マッチリポート
トーナメント表


三洋電機ワイルドナイツ 33-21 東芝ブレイブルーパス

【準決勝/2011年2月19日(土) at 東京・秩父宮ラグビー場】

三洋電機 33-21 東芝 三洋電機 33-21 東芝 三洋電機 33-21 東芝 三洋電機 33-21 東芝 三洋電機 33-21 東芝
トップリーグ開幕戦で対戦した、三洋電機ワイルドナイツと東芝ブレイブルーパスが、第48回日本選手権準決勝で再戦した。開幕戦では三洋電機が12対7で勝利したが僅差での勝利であり、今回も接戦が予測された。

午後2時5分、東芝のキックオフで試合は始まる。
東芝はこの試合に対する意気込みがすごく、開始直後から激しく三洋電機陣内に攻め込む。特にラックを中心としたブレイクダウンで激しくコンタクトしており、たびたび三洋電機のゴール前まで攻め込む。三洋電機も粘り強いディフェンスで防ぐが、東芝の激しいアタックのため、なかなか攻撃の糸口がつかめない。

17分、東芝は三洋電機陣内22mライン付近からのラインアウトから右に展開。SO-CTB-WTBと渡り、WTB宇薄が縦に切り込んだ見事なトライを奪う。ゴールも成功し東芝が7点を先攻する。21分には、三洋電機ゴール前のラインアウトから左に展開し、ラックを連取、最後はCTBブリューが三洋電機のディフェンス3人をかわし、東芝が連続してトライを奪う。ゴールも成功し、14点差とする。
三洋電機はなかなかボールを奪うことができず、防戦一方であったが、25分、東芝の反則をFB田邊がペナルティゴールを決め、3点を返し3対14とする。

しかし、東芝はその後も攻撃の手を緩めず、三洋電機陣内で攻め続け、28分には、三洋電機スクラムからのハイパンキックをカウンター攻撃し、FW・BKが一体となった攻撃により、FB立川がトライ。ゴールも決まり、前半30分までに3トライ、21点を得る。
三洋電機も防戦一方であったが、じわりじわりと東芝を追い上げ、36分には、東芝が自陣ゴールポストほぼ正面で反則を犯し、ここでもFB田邊がペナルティゴールを決め6対21とする。41分には、この日3本目となるペナルティゴールを田邊が決めて、9対21で前半を終了する。

前半は、東芝が立ってボールを動かし、三洋電機のディフェンスを上回り、また、ブレイクダウンでのボール争奪戦でも三洋電機に勝っていた。これに対し三洋電機は、しつこいディフェンスで対抗していたが、なかなか攻撃の糸口がつかめず苦戦していたが、ペナルティゴールを着実に決め得点を重ね、じわりじわりと東芝を追い上げる。

後半に入ると、前半の苦戦が嘘のように、三洋電機の勢いが出始め、早々からペースをつかみ、7分と10分に立て続けにトライを奪う。特に10分のトライは、東芝のキックオフからのボールをNO8ホラニ龍コリニアシがキャッチし、そのまま大きくゲインしWTB北川にパス。北川は相手ディフェンダーの背後にショートパントを上げ、これを再びホラニ龍コリニアシが押さえるノーホイッスルトライであった。三洋電機は、後半開始の10分間で東芝に追いつき、21対21とする。東芝は、前半終了間際に、SOヒルをシンビンにより欠いたことにより、後半開始からの10分間は苦しい戦いを余儀なくされた。
しかし、ここまで両チームとも、よく走り、激しい攻防を繰り返し、また、ボールをよく動かしており、どちらが勝ってもおかしくない試合展開であった。

23分。東芝は三洋電機ゴール前5mでのスクラムから左に展開するが、三洋電機WTB北川が、東芝SOヒルからCTBブリューへのパスをインターセプト。そのまま約85メートルを走りきり逆転のトライ。ゴールも決まり28対21となり三洋電機がこの試合初めてリードする。さらに三洋電機は、34分にも北川がトライを奪い点差を広げる。ゴールも決まり33対21とする。そのまま33対21で試合終了。

