キヤノンイーグルス 19-62 NECグリーンロケッツ 【2回戦/2012年3月4日(日) at 埼玉・熊谷スポーツ文化公園(県営熊谷ラグビー場) 】 日本選手権2回戦はどんよりとした曇り空の下でキヤノンイーグルスvsNECグリーンロケッツの一戦が熊谷ラグビー場で行われた。 トップチャレンジシリーズを1位通過して日本選手権に初出場、念願のトップリーグ入りを果たしたキヤノンにとってトップリーグトップ4のNECとの対戦は来年のトップリーグでの戦いを占ううえで大きな試合になりそうだ。 ● NECのキックオフで試合は始まった。 試合開始直後からキヤノンが果敢に攻めてNECは自陣内で攻められペナルティも多く、防戦一方だった。 9分にキヤノンFB田井中がライン参加して抜けて先制トライをあげ、CTB三友が右25m付近から難しいゴールを決めて7-0。 11分、NECのWTBナドロが左タッチラインを相手のタックルをなぎ倒しながら駆け抜けてCTB釜池にラストパスして中央に回りこんでトライをあげSO田村が中央のゴールを決めて7-7にすぐに追いつく。 14分、またもWTBナドロがパスを受けて左サイドを駆け上がり、相手のタックルをものともしないで中央に回りこんでトライを上げ、SO田村が正面のゴールを慎重に決めて7-14と逆転する。 18分、今度はキヤノンがパントを上げてSO橋野が取って中央にトライ、CTB三友がゴールを成功させて再び14-14に追いつく。 25分、SO田村が相手ディフェンスの隙をついて縦突破して抜けて左サイドにいたWTBナドロへパスの演出でナドロ選手が走りきって左スミにトライをあげる。左端の難しいゴールは惜しくもポールに当たり失敗して14-19。 27分、キックオフのボールをNECが捕り、WTBナドロが抜けて前半早々3トライ目のハットトリックをあげて自らゴールを狙うも外して14-24。 34分、NO8土佐がモールからボールを持って中央左にトライをあげ、10番SO田村がゴールを決めて14-31。 前半25分過ぎよりNECがトップ4の実力で徐々にキヤノンを引き離しにかかる。 後半はNECのキックオフで前半同様にキヤノンが積極的にボールを回してNEC陣内で攻めるがなかなかディフェンスを破ることができない。22mの内側に入って再三再四、ラックサイドをFWがついて少しずつNECのディフェンスが下がる。 16分、やっとの思いでキヤノンが左サイドを抜けてWTB瓜生がパスを受けて左スミへトライをあげて19-31。 このあたりから両チームに戦略的な選手の入替が多くなる。 19分、キヤノンのトライに目覚めたNECが怒涛の攻撃でWTBナドロへラストパス、左スミへ自身4トライ目を上げて19-36。 23分、キヤノン陣内10m付近からSH櫻井のショートパントをWTBナドロが片手でキャッチして走りぬけて自身5本目のトライでSO田村がゴールを決めて19-43。 28分、21番森田がパスをもらって相手のラインの穴をついて縦突破してトライを捕り、SO田村がゴールを決めて19-50。 30分、キックオフのボールを積極的に回してWTBナドロへラストパスを放り、ハンドオフで2人を撥ね退けて6本目のトライをあげ、SO田村がゴールを決めて19-57。 35分、キックオフのボールを徐々にキヤノン陣地に入り、ラックから右に回したボールにWTBナドロがライン参加してキヤノンのタックルをなぎ倒して7本目新記録のトライをあげる19-62。 ● キヤノンは3トライをあげて随所に果敢に攻めるいいプレーもありましたが、全体に単調な攻撃が多く、なかなかトライチャンスに結びつかないようだった。 来年度のトップリーグは厳しい試合が続きそうだが、そうならないように十分に準備をして来シーズンを迎えてほしい。 NECは左WTBナドロの1試合最多トライ記録更新7トライと1アシストのおまけつきでナドロ劇場となった。 