マッチリポート
トーナメント表


東芝ブレイブルーパス 43-10 帝京大学

【二回戦/2011年2月13日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

東芝 43-10 帝京 東芝 43-10 帝京 東芝 43-10 帝京 東芝 43-10 帝京
関東地方は、早くから「降雪予報」。重ねて前日は「トップリーグ入替戦」が組まれて、誰もが最悪のグランド・コンディションを予想したが、当日は快晴の天候となる。大学選手権を二連覇した帝京大学とトップリーグ戦一位通過の東芝ブレイブルーパスとの対戦。選手権唯一の大学生vs社会人の好カード。
登録メンバー表を見ると帝京大学は、吉田キャプテンが腰痛で欠場。東芝も廣瀬キャプテン、SH吉田、中居が怪我、湯原、大野らを温存。日頃、下支えに徹している部員を多数起用。よもや「番狂わせ」は無いにしろ善戦の期待が膨らむ。

14:05に谷口レフリーによりキック・オフ。
やはり実力通りに東芝が押し気味に攻めるも、帝京大フィフティーンも必死のディフェンス。
22分、帝京大5m付近のラインアウトより左オープンへ展開。ゴール・ポスト下へ東芝(10)吉田がトライ。均衡を破る。ゴールも成功。
この後、膠着状態。手元メモを見ると「東芝、細かなミスと反則多し」。やはりグランド・コンディションの悪さ、経験の少ない選手とのコンビネーション不足が感じられる。28分、センターライン付近のラックより左展開。SO→CTB→WTBとまわして東芝(11)藤谷がトライ。ゴールも(10)吉田が成功。この頃からラック、モールでの東芝優位が伺える。確かに帝京大のタックルは「止める」事は出来るが、倒せないタックル。この後、38分にも1トライ、1ゴールを追加して前半終了。(東芝19-0帝京大)

後半は、10分前後から両軍メンバー交代。その直後に帝京大ゴール前スクラムよりサイド攻撃。ひとつめのラックより東芝(4)ウォーレン・スミスがトライ。ゴールも成功。
帝京大も富永キャプテンの「岩をも砕く」テーマ通り、チーム一丸となったディフェンスとアタックを試みる。23分、帝京大(22)小野がPG成功。東芝も25分、31分と2トライ、1ゴールを追加する。
36分、場内がこの日一番沸いた場面となる。東芝ゴール前のラックより右展開、早い展開で東芝ディフェンス・ラインのギャツプを帝京大(13)黒川がゴール・ポスト右へトライ。(22)小野のゴールも成功。この後、帝京大も果敢に攻めるも、40分にカウンター攻撃で左スミへ東芝(11)藤谷がトライ。ゴール不成功でノー・サイドの笛。

岩出監督がコメントしていた様に学生チームに「もう少し余裕があれば」の言葉通り、落着いた状況でのゲーム展開。そして選手権のシステム改善が必要だが、このチームならば、トップリーグの中堅クラスとの一回戦での対戦も魅力的だと思う。短い期間での学生チームの吸収力とチーム力向上は素晴らしい。協会は経験のチャンスを広げてほしい。
又、東芝は、次週「三洋電機」との対戦となる。ファン必見の好カード。プレーオフでの敗戦からチーム力をベストの状態にメイキングしてほしい。(武田守久)

会見リポート
 

帝京大学の岩出監督(右)と富永ゲームキャプテン
帝京大学の岩出監督(右)と富永ゲームキャプテン

帝京大学
○岩出雅之監督
「学生がどこまで厳しいプレーを徹底してくれるか、きちんと願いを込めて送り出しました。今日のゲームはトータルでもう少し余裕があれば面白かったと思います。ブレイクダウンはこれまでと同様に良かったですし、セットピースでは足場が悪くプレッシャーをかけられましたが、ラインアウトではこちらも取れましたし、タックルはよく頑張ってくれました。トータルして得点されたのは、自分たちのラグビーを続けることが足りなかったからだと思います。決して満足してはいませんが、学生は良くやってくれました。東芝とのこの一戦のレベルを新チームが体感したことが大きいです。学生は出られない皆の分、体を張っていこうと臨みました」

