報告: 柳 宏明(日本協会インターン生)

平成23年7月9日(土)、秩父宮ラグビー場からほど近い港区立青山小学校を会場として、東京都体育指導委員広域地区別研修会(第1ブロック)が開催されました。

本研修会は、第1ブロック(港区・千代田区・中央区・新宿区の4区)の体育指導委員を対象に毎年開催されているもので、地域における体育指導委員活動の諸問題解決の方策を探ることを主な目的としており、毎年各区の持ち回りにより開催され、今年度は港区教育委員会事務局、東京都体育指導委員協議会及び東京都が主催、港区体育指導委員協議会が主管を務めました。また、今年度の研修では、2009年2月に港区と日本ラグビー協会が提携協力に関する基本協定を締結していることから、研修会の題材に「タグラグビー」を取り上げていただき、基調講演と実技研修が行われました。

東京都体育指導委員 広域地区別研修会   東京都体育指導委員 広域地区別研修会

東京都体育指導委員 広域地区別研修会   東京都体育指導委員 広域地区別研修会

本研修会の開催に向けて、6月12日には港区体育指導委員を対象とし、同じメニューによるタグラグビー指導者研修会を事前に開催し、本番当日には港区体育指導委員の方々が先頭に立ち指導のリーダーとして活躍していただくための準備を整えて来ました。このような、港区と日本ラグビー協会との二人三脚による取り組みが、両者にとって大変有意義でかつ、特徴とも言える研修会の開催となりました。

当日は例年より早い梅雨明けにより真っ青な快晴に恵まれた反面、ジッとしていても汗がにじむ厳しい猛暑に襲われましたが、東京都体育指導委員協議会・会長の阿部正幸氏をはじめ80名の指導委員等が集まる大規模な研修会となりました。
講師は、東京学芸大学教育学部健康・スポーツ科学講座准教授の鈴木秀人氏に加え、日本ラグビー協会事務局の佐々木文昭(普及・競技力向上委員 育成コーチ)が務め、基調講演と実技研修の2部構成で行われました。

基調講演は「新しいボールゲーム"タグラグビー"の可能性」と題し、ボールゲームの難点を解決する一つの手段としてタグラグビーが注目されるようになった経緯や、タグラグビーの魅力とその教育現場における可能性について約45分間の講義が行われました。

講師の鈴木氏が強調していたのは、「タグラグビーは、ゲームに参加する契機・動機づけとなる基本プレーが易しく入りやすい」といった点でした。攻める場合は、ボールを持ったら前に向かって走るだけでよく、パスが後ろ後ろへと回ってくるので、いつも後ろでゲームに参加できないでいる子ども達にもボールに触れるチャンスが生まれるとのことでした。また、守る場合も、タグを取るという単純な動作で相手の前進を止められるため、守りへの貢献度が実感として得られやすいとのことで、これ等はタグラグビーの大きな特徴として、「運動が苦手な子ども達にも参加しやすい」と言ったメリットが紹介されました。

鈴木氏は、子どもの運動能力・体力は1980年代後半に大きく低下したことを強調し、その原因を「遊びなど、動く経験値を得る機会が減ったこと」と言及されていました。
特に印象的だったのは、子どもの適性値に合った運動をさせることが大事だというお話。「幼稚園児には、大人が運動種目を教えこんだり広いコートを用意するよりも、適度な園庭を用意して自由に遊ばせる方が高い運動効果を得られる」と言ったデータには、指導委員等皆さんも非常に興味を持って聞き入っておりました。回旋塔、馬跳びといった昔ながらの遊びの減少にも触れ、懐かしい遊びの画像に身を乗り出して見入っておりました。

東京都体育指導委員 広域地区別研修会   東京都体育指導委員 広域地区別研修会

東京都体育指導委員 広域地区別研修会   東京都体育指導委員 広域地区別研修会

人工芝のむせ返る暑さの校庭で行われた実技研修では、
・三角ランニングパス(金魚さんパス)
・サークルパス
・タグ取り鬼
・1対1トライ合戦
・宝取りゲーム(ボール集め)
・タグラグビーゲーム
等の基本動作メニューが実施されました。今回は実技研修に約120分という長い時間を取り、指導委員等皆さんにより多くのゲームを体験し、ルールの発展、攻め方・守り方の工夫等を確認しながらの進行となりました。

事前に研修を受講した港区体育指導委員の皆さんは、理解度が高く、動きのデモンストレーションや他区指導委員の方への説明など、率先して指導に携わっていただきました。このような支援・補助と、鈴木氏・佐々木両講師の適切かつユーモアある指導により、スムーズで和やかな実技研修が行われました。
「ラグビー経験者はついつい自分の経験をひけらかす!」という鈴木氏の言葉には指導委員等皆さんにも受け、「タグラグビーには不要なタップキックやスクリューパスを使用したら相手ボール!」という特別ルールに何人かの指導委員が引っかかってしまったことに、更に笑いを誘っていました。

東京都体育指導委員 広域地区別研修会   東京都体育指導委員 広域地区別研修会

東京都体育指導委員 広域地区別研修会

実技研修後、そのまま校庭の日陰で質疑応答とまとめが行われ、子ども達・現場での指導を意識した質問が多数出されました。このように、実技の直後に疑問点や注意点を再確認することは、参加者の理解度向上を促すために非常に有効的な手法と思われました。
指導委員等皆さんには、今後地域のスポーツ振興において「タグラグビーティーチャー」としての活躍が大いに期待される研修会となりました。

本研修会のように、参加者の多い指導者研修会を開催することは非常に稀なことで、大変貴重な機会を作っていただいた上、開催に尽力していただいた港区教育委員会事務局、及び港区体育指導委員協議会の皆さん、ご指導いただきました鈴木秀人氏、及び猛暑の中参加して下さいました第1ブロック体育指導委員等全ての関係者の皆さんに対して、この場を借りて深くお礼申しあげ、研修会報告の結びといたします。

●当日のプログラム

実施時間 内容 時間内訳
13:00 開会式 20分
13:30 基調講演 45分
14:15 休憩・移動 15分
14:30 実技研修 120分
【準備運動を兼ねた基本動作メニュー】
三角ランニングパス(金魚さんパス) 5分
タグ取り合戦、タグ取り鬼 10分
宝取りゲーム(ボール集め) 10分
サークルパス 10分
1対1トライ合戦 10分
給水、休憩等 15分
計60分
【タグラグビーゲーム】
ルールの難易度を変更しながら、その都度解説を入れて実施。 計60分
16:30 まとめ及び質疑応答 15分
16:45 閉会式 10分