいタイミングでパスを出すことが出来ず、足を引っ張ったと思う」

 

神戸製鋼コベルコスティーラーズ
○苑田右二ヘッドコーチ

「天候も良く、いいグラウンドで試合が出来たことを感謝している。プレーオフのサントリーとの敗戦を踏まえて、この2週間フォーカスポイントを絞ってトレーニングをした成果が今日の勝因だと思う。特にトヨタとはリーグ戦で引き分けていたので、勝って決着をつけたかった。この2週間のハードワークとパーフォマンスが勝因だと思う」

○橋本大輝キャプテン

「素晴らしいコンディションの中でプレー出来たことを関係者の皆様に感謝しています。
今日勝ったことは素直に喜んで、修正することはしっかり修正して、次のゲームに臨みたい、今日は有難うございました」

──2週間フォーカスされてきたことを具体的に

○苑田ヘッドコーチ
「プレーオフのサントリー戦では、アタック時間が少なかったので、アタック時間を多くした。自分達のラグビーは攻撃することがメインなので、アタックにフォーカスしてトレーニングをした」

──ディフェンスでの成長と修正点は?

○橋本キャプテン
「ディフェンスに関しては、要所、要所で悪い点があったが全体に良かったと思う。修正点については、アタックをメインに先週トレーニングをしたので、アタックの精度が上がればもっと良かったと思う」

(記事:石川悟、玉川育夫、蜷川善夫 写真:長谷川昭男 広報担当:村島博)