日本選手権
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トーナメント表


NECグリーンロケッツ 3-41 パナソニック ワイルドナイツ

【準決勝/2012年3月11日(日) at 大阪・近鉄花園ラグビー場 】

NEC 3-41 パナソニック NEC 3-41 パナソニック NEC 3-41 パナソニック NEC 3-41 パナソニック NEC 3-41 パナソニック
C:2012, JRFU(Photo by A. HASEGAWA)
東日本大震災犠牲者の方への追悼の意をこめた半旗が強風にはためく近鉄花園ラグビー場、第49回日本選手権準決勝 NECグリーンロケッツとパナソニック ワイルドナイツの試合は、一昨年の第47回大会の準決勝と同じ組み合わせ。このときはパナソニック ワイルドナイツ(当時三洋電機)がNECグリーンロケッツを下し、決勝に駒を進めている。

前半パナソニックのキックオフで試合開始、NECはモールを巧くコントロールして前進、ゴール前まで迫るがトライを奪えず。パナソニックも反撃をするがマイボールラインアウトが獲得できないなど序盤戦はがっぷり四つの展開となる。
両チームともブレイクダウンでの主導権の獲得に凌ぎを削る中、パナソニックがNECのモールを封じ込め展開し始めた11分、NECがプレーに間を置いた一瞬、パナソニックは22m左中間ラックから一気に右展開。SH田中からSOデラーニ、 WTB北川とわたり、FLシオネがノーマークでボールを受け取って右中間にトライ。FB田邉が着実にゴールも決め0-7とリードする。パナソニックは17分にも20m中央からFB田邉がPGを決め、0-10とリードを拡げる。

NECは何とか得点の糸口を見つけようとするものの、パナソニックの攻撃に耐えきれず多くの反則で波に乗り切れない展開。逆にパナソニックはPKからのタッチキックでエリアを進め、20分、左20mラインアウトからラック、さらにショートサイドへの展開でHO堀江が左コーナーギリギリのところでゴールラインを割る。TMOの微妙な判定となるがトライと認められ、またもやパナソニックが加点。難しい位置からのGK もFB田邉が確実に決め、0-17とパナソニックが徐々にその差を拡げにかかる。
この後もパナソニックは攻撃の手を緩めない。NECはスクラムが安定せず、22m右中間スクラムではトライ王のWTBナドロが加わるが、スクラムからのこぼれ球をパナソニックNO8ツイにそのままゴールに持ち込まれ、0-24とさらに差が拡がる。

しかし、NECもこのまま引き下がる訳にはいかない。36分、自陣35m左中間ラックからSO田村が右ライン際に位置するCTBツイタヴァキにアイコンタクトを送ると、キックパスがツイタバキの胸にすっぽりと収まり、そのまま一矢報いるかと思われたが、パナソニックのしぶといディフェンスにトライを奪うことができず。この後、20m中央、パナソニックのオフサイドで得たPGをSO田村が難なく決め、ようやく3点を返し、3-24で前半を終える。
前半、NECのブレイクダウンなどでの反則が目立つ一方、試合巧者のパナソニックは、NECをよく分析し、ゲームメーカーでもあるキャプテン ラトゥ、SO田村、トライ王のWTBナドロの出足を封じ込める試合運びを見せた。

前半薄日が差していた花園は、後半に入って一時雨模様となり、バックスタンドからメインスタンドへのファンの移動が始まる中、NECがキックオフ。後半もパナソニックの優位は揺るがず、NECの懸命の攻撃にも、NECのボールを持ったプレヤーの前には常にパナソニックのディフェンスが行く手を塞ぐ。抜けたかと見えた場面でも、パナソニックのディフェンスリサイクルシステムが待ち構えてNECの攻撃を寸断。加えてパナソニックは、NECのブランクゾーンにキックを蹴り込む沈着さでエリア確保を図る展開となる。

このような展開が続く中、後半の先手を取ったのもパナソニック。14分、NECがゴール前30m中央スクラムでコラプシングを犯すと、FB田邉がPGを決め3-27、20分にもゴール前15m中央ラックから連続攻撃を仕掛け、最後はキャプテンCTB霜村が中央にトライ。止めを刺したのは38分、途中出場のSHニコラスがハーフウェー中央ラックのこぼれ球を拾い、ギャップを抜けて22m中央でCTBノートンナイトに繋いで中央にトライ、WTB北川がゴールも決めて3-41とし、NECをノートライに抑え決勝に駒を進めた。
来週、国立競技場での決勝戦の相手は東芝を破ったサントリー。パナソニックは2年ぶりの栄冠奪還を目指し、昨年と同一カードとなった決戦に臨む。(大阪府協会 山林右二・蜷川善夫)

NEC 3-41 パナソニック NEC 3-41 パナソニック NEC 3-41 パナソニック NEC 3-41 パナソニック NEC 3-41 パナソニック
会見リポート
 

