マッチリポート
トーナメント表

神戸製鋼コベルコスティーラーズ 27-17 トヨタ自動車ヴェルブリッツ
【1回戦/2011年2月6日(日) at 大阪・近鉄花園ラグビー場】

神戸製鋼 27-17 トヨタ自動車 神戸製鋼 27-17 トヨタ自動車 神戸製鋼 27-17 トヨタ自動車 神戸製鋼 27-17 トヨタ自動車 神戸製鋼 27-17 トヨタ自動車
C:2011, JRFU(Photo by A. HASEGAWA)
トップリーグ、リーグ戦3位のトヨタ自動車ヴェルブリッツと5位ワイルドカードで出場の神戸製鋼コベルコスティーラーズとの日本選手権1回戦。リーグ戦ではトヨタ自動車がホーム瑞穂で3PG差の16-7で勝利を挙げているが、実力的にはほとんど差のない両チーム、神戸製鋼にとっては今シーズン最後に何とか4強の一角を崩して上位に進出したい悲願の一戦、トヨタ自動車にしてもファイナリストとなるためにはここで負けてしまうわけにはいかない。地元関西同士の対決、穏やかな気候にも恵まれバックスタンドほぼ一杯の観衆が詰めかける中、試合は、トヨタ自動車のキックオフで始まった。

前半立ち上がりトヨタ自動車が神戸製鋼陣深く攻め込むが、神戸製鋼がこれを防ぎきった後は神戸製鋼ペース。8分、14分とトヨタ連続攻撃に耐えきれずラックでの反則を犯し、神戸製鋼SOグラントいずれもPGを決めて6-0と幸先のよいスタートを切る。しかし、21分トヨタ自動車は、相手オフサイドの反則でタッチに蹴り出しゴール前5mの右ラインアウトからモールを形成、押し込んでFLホップグッドがトライ、ゴールも成功し6-7と逆転する。
しかし、今度は神戸製鋼29分、中央のラックからSH猿渡がサイドを衝いてフォローしたFL橋本に繋ぎ中央トライ、13-7とひっくり返す。この後37分、10mライン付近中央で神戸製鋼のオーバーザトップの反則からSOアイイは難なくPGを決め13-10とし、前半を僅差で折り返す。

後半先手をとったのは、またも神戸製鋼、7分相手キックを受けた神戸製鋼FB濱島がハイパントで返したところをWTB大橋が好捕しディフェンスを振り切ると中央の空いたスペースに走り込んだFL橋本にパス、そのまま中央にトライ、神戸製鋼18-10と差を拡げる。14分には神戸製鋼の連続攻撃にトヨタ自動車、ホールティングの反則を犯しCTB山本PGを決め、21-10とし、さらに30分相手のハイタックルで得たPGで24-10と得点差を2T2Gに拡げる。
しかし、トヨタ自動車ここで踏ん張り、33分自陣ラックサイドをWTB水野がブレイクすると内につけていたSOアイイに繋ぐともはやノーマーク、中央にトライし24-17と1T1G差に詰め寄る。しかし、神戸製鋼SOグラントが見せ場を作る、36分ラックからのパスアウトをゴール前30mほぼ中央からドロップキックを蹴り込みDG、27-17と再び差を開ける。この後トヨタ自動車40分を過ぎるまでゴール前に神戸製鋼ディフェンスを釘付けにする猛攻で攻め立てるが、神戸製鋼ディフェンスが頑強に守り切り、最後SH猿渡がタッチに蹴りだして熱戦に終止符を打った。

トヨタ自動車の敗因の一つは、選手間のコミュニケーションの不足を窺わせるチグハグな動き、特にラストパスのミスにあった。朽木監督は否定したがやはりキーとなる選手を欠いた影響が出たためと考えざるを得ないだろう。一方、神戸製鋼は、平島キャプテンの言葉どおり「ウインドウマンス以来厳しい練習を重ねて、しようとしてきたことが全てできた」今シーズン最高の出来で、この明暗が現れた試合だった。勝った神戸製鋼は今シーズンの台風の眼、NTTドコモレッドハリケーンズとの2回戦に臨む。