準決勝のパナソニック ワイルドナイツはナドロと彼へのラストパスに対して徹底的にマークをしてくると思われる。 NECはナドロにマークを外してパスが出せるか、彼が自由に走れるスペースを作れるか、周りの選手がナドロ選手をうまく生かせるかが勝利へのカギになりそうだ。 花園でのナドロのボールを持った走りに目が離せそうにない。(奥山禎晴) キヤノンイーグルスの永友ヘッドコーチ(右)と宍戸キャプテン ◎キヤノンイーグルス ○永友洋司ヘッドコーチ 「たくさんの応援をいただいている皆さんのためにも頑張らなくてはいけない試合でした。私自身、ほんとうに悔しい思いをしています。試合の分析からいろいろな課題は見つかってくると思いますが、今は悔しい、これほど大差をつけられてしまうとは、という思いです」 ──格上のトップリーグのチームと対戦するにあたってのプランは? 「このゲームに関しても今まで通り、ボールを持って勝つというところにフォーカスしていました。NECさんがディフェンスに優れたチームということを認識した上でのプランでもありましたが、そこを崩していくアタックを意識していきました。やはりトップ4のチームは穴が開いてこない、ディフェンスが堅いとあらためて感じさせられました」 ──後半の20分くらいまではいい形をつくれていたと思うが。 「かたちは作れたけども攻め切れなかったというのが今の気持ちです。ただその中にも来季につながるプレーはいくつもあったと思います。結果的には今日でシーズンが終了ですが、チームとしては今日がトップリーグへ向けてスタートの日と考えています」 ──ナドロ選手に対する対策は? 「トライ記録を作られてしまったことは残念です。スペースを与えないようにと練習してきたつもりだったのですが、結果としてナドロ選手に多くボールを持たせてしまいました。対面の選手の能力というより、システム的にしっかりとディフェンスできていなかったと思います」 ──来季に向けては? 「これまで通り、力で勝っていくというのではなく、ボールを持って、ボールを動かしながらトライをとっていくチームを作っていこうと思っています」 ○宍戸要介キャプテン 「悔しいです。ひとりひとりの力の差を見せつけられました。次のシーズンに向けて危機感を持つことができた試合でした」 NECグリーンロケッツの岡村ヘッドコーチ(右)とラトゥ キャプテン ◎NECグリーンロケッツ ○岡村要ヘッドコーチ 「まずはよい環境でゲームをさせていただいたこと、そしてお越しいただいたたくさんのファンの皆様に感謝いたします。ゲームは前半、キヤノンさんの早いプレッシャーに苦しみました。後半は修正してシンプルにボールをしっかりキープして立て直すことができました」 ──試合前にナドロ選手に何かアドバイスは? 「今朝、もっと本気でトライを狙いにいけと言いました。7トライ目指せと言ったら、本当になりました」 ──後半20分ころまでは苦戦した印象だが。 「きょうはリザーブメンバーが良かったです。後半に入ったメンバーにはシンプルにゲインラインとボールキープをと声をかけて送り出しました。結果、スピードアップができて試合を決めることができました」 ──次のパナソニック戦に向けてのプランは? 「今はまだ考えていませんが、チームカラーは似ていると思うので、シンプルに我慢勝ちできればと思っています」 ○ニリ・ラトゥ キャプテン 「準決勝に進めたということはNECにとって素晴らしいシーズンだったと言えます。きょうのゲームについては、早いプレッシャーをかけられることはわかっていましたが、いくつかのミスを犯してしまいました。後半は我々の戦略が機能できたと思っています。よかったところ、悪かったところ、しっかり分析、修正して、次にチャレンジしていきます」 ──次の相手、パナソニックについては? 「強い相手なので、我々もしっかりとやるべきことをやらなくては。プレッシャーをかけ続けることが重要と考えています」