神戸製鋼コベルコスティーラーズ 33-37 サントリーサンゴリアス 【準決勝/2011年2月19日(土) at 大阪・近鉄花園ラグビー場】 C:2011, JRFU(Photo by A. HASEGAWA) 2月中旬にしては暖かな日差しの近鉄花園ラグビー場。第48回日本選手権準決勝は、トーナメントを勝ち上がり勢いのある神戸製鋼と、シードで休養十分のサントリーとの間で行われた。 神戸製鋼のキックオフで前半が開始、立ち上がりの1分、神戸製鋼CTB山本が確実にPGを決め3-0と試合が動き出す。サントリーも5分にPGを決め同点とすると、SOピシ、CTBニコラスの鮮やかなループプレーや持ち前の素早い展開で神戸製鋼のディフェンス陣の裏に出て、6分にNO8竹本、14分にはWTB小野澤が50m独走で3-15とリードを奪う。しかし選手権好調の神戸製鋼も、22分にゴール直前の再三のラックを支配し、最後はSH猿渡が左隅にトライ、難しい位置からのゴールキックを山本が決め10-15、26分にもPGを決め13-15と追いすがり、この後、両チーム得点を重ねて前半を20-20の同点で折り返す。 サントリーは、多彩なBK攻撃で神戸製鋼のディフェンスを崩し、得点を重ねるが、神戸製鋼も、前半の途中からディフェンスのギャップを突いてくるサントリープレーヤーを閉じ込める形でゲインさせず、引き締まった内容の前半であった。 後半、先に得点を挙げたのはサントリー、2分に自陣10mからカウンター攻撃を仕掛け、SOピシがスピードに緩急をつけた個人技でディフェンスを置き去りにし、右隅にトライ、20-25と再びリードを奪う。一方の神戸製鋼はあわてることなく6分に着実にPGを決め23-25と固唾を呑む緊迫した試合展開となる。 レギュラーシーズン上位チームのサントリーは意地でも負けるわけにもいかず、14分には再びループプレーで神戸製鋼のディフェンスを翻弄し、CTBニコラスがトライを奪うと、22分にも神戸製鋼のラックから出たボールの処理ミスをFWがつき再びニコラスがトライ、ゴールも決まり23-37と、ほぼ試合の流れが決まったかに見えた。 しかし、試合の行方はノーサイドの笛が鳴るまで分からない。神戸製鋼はこれ以降猛追をかけ、29分、途中出場でNO8に入ったマカパイトロがハーフウェー中央付近から体格差を活かして抜け、ラックから右展開、FB正面が飛ばしパスをWTBアンダーソンに通し、右隅にトライ、ゴールも決まり1トライ差に追い上げる。 同点ではトライ数の差で勝利のない神戸製鋼は、39分に得た10m中央のPKを一縷の望みを託してPG選択、これを山本が決め33-37として残り30秒の逆転に賭ける。サントリーリスタートのボールを神戸製鋼は勝利へ向け必死にライン際を攻め上がるが、サントリーのディフェンスラインを突破できないと見たか、自陣25mの位置から何とWTBアンダーソンがライン際のスペースにパント‥‥。ノーサイドホーンも鳴ったあと、ボールを持ち続けてトライへ、という鉄則をはずしたギャンブルプレーに観客席からはどよめきが起こる。しかし、このプレーは奏功せず、サントリーWTB長友がボールをとりタッチへ。神戸製鋼には無情のフルタイムの笛が鳴り、ノーサイド。サントリーが神戸製鋼との接戦を凌いで勝利し、日本選手権制覇を目指し2年ぶりの決勝戦に挑むことになった。 神戸製鋼の苑田ヘッドコーチ(左)と平島キャプテン ◎神戸製鋼コベルコスティーラーズ ○苑田右二ヘッドコーチ 「一年間素晴らしい環境でラグビーをさせていただいた佐藤(廣士)社長を始め、会社の方々、ファン、スタッフ、選手やその家族、協会関係者の皆様に感謝致します」 ○平島久照キャプテン 「皆様に素晴らしいご声援をいただき、チームもステップアップできた良き1年でした。