2年ぶりに戻ってきた砂漠の中のセブンズの聖地で

世界を驚かせるベスト8入りを狙うサクラセブンズ

 

11月30日、12月1日の2日間に渡って、アラブ首長国連邦のドバイでHSBCワールドラグビー女子セブンズシリーズ(以下ワールドシリーズ)第1戦のドバイ大会が行われる。

 

今年4月に香港で行われた昇格大会を制して2年ぶりにコアチームとしてワールドシリーズ全大会に参加することになったサクラセブンズとしては、目標とする8強入りを達成し、1シーズンでコアチームからの降格を余儀なくされた2シーズン前から大きく成長していることを世界に向けて発信したいところだ。

 

2年ぶりに戻ってきたドバイセブンズ。

「昇格戦で勝つために時間をかけて厳しい思いをしてきたので、自分たちでつかんだという感覚は前回よりある」(中村知春キャプテン)

 

3月の昇格大会を制し、2年ぶりとなるドバイでの大舞台に立つサクラセブンズ
photo by Kenji Demura

 

3月に昇格を決めた後、地元の北九州大会(4月22、23日)、そしてクレルモンフェラン(フランス=6月24、25)に招待チームとして参加。秋にはラグビーワールドカップ(RWC)セブンズ2018予選も兼ねていたアジアラグビー女子セブンズシリーズ(以下アジアシリーズ)2017(韓国大会=9月23、24日、スリランカ大会=10月14、15日)を完全制覇した。

 

「メンバーは変遷しているし、毎回、毎回、チームをつくっていく感覚もある。大黒田(裕芽)とか、若手だった選手が中堅になってチームを引っ張っていってくれている」

中村キャプテンがそう語るとおり、遠征メンバー12人中、2年前のドバイセブンズを経験しているのは中村、大黒田に加えて、桑井亜乃、横尾千里の4人のみ。10代4人をも含む20歳以下の選手が過半数を占める圧倒的に若いチームとして、世界最高峰のワールドラグビー女子セブンズシリーズに臨む。

 

若い選手が多い中、中村主将、桑井など2年前を知るメンバーが経験を生かしていかに引っ張るかもポイント
photo by Kenji Demura

 

大会初日のプール戦で日本が対戦するのはオーストラリア(昨季総合2位)、ロシア(同5位)、イングランド(同8位)の3チーム(対戦順)。

当然、再昇格を果たしたばかりの日本にとっては格上ばかりだが、稲田HCは3チームに関して以下のようにその印象を語る。

「どの相手も大きくて足が速いが、オーストラリアはラグビー的なうまさもある。ロシアは小細工はしてこないで、思いっきり走ってくる。イングランドは過去2大会くらいは選手が15人制に行って、ワールドシリーズはメンバーを落として戦っていたのでデータがあまりないが、3試合目なので最初の2つを分析して、細かいサインプレーなどは見ていきたい」

 

 

「トリプルアクション、プレッシングセブン、

フィジカルファイト」が大きな3テーマ

 

そんなプール戦を経てカップ準々決勝に勝ち上がることーー。

つまり、ベスト8以上が今大会のサクラセブンズの目標だ。

 

参加12チームを3つのプールに分けて戦い、プール戦の1、2位に加えて3位のチームにもカップ準々決勝進出の可能性が出てくる(プール戦3位の3チーム中、勝ち点等で上位ランクとなった2チームもカップ準々決勝へ)。

 

「大きなテーマを3つ挙げている。トリプルアクション。つまり、ひとりが3回仕事すること。プレッシングセブン。7人がプレッシャーをかけ続けて相手のスペースを奪うということ。そして、フィジカルファイト。フィジカルのところで絶対に逃げないこと」

稲田HCは、再昇格したばかりのワールドシリーズ初戦で目標の8強入りを果たすためのポイントをそう説明する。

 

「基本的なところはアジアシリーズの時と変わっていないが、今回相手のスピードが全然違う。中国戦などで追いかけて止められていたのが、このレベルではWTBまで回されたら止められない。フィジカルなプレッシャーが全然違う中、相手のスペースを奪うというところを意識してやってきた。アジアシリーズの時よりレベルアップしている」(同HC)

 

大会初日は男子の大会(HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ)がまだ始まっていないこともあり、女子トーナメントも4万4000人収容の「ザ・セブンズ」メインスタジアムで行われる。

 

「ボコボコにやられた」と、中村キャプテンは2年前の記憶を呼び戻してくれたが、確かに奇しくも今回と同じ対戦相手だったオーストラリア、イングランドに対して0ー43、0ー35といずれも大差で完封負けを喫している。

 

そして、プール戦のもうひとつの対戦相手は今年、地元・北九州大会で大敗(5ー29)したロシア。

 

サクラセブンズにとってはいずれもやり返したい相手ばかりであり、それでなくともモチベーション高く臨むことは間違いないコアチームとしての復帰大会のプール戦で、いきなり因縁の相手とばかり当たることになる。

 

「やっと戻ってこられた。1年間、ワールドシリーズに出られなくて、ずっとためていたものを発揮したい。初戦、オーストラリア、そこだけを見ている。相手がスイッチが入っていない状態だったら、その隙をつければいいし、体格差、フィジカル差はあるけど、埋めるためのトレーニングをしてきた。いいタックルをして、ボールを奪って、いいパスをして。みんながトライをしてくれるのをひたすらサポートし続けたい」と、2年前を知るメンバーの気持ちを代弁してくれたのは横尾。

 

一方、アジアシリーズでは、思い切ったプレーぶりでチームを牽引する活躍を見せた最年少(=17歳)の平野優芽は「セブンズ専用スタジアムがあるのがすごい。アジアでは、やってきたことが出せて自信になったので、世界の相手にもどれだけ出せるか楽しみ。自分の持ち味であるステップやハンドオフでチームに勢いを与えるようにしたい」と、”初ドバイ組”を代表して抱負を語ってくれた。

アジアでは厳しい状況の中、力強い走りが光った平野。「ドリームチーム(ベスト7)」入りが目標だ
photo by Kenji Demura

 

「相手に何かさせてから止めるのではなく、何もさせないくらいプレッシャーをかけていく。セットプレーでしっかりボールを獲得して、アタックを継続していく。アタックの時間を長くしていけば、いけるという感触はある」

 

目標は8強入り。プール戦では豪州、ロシア、イングランドに対して失点を抑える戦いも必要になる
photo by Kenji Demura

 

鍛え上げてきた3つのテーマを前面に出して世界トップにチャレンジする戦いが始まる。

 

 

text by Kenji demura