「第50回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
マッチリポート

帝京大学 115-5 六甲ファイティングブル

【1回戦/2013年2月2日(土) /東京・秩父宮ラグビー場】
朝方降った雨も上がり快晴となった秩父宮ラグビー場。この季節にしてはおかしな陽気で気温も上昇、いつもとは反対方向の南風が吹きつける。昨年と同一カード、風上の六甲ファイティングブルは風を味方につけて一気に攻めて、昨年の雪辱を果たしたい。

望み通り六甲キックオフ先蹴り、帝京陣奥深くに蹴りこむ。帝京はこれを蹴らずに積極的に展開する。帝京はこの日全てのキックオフディフェンスを蹴らずに回すことになる。六甲はこれを止めきることができず、早くも3分、ゴール前左展開からFB竹田がディフェンスラインの間をあっさり抜けてこの日一つ目のトライ。トライラッシュが始まった。ゴールも決まって7-0。

9分、22m付近から今度はSO中村があっさり抜けてトライ。ゴール成功、14-0。
14分、今度はFW。ラインアウトモールからFWがつなぎラックを連取、FL大和田がトライ、ゴール成功21-0。
20分、帝京10m近くラインアウトモールで押し切ってFL大和田が連続トライ。大和田はトライも含めて、リンクプレー、ラッシュによる大幅ゲインなど、この日は出色の活躍だった。左端の難しいゴールをSO中村が決めて28-0。
28分、22m付近、右展開でBKが順に回して大外のWTB磯田が走り切ってトライ、ゴール成功、35-0。
32分、ゴール前スクラムを押し切ってNO8坂手がおさえてトライ、ゴール成功、42-0。
34分、ハーフウェイライン付近からFL大和田が抜けて大きくゲイン、ゴール手前でWTBシオネに追いつかれるもCTB荒井がフォローしてトライ、ゴール成功、49-0。
37分、22mライン付近からSH流が相手BKライン裏に蹴ったボールにFB竹田が競り勝ってキャッチ、トライ、ゴールはこの日初めて失敗、54-0。早くも50点を超えた。
39分、自陣からつなぎにつなぎ、最後はWTB松井が抜けて、FB竹田につなぎ連続トライ。ゴール失敗、59-0となったところでハーフタイム。

後半も早々、1分にラインアウトからFWがつなぎラック連取、LOマニングがトライ。SO中村が左中間のイージーなゴールを外す。このあたりから突然中村のゴールキックの精度が落ちてしまった。64-0。
5分、FB竹田が大きくゲインしてできたラックから右展開、SO中村の横に走りこんだPR竹井がゴールポスト左横に飛び込んでトライ。ここでもSO中村がほぼ正面イージーなゴールをポストに当ててしまい不成功69-0。
9分、22mライン付近で六甲ボールのスクラムを押し込みターンオーバーしてサイド攻撃。FWがつないで、FL松永がトライ。ゴール成功、76-0。
14分、22mライン付近からラインアウトモールを押し切って、19番河口がおさえてトライ、ゴール失敗、81-0。
17分、自陣10m付近でまたもや六甲ボールのスクラムを押してターンオーバー。今度は左に展開しWTB磯田が快足を飛ばして走り切ってトライ。ゴール成功、88-0。
22分、六甲が自陣からつないで帝京陣内22m内まで攻め込む。しかしながら、ここで痛いミス。密集からボールが転がり出てターンオーバー、帝京はこれを展開、WTB磯田がまたもや得意の快足を飛ばして80m近く走り切りぶっちぎりのトライ。ゴール失敗、93-0。
24分、自陣10m付近からWTB松井が抜け出しCTB荒井につないでトライ、ゴール失敗、98-0。
26分、右中間22m付近のラックから左展開、大外のWTB磯田がここでも相手を振り切ってトライ、ゴールは失敗したものの100点の大台にのった。103-0。学生が日本選手権で100点以上取ったのは史上初。
33分、5mスクラムを押し切ってNO8坂手がトライ、ゴール失敗108-0。
36分、またもや六甲ボールのゴール前スクラムを押し込み、ラックサイドを18番木下がトライ、ゴール成功、115-0。

40分を告げるホーンが鳴る中、六甲が最後の意地を見せる。ボールを連取した後、WTBシオネが左ライン際をタックルされながらも40m以上走り切ってトライ。一矢を報いた。惜しくもゴールが外れたところでノーサイド。
115-5の大差で帝京大学が昨年に引き続き2回戦に進出した。115得点は大会新記録。

全国クラブ大会決勝で49-0と断トツの強さで優勝した六甲ファイティングブルも、大学チャンピオンには歯が立たなかった。FWの差が全てをわけてしまった。
帝京はしっかりと体を当てて、思う存分力を出し切った。SO中村のゴールキックが後半入らなくなったところが次戦に向けて気になるところだ。(澤村 豊)

