マッチリポート
日本選手権


NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス 17-50 トヨタ自動車ヴェルブリッツ

【2回戦/2010年2月14日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

24回大会に3回目の優勝を飾って以来の日本一を目指すトヨタ自動車ヴェルブリッツが、前半の大量リードを守ってNTTコミュニケーションズ シャイニングアークスを突き放し、準決勝進出を決めた。

前日の氷雨の影響が残るピッチを、前半はトヨタが縦横無尽に駆け巡った。中央付近のラックからSH麻田主将、NO8菊谷でサイドを突破、アイイに繋いで挙げた最初のトライ。
中央スクラムから右へアイイとWTB水野でゲインした後のラックから、今度は左へ大きく展開してWTB久住が挙げた2つ目や、自陣でキックを受けたアイイのカウンターからフィールドをいっぱいに使って最後はFLホップグッドが仕留めた5つ目など、見事な攻めを披露。

この日はイェーツに代りFBに入ったアイイの卓越したラン、新鋭CTB山内のキレのある動きやハンドリング、オールラウンドな動きでチャンスを生み出す菊谷などが活躍した。

ところが、前半終了直前NTTに初トライを許すと、後半に入っても25分頃までは沈黙。試合後「フラストレーションが溜まる展開だった」と麻田主将が語ったように、後半33分にベテランCTB難波がやっと後半最初のトライを上げるまで、全くチャンスを作り出せなかった。その後2トライを追加して最終スコアは50-17とトップリーグ3位の面目を保った格好だったが、「準決勝の東芝戦に向け、今日精度の低かったブレイクダウンを修正しなければならない」と石井監督は反省した。

来季からのトップリーグ昇格を決め、1回戦で辛くも東海大を制してきたNTTは前半、トヨタの「イーストでは感じられないような圧力」(SH中山主将)の前に1トライがやっと。しかしその圧力にも慣れてきた後半、FBに入ったM・ジェラードの活躍もあり、試合の均衡を生み出した。NTTジャージの小さめの背番号が、その体躯をより大きく見せているこの元豪州代表アウトサイドBKは、ボールが破裂するのではないかと思わせる音とともに遠くへ弾き飛ばすようなキックと、パワフルなランでチームを牽引した。最終的にスコアは離れたが、今日の対戦は「来季トップリーグで戦っていく上での課題も見えた」(山本監督)貴重な体験だったようだ。(米田)

NTTコミュニケーションズ 17-50 トヨタ自動車 NTTコミュニケーションズ 17-50 トヨタ自動車 NTTコミュニケーションズ 17-50 トヨタ自動車
会見リポート
 

NTTコミュニケーションズシャイニングアークスの山本監督(右)、中山キャプテン
NTTコミュニケーションズシャイニングアークスの山本監督(右)、中山キャプテン

◎NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
○山本和林監督
「ありがとうございました。今日はたくさんの観客の皆様に我々の集大成を見ていただき、良かったと思います。勝負ですから、勝てなかったことは悔しくて、この悔しさを忘れずに来シーズンに向けて頑張っていきたいと思います」

──今後の補強等は?
「もちろん、今の選手のレベルアップが第一ですが、様々な方からの指摘にもあるとおり、ブレイクダウンの強さと一人ひとりの精度は重要な課題です。トヨタさんより、我々のほうが、後半はよく走ったという印象がありますが、ポイントでの精度が、後手、後手に回った理由だと思いますので、この辺りが補強の考え方になります」

○中山浩司キャプテン
「ありがとうございました。チームにとってはじめての日本選手権で、強豪のトヨタ自動車さんとの試合ということで、今シーズン積み上げてきたものをすべて出すと皆で言って臨んだ試合でした。前半、ちょっとトップイーストではないような圧力に一歩、二歩、受けに回ったところの差が出たと思います。後半は圧力の部分で、一歩も二歩もサポートが入れるようにしようと確認し、結果にはつながらなかったが、意識したことは何とか出せたと思います。来シーズン、トヨタさんと当たるときにどうすべきか、収穫になった試合でした」

──どの辺りが足りないと感じたのか?
「我々が遅れている部分としては、トップリーグでは気持ちより先に体が動いていると感じました。今年は力が出せるよう、この部分を修正したいと思います」

──現在の力は出し切れたか?
「ちょっと、ディフェンスの部分では、普段と違う圧力で、自分たちの力を出すまで時間がかかったと感じました。後半にちょっとトヨタさんの圧力がどこにくるかが分かりだして、良いプレーを出せました。次は、最初から出せるように、今日、試合に出た選手がチームとして機能できるようにしたいと思います」

NTTコミュニケーションズ 17-50 トヨタ自動車 NTTコミュニケーションズ 17-50 トヨタ自動車 NTTコミュニケーションズ 17-50 トヨタ自動車
 

トヨタ自動車ヴェルブリッツの石井監督(右)と、麻田キャプテン
トヨタ自動車ヴェルブリッツの石井監督(右)と、麻田キャプテン

◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○石井龍司監督
「まず、次に進めることができたのは良かったと感じています。後半、約20分ほど、相手に攻められ続けたのは反省点で、次に生かしていかねばならないと思います。今日はブレイクダウンをコントロールできていませんでしたが、東芝さんはブレイクダウンの強さがありますので、次の試合に向けて、しっかり練習していきたいと思います」

──試合ごとにバラツキのある印象だが?
「確かに、1試合、1試合、ムラがあるチームです。まだまだ、発展途上の問題があり、これを80分間できるチームにしていかねばなりません。今週、しっかり整備して臨みます。反省点は、ビデオを分析し、時間をかけて考えていきます」

──馬場選手の起用の理由は?
「前回の神戸製鋼戦で、けが人が続出しまして、谷口、中山、(スティーブン)イェーツが今日の出場を見合わせました。次は中山とイェーツはおそらく大丈夫だと思います。他は、今日のけが人も含めて難しいと思います」

○麻田一平キャプテン
「久しぶりの秩父宮の試合で、前回とグラウンドコンディションがまったく違って、しっかり準備してきましたが、予想以上に足をとられ、前半は思うようなアタックができず、フラストレーションが溜まりました。ブレイクダウンを修正して当たるようにしましたが、コントロールしたアタックができず、相手の攻撃も強く、やっていて、これでは次の試合は通用しないと感じました」

──それはトヨタのせいなのか、または、NTTのディフェンスが良かったのか?
「トヨタのみの反省点です。NTTさんのプレーの質は関係なく、キャリアとサポートプレーヤーの判断の問題です」

──東芝のイメージは?
「ブレイクダウンの激しさ、トライを獲る集中力が素晴らしいチームです。多分、チャンスはお互い少ないので、獲り切る集中力が鍵となります。今年もブレイクダウンの激しさに負けたので、しっかり練習して臨みます」