「第50回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
マッチリポート

筑波大学 15-47 コカ・コーラウエストレッドスパークス

【1回戦/2013年2月2日(土) /東京・秩父宮ラグビー場】
20日にトップチャレンジを制してトップリーグへの返り咲きを決めたコカ・コーラウエストレッドスパークスが、筑波大学の抵抗に遭いながらも突き放し、神戸製鋼コベルコスティーラーズとの2回戦へと駒を進めた。

筑波大学待望の初トライは、後半も半分近く過ぎてから。将来を嘱望される大型SH内田が、ゴール前ラックサイドを突いて飛び込んだのは、相手に5トライ5ゴールを喫してからだった。しかし、「ボールを動かし続ければ(相手ディフェンスに)穴も開いたし、自分達はディフェンスで粘れたところがよかった点だった」(FB内田主将)という筑波は、その後10分置いてPR古賀がラックからトライするなど最後まで崩れることなく戦った。

古川監督は試合後、「大学選手権でできなかったことをやり切ろうと挑んだ。その結果として、まだまだできてないという現実を知ることができたことは、ここ(日本選手権)まで来たからこそ初めて経験できること」と話し、すでに来季へ向けての目標設定や準備についても口にした。大学選手権で活躍したCTB山下(昴)やWTB福岡が欠場したことや、チャンスで度々ハンドリングエラーが出たことは残念だったが、ブレイクダウンやディフェンスで充分対抗できることを示した。

一方勝利したコカ・コーラは、FLファアマトゥアイヌが活躍。密集サイドでもラインに入っても、その巧みなランやハンドリングで学生を翻弄した。最後は、後ろにそれたパスを反転して右手一本でキャッチし、そのままボールを持ち変えることなく前に向き直り抜け出ると右手だけでパスを放ち、FB原留のトライを演出した。「今季我々の一番の目標(トップチャレンジ1位)を達成した後で、また相手が大学生ということで、(気持ちの面で)難しい試合だった」(山口HC)というコカ・コーラだが、次週には、神戸製鋼コベルコスティーラーズとの2回戦を迎える。同HCは、「トップリーグ昇格にふさわしいチームであることを証明する」と、気を引き締めていた。

湿った南風が強く吹いていたこの日の秩父宮ラグビー場。シーズンも大詰めとなりピッチもだいぶ荒れてきているが、国内の公式戦で使われるのは10日の日本選手権2回戦2試合、16日の同準決勝1試合を残すのみである。(米田)

会見リポート
 

筑波大学の古川監督(右)と内田キャプテン

筑波大学
○古川拓生監督

「本日はありがとうございました。大学選手権でやりきれなかったことをやりきろうと臨んだ試合でした。ディフェンスでは、インサイドブレイクをさせないこと、アタックでは1対1でボールを継続しようと言ってきました。筑波もコカ・コーラさんもボールを動かすチームで、我々がボールを扱うミスが多かったかと思います。まだまだ、こういう舞台で力を出し切れないことが分かったので、3年生以下がこの経験を生かしてやってくれると思います」

──今年の出来は?

「1年1年の積み重ねたものが今シーズンの試合に出ました。やるべきことができれば、社会人に対してもやれると思います。もちろん、すべて80分やり続けることと、フィールドにいる選手全員がそのことを分かっていることが前提ですが」

──社会人との戦いの準備は可能か?

「実際に、このシステムが来年度も同じなら、考えようはあると思います。去年、国立に初めて出て、自分たちのリズムで試合ができなかった経験がありました。今年、この時期までチームを継続して、日本選手権を経験しました。また、次のチームがスタートするときに社会人との試合で勝利することを目標にしていくことも必要です」

──テストなどでコンディション維持は困難だったのでは?

「決勝の後、1週間でセンター試験があり、1週間オフにしました。実際、その間に学生としてやらなければならないこともありましたが、2週間あったので、1回戦にはきちんとした準備をしてきました」

──社会人とのフィットネスの差は?

「今のままではダメです。今年と同じでは、チームとしての成長がありません。この試合を経験した選手がチームの財産です。その意味で4年生に感謝しています」

○内田啓太キャプテン

「本日はありがとうございます。相手が社会人ということで、もしかしたら善戦したらよいとか、良い部分があればとか思って見ていらしたかもしれませんが、僕たちは直前まで、絶対に勝つとモチベーションを上げて臨みました。結果は負けで、それ以上でも以下でもなかったと思います。コカ・コーラさんより走ってゲインできたところもありました。ディフェンスは接点の差で上回られたかと思います。来年以降、3年生以下が頑張ってくれると思います」

──社会人と学生の差は?

「もちろん、一人一人の接点の強さを感じましたが、サポートさえ良ければ十分やれると感じました。1対1の力の差は、社会人の方がはるかに上でした」

──ノックオンなども目立ったが?

「ミスが少ないことを目指したのですが、コカ・コーラさんのプレッシャーが強かったというより、自分たちの精度が低かったからだと思います。滑ったわけでもなく、相手を見たわけでもありません」

──選手はメンタル面、フィジカル面でリカバーできたのか?

「正直、大学決勝戦とまったく同じモチベーションではありませんでした。しかし、帝京戦でできなかったことをやるという気持ちでしたし、皆、絶対に勝つと臨み、気持ちを切らさずにできました」

 

コカ・コーラウエストの山口ヘッドコーチ(右)と豊田キャプテン

コカ・コーラウエストレッドスパークス
○山口智史ヘッドコーチ

「今日は今シーズン2回目の秩父宮での試合ということで、東京のファンの皆様、コカ・コーラ関係者の皆様の応援に感謝申し上げます。大学相手ということで、ちょっと難しい試合でした。トップリーグに再昇格することが大目標でしたので、気持ちの維持が難しかったです。選手のパフォーマンスには納得しています。次の神戸戦は、トップリーグに復帰するチームとして、その価値を証明する試合にしたいと思います」

──筑波戦対策をしたのか?

「コーチングスタッフの仕事ですので、分析しました。選手にポイントを絞って伝えましたが、筑波さんはブレイクダウンの強さ、激しさがあり、タックルエリアでの低さも出させてしまったかと思います」

──神戸戦に向けて?

「今年、うちは、しっかりボールを動かすラグビーを目指してきました。筑波さんも同じラグビーで、今日はネガティブにボールをキープする場面は少ないゲームでした。神戸製鋼戦にも、しっかりうちがボールを動かしてチャレンジしたいと思います。自分たちの力試しの意味でも、相手は強いですが、サテライトでも神戸製鋼のBチームとやって手ごたえを感じていますので、しっかり準備したいと思います」

○豊田将万キャプテン

「筑波さんの激しくて低いタックルに、前半手こずって、やりたいラグビーができませんでした。良いところ半分、悪いところ半分の試合でした。筑波さんも僕らも負けたら終わりの試合で、勝ちにこだわったゲームをしたかったのですが、相手にも意地があるし、今日は相手の良いところを出させてしまったかと思います」

──大学生のポテンシャルは?

「向こうの方がFWの身長、体重が上です。僕らの方が弱っちく見えます。しかし、小さいながら、うちしかできないラグビーをやろうと臨みました。ポテンシャルは筑波さんの方が高いです」