NECグリーンロケッツ 38-5 帝京大学 【2回戦/2010年2月14日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】 初の大学日本一となり、1回戦でクラブチャンピオンの六甲ファイティングブルを大差で下した帝京大学が、同じく1回戦で優勝候補の一角であったサントリーサンゴリアスを同点に抑え抽選で2回戦に進出したNECグリーンロケッツ相手にどこまで挑むことができるか、注目の一戦が約8,000人の観客が見守る中、帝京大学のキックオフで開始された。 序盤は、お互いハイパントで攻め込むなど気迫こもる戦いぶりであった。NECは得意のモールで相手ゴール寸前まで迫るが帝京大の必死の防御によりトライには至らない。帝京大は、ハイパントやロングキックで相手陣内に攻め入るが相手のプレッシャーが強く、パスミスやターンオーバなどによりチャンスを活かせない。 NECは自陣内での相手ラインアウトからFLラトゥの突破による素早い展開で、相手陣内22mライン内側まで一気に攻め込む。16分、ついにラインアウトモールをそのまま押し込みFLラトゥがトライ(5-0)。 さらに、NECは自陣内での相手攻撃をターンオーバーし、ロングキックで深く攻め入り相手ペナルティを誘い、相手ゴール前でのラインアウトモールからFLラトゥが27分、2つ目のトライ(ゴール成功12-0)。 しかし、帝京大学も負けていない。30分、帝京大はFLツイやNO8中田の突進を交えた連続攻撃を仕掛け、SO森田、FB船津と回し、WTB富永がトライ(12-5)。これで勢いづくかと思われた帝京大は、FL野口やLO福田が積極的な密集突破をみせるものの接点での強さやボールへの絡み方などで上回るNECの固い防御に阻まれ、攻撃が続かない。一方、NECはスクラムからNO8日高の突進で大きく右に展開、モールでゴール前に攻め込むものの帝京大が必死の防御。35分、NECはゴール前スクラムからNO8日高が右ブラインドサイドを突きトライ(ゴール成功 19-5)。 後半、帝京大の反撃が期待されたがNECの勢いは止まらない。帝京大ゴール前で得たペナルティからFLラトゥが突進。相手に止められラックとなるがFL権丈がフォローする間、直ぐに起き上がりボールを拾ったラトゥが、5分、そのまま右隅に三つ目のトライで差を広げる(ゴール成功 26-5)。 9分、NECは相手陣内22mでの味方ラインアウトから左右への連続攻撃を仕掛け、SO松尾からロングパスを受けたFB吉廣が、乱れた相手防御ラインを突破してトライ(33-5)。 18分には、帝京大のペナルティを誘い、相手ゴール前5mで味方ラインアウトから右に展開、ラックとなりCTBロコツイが右サイドを突いてほぼ試合を決定づけるトライ(38-5)。 しかし、帝京大は最後まで攻撃を諦めず、最後の約10分間はNECを自陣内に釘付けに。ノーサイド前の5分間、帝京大は相手ゴール前5mでチーム一丸となりひたすらトライを取りに行く。二度の相手ペナルティではいずれもスクラムを選択、スクラムサイドを攻め、さらに相手ペナルティを誘う。味方FWの突進からバックスによる連続攻撃で果敢にゴールに迫るものの、ターンオーバーされ万事休す。NECの途切れず、激しく隙のない防御により2つ目のトライを得ることはできず、学生としての最後の試合となった。(小林吉文) 帝京大学の岩出監督(右)、野口キャプテン ◎帝京大学 ○岩出雅之監督 「今日のこの悔しさを学生の財産にしてほしい試合でした。ここまで、ステージを昇って来られたという達成感と、学生はまだまだ伸びるという実感とをあわせて感じています。新シーズンに頑張るべき重要性を感じた試合でした。もう少し、我々の強みである接点で、体をしっかり入れるよう指示してありましたが、前半はそこが甘かったと思います。後半は接点で負けていなかったと感じましたが、相手にゆとりを持たせてしまい、さすがに学生につけ入る隙を見せてくれなかったと思います。気持ちや技術の部分で、まだまだ伸びさせていただくことができたのは収穫でした。長いシーズン、4年生中心に、良く学生がやってくれました。今日、自分たちにやりがいがあったのは、NECさんが本気で向かって来てくれたからです。応援の皆様も本気で臨んでくださっていましたし、我々にとって最高な幸せを感じました。それに応えるよう、精一杯、学生は頑張ったが、もっと成長できると感じた部分もありました。NECさんに感謝し、敬意を表します」 ──4年生のスタメンが多かったが? 