NECグリーンロケッツの岡村ヘッドコーチ(左)とラトゥ キャプテン
NECグリーンロケッツの岡村ヘッドコーチ(左)とラトゥ キャプテン

◎NECグリーンロケッツ
○岡村要ヘッドコーチ

「まず今日のゲームを迎えるに際し、ファン、会社関係者、協会関係者の方々に心から感謝したい。ゲームは完敗。パナソニックの早いプレッシャーに何もできなかった。前半はミスも多く、今シーズンの悪いパターンに陥ってしまった。アタックメンタリティを持って戦った1年だったが、果してプレーヤーは今日も 80分間アタックし続けてくれた。第三者からみれば、無理なアタックだったかもしれないが、誇りを持って戦ってくれた。」

○ニリ・ラトゥ キャプテン

「残念な結果に終わった。ミスからパナソニックに先手をとられてしまった。しかし、後半のファイトから、新しいNECを築けつつあると思う。若手が頑張りを見せ、新しい未来が拓けている。トップリーグ、日本選手権と準決勝に残ることが出来たのはチームにとって貴重な財産だ」

──ブレイクダウンで反則が多かったが?

○ラトゥ キャプテン
「スペースをとる場面で、立てずに倒れこんだというジャッジだった」

──50・50パスが多かったが、意図したプレーか?

○ラトゥ キャプテン
「前半は冒険する時間帯でもないので、50・50パスに意図はない。後半は点差が開き、50・50パスでリズムを創らざるを得なかった。その分パナソニックのプレッシャーが厳しかった」

──SO田村が途中で痛んでいたように見えたが?

○岡村ヘッドコーチ
「メディカルサポーターから、プレーできるとの報告があったので、続けさせた。ラインブレイクもしていたし、先発の外国人プレーヤーが機能していたので、田村の交替でマッキンタイアーを投入することはバランスを崩すことになるので避けた」

──今日のゲームプランは?

○岡村ヘッドコーチ
「今まで通りの我々のラグビーを信じて戦うこと。ディフェンスではデラー二の移動プレーをマークして練習してきた」

──来季に向けて?。

○岡村ヘッドコーチ
「チームの強化ポイントは、シーズン途中で浮き彫りになった。来季はまずスピードにこだわること。強みであるモールを活かすため、ラインアウトを修正する。フェイズでのオプションを増やすこと。この3点が来季へのポイントだ」

──キヤノン、パナソニックとそれぞれで力の差があるチームと2週に渡り戦ったことについて?

○ラトゥ キャプテン
「大勝した先週のゲームで油断することなく準備してきたが、今日のNECは90%の力しか発揮できなかった」

──セットプレーについて。

○ラトゥ キャプテン
「プレッシャーを終始かけられ、スクラムでターンオーバーを許してしまった。パナソニックに脱帽だ」

──ナドロについて。

○ラトゥ キャプテン
「チームとして、ナドロにチャンスを与えられなかった。来季は更にいいプレーをみせてくれると信じている」

──来季に向けて。

○ラトゥ キャプテン
「90%の力しか発揮できなかったが、TOP3としのぎを削るゲームを積むことで追いつくはずだ」

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パナソニックワイルドナイツの中嶋監督(左)と霜村キャプテン
パナソニック ワイルドナイツの中嶋監督(左)と霜村キャプテン

◎パナソニック ワイルドナイツ
○中嶋則文監督

「アタック、ディフェンスとも粘り強く戦えた。アタックは意図した動きができ、ディフェンスも80分間、ゲインを切られても粘り強く対応できた。今日で東日本大震災から1年だが、被災地に元気を届けようと、ノーサイドまで精一杯戦うよう鼓舞したが、プレーヤーはよく頑張ってくれた」

○霜村誠一キャプテン

「トップリーグ決勝から2週間修正点を洗い出し、集中力の高いパフォーマンスを保てるよう、ゲームを通じて声をかけ続けた。練習通りのプレッシャーをNECにかけることができ、いい準備期間だったと思っている」

──修正点とは?

○霜村キャプテン
「TL決勝のサントリーにはラックからのホットゾーンで、激しいプレッシャーをかけられてしまった。個々の役割をしっかり確認、準備したが、特にFWの今日の出来は良かった」

──東日本大震災から1年だが?

○霜村キャプテン
「ここしばらく、この1年間自分が何を考え行動してきたか、振り返っていた。今日TVで被災地の方々が懸命に復興へ努力している姿を観た時、自分は今何ができるのか改めて考え、ロッカーで中嶋監督の檄を受け、すべきことを確認してゲームに臨んだ。ラグビーができる環境に感謝し、チームスローガンであるUNITEDに沿って、ひとつになろうと意識した」

──決勝への課題は?

○中嶋監督
「TL 決勝での敗戦から、何が足りないのか、この2週間分析と対策を練り、今日のパフォーマンスで手応えを感じた。しっかりプレッシャーに出ることが課題だが、リスクヘッジのためにカバーリングも必要であり、運動量が鍵になるが、来週はもっといい結果が出るのではないだろうか」

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