会見リポート
 

六甲ファイティングブルの東田GM(右)と鎌田キャプテン

六甲ファイティングブル
○東田哲也GM

「まず、本当に4連覇の帝京さんの強さは素晴らしいものがありました。もっと低くプレーしようと口を酸っぱくして言い続けてきましたが、思うように試合は運ばず、本来ならスタートから全開でいかなくてはならないのに、大量失点をしてしまい、予想以上の惨敗を喫しました。最後のトケのトライ、皆のトライでもありますが、一矢報いたのが救いでした。まだまだ、クラブのレベルを上げないといけないと実感しました」

──帝京を分析したのか?

「けが人も出て、そういう時間がとれませんでした。反省点です。コンディションと低いプレーをスローガンに掲げてきましたが、そんなに簡単なスポーツではありません。ラインアウト、スクラムでマイボールをほぼ取られては、自慢のBKが生かせません。残念です」

──この点差には違和感があるが?

「クラブ大会で圧倒しない限り、大学チャンピオンには勝てないと、決勝では圧勝できたのですが。ベテラン、若手、助っ人がかみ合った今までで一番強いチームでした。改めて、FWの大切さを実感しました。ボールを持てないと試合になりません」

──クラブの日本選手権に参加する意義は?

「もちろん、クラブにとって日本選手権は大きなモチベーションになっています。どれだけ、全国の檜舞台で大学チャンプ相手に戦えるか、選手にとっても大事です。それだけに、この結果は残念です」

○鎌田崇史キャプテン

「帝京さんのFWの圧力にブレイクダウンで圧倒されました。BKで勝機を見出そうとしましたが、アタックができず、さすがに4連覇されただけのことはありました。ブレイクダウンの強さ、ボール出しの速さは素晴らしかったです。クラブ代表として、負けたチームの分まで頑張ろうと臨みましたが、申し訳ない気持ちでいっぱいです」

── 一泡吹かせたかったのでは?

「もちろん、自分のモチベーションになっています。家族も仕事もある中で、好きなラグビーをして、僕自身、大学ではAチームで出た経験のない選手なので、頑張ればチャレンジできることは一番大切なモチベーションになっています」

──帝京は去年と比べて?

「15人がすごく愚直にプレーする印象です。去年より一層感じました。キャプテンを筆頭に、クリーンなラグビーで、チームとしての姿勢が80分伝わってきました。対戦相手として尊敬できるチームです」

 

帝京大学の岩出監督(左)と森田キャプテン
帝京大学の岩出監督(右)と泉キャプテン

帝京大学
○岩出雅之監督

「この大会には学生の気持ちをリフレッシュして臨みました。学生は一つの達成感があり、ほっとした気持ちもありましたので、直前にもう一度締め直して、臨んだ試合でした。さらにステージを上げるために、率先して厳しい、しんどい、痛いプレーをしようと送り出しました。六甲さんは仕事もある中、一年間、準備してできるだけのことを積み上げてこられたことに敬意を表したいと思います。トップリーグのトップ4のチームとの試合は、目いっぱい、学生の勇気を見せてくれるものと思います」

──日本選手権で115点は新記録だが?

「1プレー、1プレーを積み重ねていこうと、貪欲に行こうと送り出しましたが、学生が集中力を切らさずゲームできたと思います」

──パナソニックに対しては?

「秘策などでなく、堂々とぶつかっていきたいと思います。学生が実感として、もっと頑張らなくてはという試合にしたいです。どんな小さな部分でも勇者であることを意識して、真剣に思い切りぶつかって、学生の精神を見せてくれると思います」

○泉敬キャプテン

「僕たちは学生代表としてチャレンジャーの気持ちでしっかり臨もうと言ってきました。決勝戦以上にレベルアップすることを目指しました。良いところもあったし、悪いところもありましたが、次につながる試合になったと思います。4年生は、次は最後の試合になるかもしれませんが、3年生以下の次のチームにつながる試合にしたいと思います。良いチャレンジができますので、来週一週間、しっかり準備したいと思います」

──プレー面で上乗せできた部分は?

「個人としては、スクラムは非常に良かったと思います。1週間、8人で固まってチャレンジしてきました」

──日本選手権で115点は新記録だが?

「得点は気にせず、一つ一つのプレーの精度を上げようとした結果です。次につながるのではと思います」

──パナソニックに対しては?

「もちろん、勝ちに行く気持ちでいっぱいです。もう一度国立へという気持ちでチャレンジし続けます。得られるものが大きいと思います。ひたむきに泥臭くやりたいです」