東芝は、前半は連続攻撃により得点を重ねたが、後半は、三洋電機の低く激しいディフェンスにより、前半のようにボールを獲得することができず、得意の連続攻撃に持ち込むことができなかった。一方、三洋電機は、前半、東芝のブレイクダウンでの激しいコンタクトよりやや浮き足立ち、ほとんど攻撃をすることができなかったが、落ち着いてペナルティゴールを着実に決め得点を重ねた。そして、後半、一気に試合をひっくり返した。また、後半は、得意のディフェンスにより東芝に得点を許さなかった。

この試合は両チームともに持ち味を十二分に発揮した試合であり、どちらが勝ってもおかしくない見ごたえのある試合であった。
勝った三洋電機は、日本選手権4連覇を目指して、2月27日にサントリーと対戦する。

会見リポート
 

東芝の瀬川監督(右)と廣瀬キャプテン
東芝の瀬川監督(右)と廣瀬キャプテン

◎東芝ブレイブルーパス
○瀬川智広監督
「日本選手権準決勝、しかも相手がトップリーグチャンピオンで日本選手権三連覇中の三洋電機さんということで、秩父宮にたくさんのファンの皆様が来てくださって、嬉しく思います。最後まで死力を尽くして戦ってくれた両チームの選手に感謝します。どうしても勝ちたい試合で、チーム一丸となって戦いましたが、やはり三洋さんが上でした。しかし、東芝も『オリジネイト』を掲げて、選手は今日の試合にそのことを込めて戦ってくれました。日本一になるという目標をもってまた来年戦うことができます。ありがとうございました」

──14人で最初の10分を守らなくてはならない後半だったが、ハーフタイムの指示は?
「一番大きいのは、敵陣で勝負するということです。守るのでなく攻めること、チャンスがあればモールで時間を使って攻めるのを忘れずに、と送り出しました。しかし、ボールが全然獲得できず、守る時間が長かったので、そこで体力的にもいろいろなものを失ったと思います。14人でもボールキープできればよかったのですが」

──ゲームプランは?
「三洋さんは完璧に近いエリアマネジメントをしてくるし、ディフェンスもしっかりと強いので、立ってブレイクダウンを動かす、それだけです」

──悔やまれるとしたら?
「準備していた攻撃がうまくいったところはあります。前半はボールさえあれば得点できるという感覚はありました。後半、悔やまれるのはボールがなかったことです」

○廣瀬俊朗キャプテン
「まず、両チームのファンの方に、試合場に来ていただき、感謝しています。試合は、東芝の選手は本当に良く頑張ってくれました。誇りに思います。プレーオフで負けて、その後ようやくメンタル面も上がってきてこの試合に臨みました。ちょっと勝ちを逃がしたなあ、という思いはありますが、三洋さんが素晴らしかったと思います。今年はここで終わりますが、もっと強い東芝をつくって、来年は勝ちたいと思った試合でした。楽しかったです」

──リーグでも5点差で敗れたが、どう思うか?
「どうと言われても、『悔しい』の一言です。ただ、これでチームが終わりではないし、この負けを繰り返したくはないので、この負けを忘れず精進したいと思います。今日、ブレイクダウンで三洋さんを追い込んだのは間違いなかったと思います。敗因はレフリー対応とシンビンが痛かったのと、オプションミスがあったのがもったいなかったです。勝ちを逃がしたというところです」

──勝ちを逃がしたとは?
「東芝はメンタルが高かったです。準決勝は待っているチームは難しいのですが、三洋さんもいつもの三洋さんじゃなくて、チャンスだなと思いました」

──こつこつ、3点ずつ返された場面は?
「三洋さんらしいな、という感じでした」

──圧迫感は?
「ありませんでした」

──北川選手にインターセプトされた場面は?
「オプションミスと言ったのはそこです。BKのオプションとして、あそこでウイングが上がって来ていたので、僕と仙波で確実に行っておけば良かったと思います。あそこで外を回して獲れたら素晴らしいですが、確率としては低いし、コミュニケーション不足でした」

──後半は?
「三洋さんは、後半、ずいぶん変わったと思ったし、東芝は変わらなかったと思います。10分、ヒルがいなかったので苦労しましたが」

──ブラウン選手が抜けて?
「FWは圧力を感じたのではと思います。ゲームマネジメントもエリアマネジメントもトニーは上手いから、BKとしては、いないほうが楽でした」