──強い東芝に対して?
「東芝さんは立ったプレーをして、独特の動きをされるので、学生は意識してくれて、その分寄り過ぎてしまい、ラックでもモールでもリップしてつないでくるので、その分、どうしても外側が空くので仕方なかったと思います。ちょっと余裕がなかったし、その余裕は経験値から来るのだと思います。学生の圧力とは違う東芝さんの圧力のレベルの経験値が少ないと感じました。もう一歩、二歩食い込んでいく余裕があればブレイクダウンも違ったと思います。新チームが体感した中で、コーチ陣、選手の財産になった試合でした」

○富永浩史ゲームキャプテン
「今日は、昨日のミーティングで出た、『点滴岩を穿つ』を目指して戦いました。東芝さんの厚くて強い壁にどうしたら穴をあけられるか、80分という短い時間でどうやって崩していくかをテーマに臨みました。プレーで圧倒できなかったことが敗因ですが、この敗戦を基に、いつか後輩たちが社会人を倒してくれると自分も願っています」

──後半、PGを狙ったが?
「前半もそうでしたが、今日の試合を勝ちに行ったので選択しました。帝京らしいエンジンがかかったと思います。東芝さんを下から仰ぐのでなく、同等の気持ちでないとだめだと思っていました。今日は自分たちの力を100%出すつもりで戦いました。自分たちのディフェンスから、前半20分までは食い止めて、自分たちのリズムで行けば対等に戦えると感じました」

(最後に二人揃って立ち、岩出監督が「どうも1年、応援ありがとうございました」と語り、揃って頭を下げていらっしゃいました)

東芝 43-10 帝京 東芝 43-10 帝京 東芝 43-10 帝京 東芝 43-10 帝京
 

東芝の瀬川監督(右)と仙波ゲームキャプテン
東芝の瀬川監督(右)と仙波ゲームキャプテン

◎東芝ブレイブルーパス
○瀬川智広監督
「日本選手権という素晴らしい舞台で学生チャンピオン帝京大学さんと試合ができ、ありがとうございました。帝京さんはうまい、低いディフェンスで、思うようにいきませんでした。三洋戦はもっとボールを動かして戦っていきたいと思います」

──大野選手と帝京大学の森選手について?
「大野は今シーズン、ほとんど休みなく、正直、疲労が溜まっているので、できれば温存したいと思いました。松田たち、若い選手にも経験を積ませたかったというのも理由の一つです。森選手については、今シーズンに関しては学生ナンバーワンのフッカーだと思っています。対戦したのも嬉しいですし、府中の同じグラウンドで育った選手ですので、来シーズン、一緒にできることを楽しみにしています」

──三洋戦に向けて?
「僕らは『立ってブレイクダウン』を掲げています。東芝をずっと見てきて、一番強いときはグラウンドの中でメッセージを発信していると気付きました。ブレイクダウンで絶対に負けないという気持ちで、この一週間でやり切る、グラウンドですべてを出し切る、そこが大事です。東芝のスタイルは目に見えないが、何が何でも前へ出る、絶対ブレイクダウンで圧倒する、そのメッセージが見ている人に伝わるようにすることです。結果はそのとき、やってみなくては分かりません」

○仙波智裕ゲームキャプテン
「今日のゲーム、スコアは別にして、帝京さんのプレッシャーを受け続けていたかなというのが率直な感想です。感覚はずっとあり、落ち着いてプレーできましたが、もう一つ突き放せたかなと思います。しかし、次があるので、次を見据えてポジティブに捉えたいと思います。来週、すべてをぶつけたいと思います」

──守っていて、3点取られたときは?
「当然、トライを狙って来ると思っていましたので、ショット選択かと。その後、こちらがトライを2本獲りましたので、結局トライを狙いに行った方が良かったのではと思います。3点取られてもねえ。もっとやり合いたい、攻めて来い! という気持ちがありました(笑)」

──三洋戦に向けて?
「三洋さん相手に戦うというより、僕個人としては目指しているラグビーを究めたいと思います。自分たちが満足するプレーをしたいし、見ている人にどういうラグビーか伝わらなければと廣瀬キャプテンもずっと言い続けてきていますし、できると思って準備するし、ポジティブなフィーリングも持っているし、プレーオフに出たときから皆が一つになってきています。結果は付いて来るもので、自分らがやるべきことを信じてやるしかないと思います」