日本選手権
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サントリーサンゴリアス 21-9 パナソニック ワイルドナイツ

【決勝/2012年3月18日(日) at 東京・国立競技場 】

サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック
サントリーサンゴリアスがパナソニック ワイルドナイツをノートライに抑え、昨年と同カードの日本選手権2連覇。そして、06-07シーズンの東芝ブレイブルーパス以来となる、トップリーグと合わせた2冠に輝いた。

試合前から落ちてきた雨で煙る国立競技場に、平林レフリーの笛が響き渡る。サントリーが立ち上がりから押し気味に進めるも、パナソニックに随所でターンオーバーから切り返される展開。しかし、パナソニックFB田邉に先制PGを許した後の26分、サントリーはゴール前まで攻め込んだ後のラックから、SOピシがディフェンスの裏へショートキックしたボールを自ら押さえて逆転のトライ。さらに35分には、「あれが3つの内で一番痛かった」と試合後にパナソニック中嶋監督が振り返ったWTB小野澤の、インターセプトからのトライが生まれた。

後半に入ってからはサントリーの優位がより鮮明になってくる。敵ボールラインアウトを続けて奪い、「SH田中にブレイクさせなかった」(サントリー・ジョーンズ監督)ディフェンスが機能した。パナソニックに連続2PGされ、5点差に迫られながらも慌てず盛り返し、29分には中央付近から丁寧にフェーズを重ねてゴール前へ。最後はSHデュプレアのパスに走り込んだCTB平が飛び込み試合を決めた。

試合前、ハイヤーなど高級車が停まる国立競技場の駐車場で、ボックスキックをチェックしていたデュプレアと、浅い位置でボールを受け再三仕掛けていたピシを軸にした攻めは、これまでチームの中心だったCTBニコラスが目立たないほど、手堅かった。

一方、昨年のリベンジならなかったワイルドナイツは、パナソニックになって初のタイトルを逃した。HO堀江やSOデラーニ、CTBノートンナイトらのラインブレイクにもかかわらず、霜村主将が「チグハグで噛み合ってなかった」と試合後に語った攻めは決め手に欠け、FWも、今シーズン唯一サントリーに土を付けた東芝のような重圧感がなかった。

サントリーFL佐々木ら、両チームとも28歳が多く、この黄金世代には、次のワールドカップでも主力として活躍してほしいものだ。

サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック
会見リポート
 

パナソニックワイルドナイツの中嶋監督(左)と霜村キャプテン
パナソニックワイルドナイツの中嶋監督(左)と霜村キャプテン

◎パナソニックワイルドナイツ
○中嶋則文監督

「お疲れ様です。最後の決戦に、天候の悪い中、ファンの皆様が足を運んでくださったことに感謝申し上げます。こちらにも得点のチャンスがありましたが、サントリーさんは得点に結びつけた差が勝敗を分けたと思います。80分、選手はよく戦ってくれました。今シーズン、最後まで残った選手を誇りに思います。本当によくやってくれました。結果的に負けはしましたが、サントリーさん、東芝さんというライバルがいてこそのシーズンでした」

──この差はプレーの精度にかかわるものか?

「セットプレーは精度が高かったと思います。フェイズの重なりでは、サントリーさんにスローダウンさせられてしまいました。速いテンポでボールを動かし続けられていればと思います。正々堂々と選手は戦ってくれましたし、ブレイクダウン周辺のジャッジは疑問に思いますが、映像を見て、そういう試合状況でも勝てるチームをつくって、来年は臨みたいと思います」

──サントリーの強さとは?

「今シーズンは15人全員がやることを整理し、リアクションされていたと思います」

──ジャック・フーリー選手の投入は遅かったのでは?

「先週もノートンナイト選手がインサイドセンターで良い働きをしていましたし、今日もそうでしたので、ヒーナン選手の故障もあり、上手く替えるタイミングが合いませんでした」

──3つのトライの中で痛かったのは?

「やはり、2つ目のインターセプトが大きかったです。紙一重のプレーで、田邉につながっていればトライが獲れていたプレーです。あそこが一番痛かったですね」

──三度戦って勝ったエディー・ジョーンズ監督については?

「本当に、僕など、エディーさんから見たら、ひよっこの監督ですのでおこがましいのですが、エディーさんの最後の試合ということで、選手が良い力を出していたと感じます。サントリーさんはアタッキングラグビーを貫いていたと思います」

○霜村誠一キャプテン

「お疲れ様です。負けてしまいましたが、ここまで来られたチームメイト、スタッフを誇りに思います。あっという間のシーズンでした。まあ、悔しいですが、チームを誇りに思います」

──前半、良いディフェンスをしながら2本トライを獲られたが?

「獲られたのはセルフジャッジからでした。自分たちがしっかり動けていなかったと思います。ディフェンスは止めていたし、キックを裏に蹴られたのだけが誤算でした」

──トライを獲り切れなかったが?

「やろうとしていることと、やる人がバラバラで、そうするとミスが起きます。ペナルティでボールを渡すという悪循環というか、ちぐはぐでしたね」

──バラバラとは?

「自分たちのミスですね。サインプレーで2次、3次とある中で、ちょっとコンセンサスが取れず、違う組み合わせを使ってしまうところがありました。相手のプレッシャーというわけでなく、自分たちのミスでした」

──サントリーの強さとは?