(最後に2人揃って立ち、瀬川監督が『1年間、どうもありがとうございました』と述べていました)

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三洋電機の飯島監督(右)と霜村キャプテン
三洋電機の飯島監督(右)と霜村キャプテン

◎三洋電機ワイルドナイツ
○飯島均監督
「もう、凄く興奮して、マイクを使っているのに叫んでいました。本当に凄い試合でした。相手の東芝さんに3トライ取られて、もちろん、監督ですから諦めるなと言いますが、本当に40分で逆転を諦めないで戦い、そして勝った選手を褒めたいです。凄い試合でした。東芝さんのコンタクトが強く、ダメージを受けましたが、本当に難しい状態から、どんなに苦しい試合でも終わりまで諦めないで戦ってくれました。チームとして一つステップアップした試合でした。日本選手権の最後の試合に残れて、三洋電機ワイルドナイツとして決勝に出られるのは嬉しい限りです」

──指示は?
「低いタックルをしないと差し込まれるので、やろうと。数年間やってきたフィットネスの面では、終盤、東芝さんが足をつったり、姿勢が悪くなったりしていました。東芝さんは前半から凄く激しく来ていましたが、少しずつ下がってきた印象でした」

──決勝戦は?
「サントリーさんは非常に速い展開のチームです。この2試合、リードされて逆転していますが、泣いても笑っても最後の試合です。キックオフから、走り回って日本一になりたいです」

○霜村誠一キャプテン
「お疲れ様です。本当に凄い試合でした。やっている自分たちも思いました。前半、一人ひとり強い東芝さんが、どんどん前へ出てきて、『すげえ強いな』と思いました。パニックになることはなかったものの、正直、行けるかと不安もありました。皆も思っていたかもしれませんが、『諦めるな』と声を掛け合って戦いました。トニーさんの怪我で入江が入って、凄く声を出してコントロールしてくれて、チームが生き返りました。敵陣に入って行くというシンプルなゲームプランで、諦めず、もう1本敵陣でやろうと言い合って、皆が同じことを思って同じ行動をする凄さを改めて感じました。東芝さんという特別な相手に、良いゲームができたと思います」

──前半、どう修正したのか?
「本当にシンプルに、敵陣へ行くということだけでした。当初のプランでハイパントを蹴ったらカウンターを食らって自陣に釘付けになってしまいました。入江がしっかり立て直してくれて、ノートンもキックで陣地を取って、皆同じ意識になったと思います。ゴール前ラインアウトで、もっとモールで行きたかったのですが、あそこは東芝さんも強いですね。6点目を狙ったときに、もう一度ここまで来て前半を終わろうと声をかけましたが、結果、そこまで行けて、9点目を取れたのは凄く大きかったんじゃないでしょうか」

──ハーフタイムでは?
「12点差に追い上げて、ここからどれだけ獲られないようにするかと、あとは自分たちがどれだけ獲るかと。アタックの時間を継続しようと。ロッカーを出るときは、こういう状況(を逆転したこと)は何度も経験があるから、自信をもっていこうと声を掛けました。皆、まとまってくれました」

──後半は相手が一人少なかったが?
「一人足りなかったが、具体的に何をしようということはありませんでした。ただ、一人少ないことは頭に入れておこうと、10分のうちにどんどん敵陣に行こうと言いました」

──去年の決勝のトヨタ戦を見ているようだったが?
「確かに。何でしょうね。何かやられてからやり始めるという感じですね(笑)。息を吹き返すというか、こういう状態が、皆、好きなんですかね(笑)。最初からやりたいが、我慢するという状況になってしまいますね」

──北川選手のインターセプトトライは?
「ゴール前でのディフェンスのシステムがいろいろあって、それをやりました。智規(北川智規)は狙っていたと言っていました。僕がタックルして顔を上げたら、あいつが走っていました」

──サントリー戦は?
「プレーオフで勝っているので、やりづらい相手ですが、1週間、勝つことだけを考えて練習したいと思います」