「第49回 日本選手権大会」プレビュー(1回戦)

4日、埼玉・熊谷スポーツ文化公園 熊谷ラグビー場で日本選手権2回戦2試合が行われる。
1回戦を勝ち上がった大学選手権覇者の帝京大学が東芝ブレイブルーパスに、同じくトップチャレンジシリーズ1位のキヤノンイーグルスはNECグリーンロケッツに、それぞれ胸を借りる。
シーズンの集大成を懸けて日本のトップチームに立ち向かう学生、そして地方リーグの雄が波乱を起こす可能性は?
準決勝を見据える東芝とNECの復活具合のチェックという意味でも見逃せない対戦となる。
1回戦では前に出る本来の姿を取り戻した東芝。頂点獲りのためにも帝京大相手に締まった試合をしたい(写真はLO望月)

photo by Kenji Demura (RJP)

トップリーグ同士の対戦となった1回戦を制して2回戦に勝ち上がったのは、東芝ブレイブルーパスとNECグリーンロケッツ。
共に、プレーオフセミファイナルでは不本意な戦いぶりで敗れたが、中5日という少ない準備期間の中、うまく課題を修正してワイルドカード組を退けた。

セミファイナルでパナソニックに敗れた東芝の課題は明らかだった。
「ブレイクダウンにフォーカスして、もう一度前に出よう」(和田賢一監督)
ヤマハ発動機ジュビロとの対戦となった日本選手権1回戦では、立ち上がりこそヤマハの激しいプレーに受けに回る場面も多かったが、時間の経過とともに接点で明らかに上回るようになり、最終的には56-15で快勝。
敵将ヤマハ発動機・清宮克幸監督に「東芝は軽いプレーもなく素晴らしい集中力を見せていた。この先もいけるのでは」と脱帽させるほどの力強さを見せつけて完全復活を印象づけた。

セミファイナルの後は、レギュラー陣の中に自信喪失感も漂ったようだが、練習でBチームが体を張ってAチームに対峙してくれたおかげもあって、立ち直ることができたという。
「(セミファイナル後の)水曜日くらいまでは、練習でもBチームにやられ放題で不安の方が大きかったのが、まずは『試合どうこうじゃなく、Bチームにチャレンジしよう』という意思統一ができて再出発のきっかけをつかめた。その過程がなければ今日の試合はなかったし、負けたことをどれだけプラスにしていけるかにフォーカスして、日本選手権では1試合、1試合大切にしていきたい」(NO8豊田真人主将)

最悪の状態を乗り越えて、一歩一歩頂点に向けての歩みを始めた表れでもあるのだろう。日本選手権2回戦で対戦する帝京大相手にも、LO大野均などの30代数人と40代のFB松田努といったベテラン選手がリザーブに回る以外は、いつも通りのメンバーで大学チャンピオンに立ち向かう決断をしている。

「負けた東芝の怖さを見せたい」(LO大野均)。

準決勝に控える王者サントリー戦に向けて、その東芝の復活ぶりを再確認するには、もってこいの一戦となることは間違いないだろう。

約1ヵ月半ぶりの実戦だった1回戦ではボールを動かすスタイルも見せた帝京大だが、東芝戦の秘策は(写真はSH滑川)

photo by Kenji Demura (RJP)

対する帝京大も1回戦では下が滑りやすい悪コンディションの中、いつも以上にボールを動かすスタイルにチャレンジして、クラブ王者の六甲ファイティングブルから計13トライを奪う猛攻ぶりを見せた(83-12で勝利)。
「自分たちの強味をどう相手にぶつけていくか」(岩出雅之監督)
昨季は同じく2回戦で東芝と対戦して、43-10で敗れているが、当然、それよりもスコアを縮め、あわよくば06年の早大以来となる日本選手権での学生のトップリーグチームからの金星を狙う。

"ビッグハート"NECに"覚悟"で挑むキヤノン

セミファイナル完敗の後、1回戦では際どく神戸製鋼に勝利。NECはかつての日本選手権での勝負強さを取り戻せるか(写真はNO8土佐)

photo by Kenji Demura (RJP)

東芝-帝京大戦に先立って行われるのは、チームとしてはトップリーグ創設以来初のセミファイナリストとなったNECと、トップチャレンジシリーズを1位通過して来季のトップリーグ入りを決めたキヤノンイーグルスの一戦。

前述の東芝以上にセミファイナルでは、いいところのなかったNECだったが、日本選手権1回戦では持ち前の粘り強い守りを前面に出した戦いぶりで神戸製鋼に競り勝った(17-10)。
セミファイナルのサントリー戦では機能していなかったディフェンスを、基本に立ち返るかたちで修正。
サントリー戦で出来のよくなかったキャメロン・マッキンタイアを外して、田村優をCTBからSOに上げたことで、ボールもよく動くようになり、数少ないチャンスにBKで2トライを奪ってみせた。
3人のシンビン退場者を出しながら、相手に奪われたのはペナルティトライのみという離れ業を成し遂げての勝利は、まさに今季、岡村要ヘッドコーチが言い続けてきた「ビッグハート」によるものだったと言っていいだろう。

キヤノン戦でもSOは田村のまま。その若き指令塔と、いまやWTBネマニ・ナドロ以上に、危険な雰囲気を醸し出しているCTBアンソニー・ツイタバキの2人が、BKでのキーマンになりそうだ。

初のトップリーグ昇格を決めたキヤノンにとっては、NEC戦は来季への試金石となる(写真はFL神白)

photo by Kenji Demura (RJP)

一方のキヤノンは、トップチャレンジ最終節でまさかの大敗(17-68)。
日本選手権1回戦の天理大戦も「ミスが多く」(永友洋司ヘッドコーチ)、前半30分までリードを許す苦しい戦いを余儀なくされた(最終スコアは37-13で勝利)。
NECとの2回戦は、いかにチャレンジャーとして持ち前の小気味のいいアタックを続けられるか。
「トップリーグで戦っていくための勇気、覚悟」(同ヘッドコーチ)を示す絶好の機会となる。

text by Kenji Demura