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会見リポート
 

トヨタ自動車の朽木監督(右)と北川ゲームキャプテン
トヨタ自動車の朽木監督(右)と北川ゲームキャプテン

◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○朽木泰博監督
「この時期としては素晴らしいグラウンドコンディションをご提供くださった協会関係者の皆様に感謝を申し上げたい。敗因はアタックし切れなかったことに尽きる。ミスは大小にかかわらず、どんなゲームでも起こり得ることであり、神戸製鋼のプレッシャーがきつくても、それらを上回るアタックを継続したが、結果、一歩及ばなかった。シーズン終盤のタイトなスケジュールの中、チームを支え続けた全部員、スタッフに感謝したい。今シーズンはこのような形で終えてしまうが、状況に応じたプレーの難しさを痛感した。来年はこの悔しさを忘れず前進して欲しい」

○北川俊澄ゲームキャプテン
「ミスが多く、ゲーム途中で修正できなかった。各セクションのリーダー達と意思統一ができず、勝てるゲームを落としてしまった。獲るべき場面で獲り切れなかった」

──主力の欠場が響いたか?
○朽木監督
「怪我でスタイルが変わるようなチーム作りはしていない。出場するプレーヤーの個性に合わせた戦いができるようなチーム作りだ。ただ、プレーヤーが100%力を出し切れなかった点については、監督としての責任を強く感じている」

──足りなかった点とは?
○朽木監督
「戦術・戦略として、ポテンシャルとして他チームに劣っているところは無い。が、ここ一番のプレー、つまりリスクを犯して戦う度胸が足りない。スマートにプレーすることは良しとして、厳しい局面でリスクを背負ってプレーするだけの自信が、紙一重だが、未だ無い。今日に限って言えば、"図太さ"が神戸製鋼に比べ足りない」

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神戸製鋼の苑田ヘッドコーチ(左)と、平島キャプテン
神戸製鋼の苑田ヘッドコーチ(左)と、平島キャプテン

◎神戸製鋼コベルコスティーラーズ
○苑田右二ヘッドコーチ
「この2週間良い準備ができ、その結果大きな一勝をもぎとった。福岡サニックス、トヨタ自動車とトップリーグ序盤で敗れたチームに借りを返すことができた。ウインドウマンス期間中のハードワークが実を結んだと思う」

○平島久照キャプテン
「勝ちたいという気持ちがトヨタを上回った。さらなるアップセットを目指し、次のゲームへの準備をしていく」

──すべきプレーができたか?
○平島キャプテン
「すべきプレーとはアタックの継続と、身体を張ったディフェンスだったが、できたことで勝利につながった」

──TL序盤とのチーム状況の違いは?
○苑田ヘッドコーチ
「(福岡サニックス、トヨタ、近鉄の)3連敗から学ぶことは多かった。今季は実力至上主義を掲げチーム作りをしてきたが、勝ち残った若手にとって経験値やコンタクトの激しさ等足りないものを体感した序盤だった。シーズン中盤のヤマハ(発動機ジュビロ)やNTTコミュニケーションズ戦から80分間やり切る力がつき、自信につながった」

──フィジカルの強いトヨタ対策とは?
○苑田ヘッドコーチ
「ミスからのターンオーバーから得点につなげる確率の高いトヨタ自動車だけに、アタックの継続は強く意識した。トヨタ自動車はファーストフェイズからトライを獲る、また6フェイズまでにトライを獲り切ってしまう等の確率が高いとデータが示していたので、ボールが動き出す所で芽を潰すディフェンスを徹底した」

──対トヨタ自動車戦に関して、TLとの違いは?
○平島キャプテン
「今季は怪我で出場していなかった・・・(苦笑)。1対1の局面でしっかり身体を張れたこと、プレーの精度もアップしたことが違うと感じた」

──久々の日本選手権勝利だが?
○苑田ヘッドコーチ
「選手権勝利云々より、トヨタに勝つ準備だけに専心していた。とはいえ日本一へのチャンスがあるのだから、やるべきこと、しっかりした準備をトヨタ戦同様行い、日々僅かでもステップアップしていきたい。プレーヤーはシーズン当初、半信半疑だっただろうが、自信がついてきたのではないか。傍目からも個人の質が上がっていると感じている」

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