「4年生だから、最後に入ったということは一切ありません。コンディション的に出場したメンバーに4年生が多かったということで、それぞれ良くやってくれました」 ○野口真寛キャプテン 「今日の試合は、完敗でした。本当に、今日ここまで来ることができて、帝京にとっての財産になる試合でした。今日まで支えてくださった皆さんに感謝します。今日、負けた悔しさをバネに、後輩たちはきっと来年もこの舞台に立ってくれると信じています」 ──学生として日本一になってから長いシーズンだが? 「本当に嬉しく思います。ここまで来ることができたのは、大学生では僕たちだけですので、大学生の代表として戦いました。長いシーズンやれたのは幸せです」 ──トップリーグ相手に通用した部分は? 「帝京のタックル、ブレイクダウンはNECさんにも通用する部分がありました」 ──改めて社会人が強いと感じた部分は? 「トータル的に、強いです。ブレイクダウンもやはり強かったと思います。個々も強いですが、一人目の寄りの勢いが違いました」 ──最後の局面でスクラムを選択したのは? 「まず、スクラムで自分たちの自信のあるところで勝負したいということと、あのときの点差で言えば、これからにつながる良い経験をしたいという気持ちで、8人で勝負に行きました」 (最後に2人で起立し) 岩出監督「良いシーズンを過ごすことができたのも、報道の皆様のご指導があったからです。ありがとうございました。新チームもよろしくお願いします」(報道陣から大きな拍手) NECグリーンロケッツの岡村ヘッドコーチ(右)と、ラトゥゲームキャプテン ◎NECグリーンロケッツ ○岡村要ヘッドコーチ 「帝京さんの大人びたゲームマネジメント、特にコンタクトエリア、スクラム、選択の上手さなどに苦しんだゲームでした。NECとして、3度、学生との試合を経験していますが、基本プレーのミスからリズムが崩れて、雰囲気に飲まれて悪いパターンになるという分析をしていました。今日も基本プレーのミスが出ましたが、ハーフタイムで修正し、基本的なプレーでゆっくり出ることができたのがこの勝利につながりました」 ──後半の後半はうまくいかなかったが? 「あそこも、うちのハイタックルでのシンビンからリズムが崩れました。危険なプレー、ペナルティで最後は流れがつかめませんでした。リーグ後半から良いゲームができてきたのはペナルティをしないというのがポイントでした。一つの教訓とし、もう一度修正していきたいと思います」 ──リーグ後半からの勝ちパターンの要因とミラクルの手ごたえは? 「選手がチームを信じることです。ストラクチャーを全員が信じていくことが一番です。特にディフェンスで、ストラクチャーで壁となったことが大きな要因です。ミラクルについてですが、まず、ミラクルを待っていたり、起こそうとしたりしてできることではありません。実力でミラクル10を奪い取りに行く事が重要です。奇跡は望んでいません。感じることは、一つ一つ勝っていくことがそれにつながるということです。今日も、帝京さんに育ててもらったので、一歩一歩近づいていきたいと思います」 ──三洋電機のイメージは? 「三洋電機さんのディフェンスは我々ととても似ています。ディフェンスから相手を疲れさせ、我慢しきれないところを突くところもそうです。エリアマネジメントでこちらがイライラしたところでトライを獲るゲームにしたいでしょうから、しっかりメンタル面を鍛えて、基本プレーを大事に臨みます」 ○ニリ・ラトゥ ゲームキャプテン 「ハードな試合になることは分かっていましたが、最初の得点まで時間がかかり、完璧ではなかったが、結果には満足しています。ポジティブに三洋電機戦に向かっていきます。練習でやるべきことはたくさんあるが、しっかり準備していきたいと思います」 ──三洋電機戦のストラクチャーについて? 「我々のストラクチャーを信じ続けることが大切です。三洋さんは日本のトップチームです。我々にとって、とても大きな試合になると思います」 ──レベルの落ちる学生との試合で? 「今日はチームとして前へ行くことに集中していました。ゲームコントロールを頑張ったが、アタックのとき、細かい仕事を忘れてしまったし、ミスも多かったので、それによって苦しみました。突き放せなかったのは、選手がエキサイトして、完璧ではなかったからです。今日の試合を糧として、練習で修正したいと思います。帝京さんは本当に素晴らしいチームです。スピリットを見せてくれました。凄いチームだったと思います」