南アフリカを破った代表選手6人が集合
1年前の歓喜、3年後の夢の続きを語る

公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて」の第66回が9月20日、港区の赤坂区民センター区民ホールで行われた。今回は2019年大会開幕までちょうど3年ということもあり、「ラグビーワールドカップ2019日本大会まであと、3年。JAPAN RUGBY、夢の続きへ。」と題し、ゲストとしてラグビーワールドカップ2015イングランド大会に出場した日本代表の大野均選手、田中史朗選手、畠山健介選手、山田章仁選手、堀江翔太選手、アマナキ・レレイ・マフィ選手の6選手、元ラグビー日本代表で2019年大会のアンバサダーを務める大畑大介さん、ラグビー好きのタレント・吉木りささん、司会にラグビージャーナリストの村上晃一さんと、ラグビー実況を担当する矢野武さんを招いて行われた。

■手応えを感じた前半の戦い

冒頭、ラグビーワールドカップ2019組織委員会の嶋津昭・事務総長があいさつに立ち、大会準備の現状について、「それまでは平地を歩んでいくような感じでしたが、この1年間は坂を上っていくように準備をしています」と説明、さらに「2019年日本大会はコンパクトであるかもしれませんが、中身がいっぱい詰まった楽しい大会にしたいと思っています」と、大会へ向けた意気込みを語った。

続いてゲストの大畑さん、吉木さんが登場。司会の村上さん、矢野さんとともに強豪・南アフリカを破ったラグビーワールドカップ2015イングランド大会の放送に携わっていたこともあり、その思い出で盛り上がる。そして、6選手が矢野さんの呼び出しにあわせて登壇。会場から大きな拍手で出迎えられた。

話題はちょうど1年前の南アフリカ戦になり、会場では試合のハイライト動画が上映される。前半7分、日本が五郎丸歩選手のペナルティゴールで先制する場面で会場が最初の歓声に包まれる。村上さんが「日本中はまだ五郎丸のルーティンを知らなくて、ここからフィーバーが始まったんですね」とコメントすると、早稲田大の同級生でもある畠山選手が「本当にただただ悔しいですね(笑)。同級生ががんばっているなーとそのころは思っていたのですが、こんなことになるとは思っていませんでした。今は『おフランス』に行っちゃいましたね」と冗談混じりで語り、会場を笑わせた。

前半29分に日本がリーチマイケル選手のトライ、続くゴールキックも五郎丸選手が決めて10−7と逆転したシーンでは、山田選手が南アフリカの印象について「フォワードは強かったですがバックスは特に強いとは感じていませんでした」と手応えを感じていたことを明かした。

■逆転トライで会場も拍手に包まれる

試合も後半に入ると、会場の全員が結果を知っているにもかかわらずボルテージが高まっていった。逆転に次ぐ逆転という展開が続く試合、選手たちもまるで昨日の出来事かのように1年前の試合で何を思っていたのかを語っていく。大畑さんは、後半32分に南アフリカがスクラムでトライによる5点を狙わずに、確実にペナルティゴールによる3点を取ろうとした場面について、「こいつらかっこいい」と賛辞を送る。

そして試合は29-32で3点を追う展開で日本は、確実にペナルティゴールを狙うのではなく、トライによる逆転勝利を狙いスクラムを選択。そして、42分にカーン・ヘスケス選手が奇跡の逆転トライを決めると、会場はこの日一番の拍手に包まれる。それぞれが367日前のあの瞬間の思い出を語り、会場の1人1人があの瞬間のことを思い出している様子だった。

大ベテランの大野選手は「テレビをつけてラグビー選手が出ているという環境になったのは本当にうれしいです。日本のラグビーワールドカップの歴史といえば、95年南アフリカ大会のニュージランド戦で17-145という大敗をしましたが、その世界へのイメージを塗り替えることができました」と、締めくくった。

■ジョセフ新HCへの期待

あの1戦、そして日本中を熱狂の渦に巻き込んだイングランド大会が終わって1年。選手たちはラグビーワールドカップ2015終了後からトップリーグを経て、2016年から創設された「ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズ」や海外のチームに所属し、スーパーラグビーに参戦した。「ハイランダーズ」に所属した田中は「世界を経験できたことで、日本代表もトップリーグもレベルも上がって、日本ラグビーとして大きな一歩を踏み出したんじゃないかなと思います」と意義を強調。一方で堀江は休みなく戦い続けた肉体的な疲労について「疲れています」と正直な思いを吐露し、「トップリーグ、日本代表、スーパーラグビーでうまく試合数を調整していければいいと思います」と今後の課題を明かした。

話題は今後の日本ラグビーへと移る。日本代表の新ヘッドコーチ(HC)に就任したジェイミー・ジョセフ氏について、田中選手は「簡単に言ったら熱い男ですね、アタックコーチに就任するトニー・ブラウンにスキルをつけてもらえる、いいコーチングだと思います」と印象を語ると、現役時代に日本代表でともに戦った大畑さんは「『試合でできないプレーをするな!』と練習では言っていて、熱い男でした。日本の文化を学ぼうとする選手でしたし、兄貴的な感じで接してくれるので、いい距離感で接することができると思います」と期待を語った。

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■3年後へ選手たちが決意

イベントも終盤になり、3年後の日本大会への思いを選手たちは口にした。大野選手は「41歳になるので、グラウンドに立っていることは想像できませんが、大会成功のために自分の持っているものを全部出して協力したいと思います」と率直な思いを語る。それに対して、畠山選手は「(大野)均さん、いつもあんな感じで言っていますよ。年齢は関係ないと思います。均さんは41歳、僕も34歳ですが、桜のジャージを着るのにふさわしい人間になれるように一生懸命やっていきます」と決意表明。田中選手は「ラグビーが盛り上がるには今しかない、というのを選手、ファン、日本ラグビー協会もわかっていただければ2019年に世界が楽しんでもらえるような大会を開けると思います」とラグビー界が一丸になることを求めた。

加えて畠山選手は、日本のラグビーファンに求めることとして「『このチームもがんばれ、別のチームもがんばれ』というのはとてもありがたいのですが、たとえばトップリーグのときにはあからさまに『私はパナソニック ワイルドナイツのファンだから、サントリーサンゴリアスの選手とは写真も撮らないし、口もきかない』というくらい、野球に負けないチーム愛のようなものが根付いてほしいです。そうなることで、日本代表のときにはそれが一緒になると、素晴らしいと思います」と、ファンのさらなる愛が必要であるという考えを示す。

最後に堀江選手が「3年後に向けて、僕らがラグビーの部分で成長することと、ラグビーを広げる、ということをしないといけません。一日一日を大切にやっていくので、全員で3年後に向けてがんばっていきましょう」と締めくくると、会場は大きな拍手に包まれ、今回の講演は閉幕。その後、選手たちは集まったファンたちとの握手会に参加し、笑顔でファンの思いを受け止め、交流の時間を楽しんだ。

■大畑大介さんにとってラグビーワールドカップ2019日本大会とは

「そこがゴールではありません。2019年がラグビー界はもちろん、僕にとってスタートラインになれるようにしたいです。そのためにはしっかりとした準備が必要で、そうしなければ自信を持ってスタートラインに立てません」