「もちろん、個人個人もすごく強い選手たちですが、一人一人の役割が決まっていて、その責任を果たした、とてもまとまりのあるチームだと感じました」

サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック サントリー 21-9 パナソニック
 

サントリーサンゴリアスのジョーンズ監督(左)と竹本キャプテン
サントリーサンゴリアスのジョーンズ監督(左)と竹本キャプテン
三笠宮杯
三笠宮杯
サントリーサンゴリアス

◎サントリーサンゴリアス
○エディー・ジョーンズGM兼監督

「まず、パナソニックさんにすごく良い試合をしていただき感謝したいと思います。サントリーも良いプレーをしなければ勝てなかった試合でした。二つ目に、サントリーのメンバーに本当におめでとうと言いたいです。3週間前、フーリー(・デュプレア)が、こんなに練習するチームは世界にないと言いました。ワールドカップ優勝、スーパー15でも3度優勝した男がですよ。選手がそれほど、やり切ってくれました。今年の目標は日本一の攻撃的なラグビーを達成することでしたが、今日は日本一のディフェンスのチームでもあることを証明できて嬉しく思います。来シーズンも同じ結果を出したいと思います。そして、スーパー15のチームに勝てるチームになって欲しいと願っています」

──ディフェンスで良かったのは?

「今日は、田中選手にラインブレイクされたのは1回もなかったと思います。デラーニ選手にもプレッシャーを掛けたことによって、インターセプトトライが生まれました。ディフェンスシステムを信じてディシプリンを守って試合ができました。現実的にパナソニックさんのトライチャンスはなかったと思います」

──今までコーチとして関わったチームと比較して?

「以前、コーチングの本を読んだら、1回でも優勝経験のあるコーチはラッキーであると書かれていました。私はブランビーズでそれを経験し、2007年のワールドカップでも優勝できました。サントリーでも経験できました。トップリーグ優勝の後、日本選手権でも優勝するのはとても難しいです。我々のプレーは真のチャンピオンであることを証明できたと思います。一人の選手に頼るのでなく、チーム力で勝てたと思います。トップリーグ決勝でも平選手の代わりに岸和田選手が良いプレーをしてくれました。次のターゲットは日本が優勝できるようにすることですね(笑)」

──胴上げの時はどんなことを考えていたのか?

「選手たちに十分な力が残っていて、僕を落とすのではないかと(笑)。この気持ちは言葉では言い表せられません。逆にホッとした気分でした。明日、また楽しめるかもしれませんね。都合の良いことに、お酒の会社で働いているのでね(笑)」

──今年のシーズンで苦しかったのは?

「我々に一番タフだったのは、準決勝の東芝戦でした。東芝さんは5週間準備できて、こちらには疲労が溜まっていました。歴史を振り返っても、準決勝で東芝に勝ったチームは優勝できていませんでした。東芝さんと戦うととてもフィジカルな戦いになり、そのあと良いコンディションにもっていくのは難しいです。そこで、今週は52週間の中で一番軽い練習しかしませんでした。木曜日は45分しかしませんでした。チームが良くなったことは、選手が今日の最後の20分に示してくれました。最初の20分と同じように真壁君は動けていました。本当に真壁君はファンタスティックです(笑)」

──この1年の長崎出身の竹本、平両選手の働きぶりは?(長崎新聞社)

「竹本は素晴らしかった。サントリーでキャプテンを務めるのは簡単ではありません。たくさんの選手が大学でキャプテンを経験しています。国の代表のキャプテンも2人います。そんな選手たちが竹本をリスペクトしています。平選手ですが、今日、ジャック・フーリー選手と戦っていましたが、平君の方がスプリングボクスに近かったのではないでしょうか。ハードランも上手だし、今すぐスーパーラグビーに使える選手は誰だとフーリー・デュプレア選手に聞いたら、平だと答えてくれました」

──これからサントリーにどういうチームになってもらいたいか?

「(日本語で)もう1回、2冠獲って(笑)。(英語で)もう一度成長して、スーパーラグビーのチームに勝つまでやって欲しいと思います。2年前、就任したときの一つの目標がスーパーラグビーに勝つことでした。それが来シーズンできたらと思います」

○竹本隼太郎キャプテン

「まず、パナソニックさんに感謝したいと思います。昨年、始動してから52週目でしたが、楽な週は一つもありませんでした。エディさん、コーチ陣、スタッフに必死に食らいついていってレベルアップできました。何が欠けても優勝できなかったと思うと、感慨深いものがあります。チーム、選手として成長し、2冠を達成できて嬉しく思います」

──東芝に準決で勝つと優勝できないとのジンクスがあったが?

「練習のボリュームをコントロールしてもらい、最後の試合に力を出せるようコンディションを整えるのに集中しました」

──2冠を獲る難しさとは?

「やはり、去年と違って狙われる立場です。東芝さんは5週間、サントリーに勝つことだけを考えていたと思います。プレーオフで勝って満足して、精神的に難しかったシーズンでした。終盤の疲れを心も身体もコントロールする意識の高さで乗り越えられました。試合後に、一人ひとりがリカバリーして、個人ケアをする、良い文化ができたと思います」

──竹本キャプテンから見てジョーンズ監督は?

「いや、もう、良いところがたくさんありすぎて、何を言ってよいか分かりません。練習メニューもスポーツサイエンスの最先端を取り入れているし、気持ちもタフでないといけないところを厳しく教えてくれます。この2年間のチームの成長は間違いなくエディーやコーチのおかげです。来シーズンは、この努力を止めないようにしなくてはなりません。(日本代表ヘッドコーチに就任するのは)日本のラグビーにとってすごく良いことで嬉しく思います。サントリーから離れていかれるのは寂しいけれど、これからさらに良いチームにしたいと思います」