このペースを変えず、着実にステップアップできればと思います。今日この場にいられるのも全員が成長した証であり、全ての方々に感謝申し上げます」 ── 一歩足りず、シーズンを終えることについて。 ○苑田ヘッドコーチ 「最終的に勝てなかったのは、私の技量が足りなかったから。決勝進出を果たしたチームの首脳陣より、私の熱意が足りなかったからだ。チームは大きく成長してくれたが、充分な準備をさせられなかった私の責任である」 ──4点差の敗戦について。 ○苑田ヘッドコーチ 「私の‘熱意'とコーチング技量の不足。全て私の責任だ」 ──ゲームのテーマについて。 ○平島キャプテン 「ファーストフェイズで止め、ゲインラインを簡単に超えられない事だったが、1対1の場面で細かいゲインを許してしまった」 ──リーグ戦からの改善点は。 ○平島キャプテン 「気持ちをひとつにして戦えたことであり、精度を高くしてやろうとすることができた」 ──来シーズンに向けて。 ○苑田ヘッドコーチ 「シーズン当初から新しい神戸製鋼のカルチャーを造り直すべく、部員全員が‘MOVING RUGBY'を標榜してチャレンジしてきた。(シーズンの)前半戦は選手たちが半信半疑で、連敗もしたが、シーズンが深まるにつれ、自信が生まれた。これを更に積み重ねていけば、日本一も視界に入ってくる。この悔しさを糧に、新たな神戸製鋼の歴史を造り、全国のファンに恩返ししたい」 サントリーのジョーンズ監督(右)と竹本キャプテン ◎サントリーサンゴリアス ○エディー・ジョーンズGM兼監督 「トライ数で6対3とサントリーらしいラグビーができ、満足している。次のゲームも勝つよ」 ○竹本隼太郎キャプテン 「細かいミスはあったものの、勝ててよかった。神戸製鋼への声援はある意味‘脅威'だったが、ゲーム後‘勝ってくれよ'と暖かいご声援をいただいたことはありがたかった」 ──手応えのあったトライは。 ○ジョーンズ監督 「最後のトライだ。フェイズを重ね、停滞したボールをクイックにつなげてトライできた」 ──後半、ゲームプランの変更はしたのか。 ○竹本キャプテン 「特になかった。普段と違うプレッシャーの中、個人プレーに走るのが怖く、組織で動くことを意識した。振り返っても、前後半で違いは無かった」 ──決勝へ向けての修正点は。 ○竹本キャプテン 「焦りの中で自分たちのプレーをできない場面もあったが、新しいことは特にしない。自分たちのプレースタイルを貫くだけ。ミスは仕方ない。チームでカバーすれば良い」 ──競った原因は。 ○ジョーンズ監督 「ゴールキックでしょう(苦笑)。ミスをカバーするチームの反応が良かった。 (前半、決定的なトライシーンで、ノックオンした)WTB長友は、ハーフタイムで手が見つかったので、後半いいプレーができたよ(笑)。落胆する長友を主将の竹本らが良くまとめてくれた。抽選負けした昨年の日本選手権(1回戦10-10NEC)を糧に、若いチームがよく変革してくれた。サントリーらしく最後のゲームを戦いたい」 ──ミスが頻発した時のチームはどんな雰囲気だった」 ○竹本キャプテン 「チーム内から不満が上がりがちだが、まず落ち着いてプレーに集中することを意識した。後半最後の20分、チャンピオンミニッツ(勝者の発想でこの時間帯を戦い抜くこと)を強く意識し、課題のクロージングというか、締める気持ちを大切に共有した」 ──決勝に向けて」 ○竹本キャプテン 「一週間で、最高の準備を心掛けたい。サントリーのスタイルを貫く覚悟だ」 ──神戸製鋼の印象について」 ○竹本キャプテン 「接点での強さ、いつでも‘狙っている'しつこさは昨シーズンより上だと感じた」