トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝
C:2010, JRFU(Photo by A. HASEGAWA)
マッチリポート
日本選手権


トヨタ自動車ヴェルブリッツ 23-10 東芝ブレイブルーパス

【準決勝/2010年2月20日(土) at 大阪・近鉄花園ラグビー場】

第47回日本選手権準決勝、花園ではトヨタ自動車ヴェルブリッツとトップリーグ王者・東芝ブレイブルーパスとの対戦となった。トヨタ自動車は2回戦であった肝心なところでのミスなど、この一戦に向けどこまでプレー精度の修正ができているのかがポイントとなる。一方の東芝は、トップリーグ2連覇を果たし、3週間実戦から遠ざかっているものの休養十分、3年ぶりの日本選手権制覇を目指す。

前半、トヨタ自動車が地域を支配し、東芝陣内で試合を進める。東芝は風上に立ってキックを活用するも効果的な攻撃に結びつかない。互いに攻め切れない中、均衡が破れたのは23分、トヨタ自動車が10m中央付近から右展開したパスタイミングのズレを見逃さず、東芝SOヒルがインターセプトし、60m独走して左中間にトライを挙げ0-5と先制する。
その後も互角の展開のうちに終盤を迎えた30分、トヨタ自動車SOアイイが45m左中間からロングPGを決め3-5と肉薄し、最少得点差で前半を終了する。

後半、積極的に仕掛けたのはトヨタ自動車。5分、東芝のタッチキックでハーフウェイライン付近に出た球を、FBイェーツが東芝の虚を衝きクイックスロー、再びイェーツに繋ぎ、最後はLO中山がインゴールまで走り切り左中間にトライ。この試合トヨタ自動車が初めて10-5とリードを奪う。
東芝も、10分、トヨタ自動車陣深く攻め込み、ゴール前7m右中間ラックから左展開、CTBブリューの強烈なハンドオフからFB立川に繋ぎ、左隅にトライ、10-10の同点に追いつく。

ロースコアの目の離せない接戦が続く中、23分、トヨタ自動車は40m左ラインアウトから右展開し、最後はFBイェーツが相手ディフェンスを振り切って右中間にトライ(ゴール)、17-10と再びリードを奪う。トヨタ自動車はこの後、28分にもSOアイイがPGを決め20-10と優勢に試合を進める。
東芝も必死に攻撃を仕掛けるが、トヨタ自動車の厚い壁を破ることはできず、逆に38分に再びSOアイイにPGを決められ、万事休した。
トップリーグ上位チーム同士の見ごたえのある試合だったが、試合間隔があいたことが影響したか、いいところでペナルティを犯すなど攻め切れなかった東芝に対し、リーグ戦でも勝利を納め、プレーの精度を向上させてきたトヨタ自動車が試合を制し、決勝へと駒を進めた。(大阪府協会 山林右二・蜷川善夫)

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会見リポート
 

東芝ブレイブルーパスの瀬川監督(左)と、廣瀬キャプテン
東芝ブレイブルーパスの瀬川監督(左)と、廣瀬キャプテン

◎東芝ブレイブルーパス
○瀬川智広監督
「今日はありがとうございました。昨シーズン(日本選手権辞退のため)出場できなかったので、今シーズンは2冠を目指して臨んだゲームでしたが、ブレイクダウンでトヨタ自動車に競り負けてしまったのが敗因です。とはいえ、1年間止まった時間を取り戻すべく、今日までプレーヤーはよくやってくれたと思います。感謝するのみで、この思いをチーム全体で共有し、次のシーズンに繋げたいですね」

○廣瀬俊朗キャプテン
「いろいろな人のサポートを受けたことに感謝しています。ゲームは積極的に仕掛けたつもりでしたが、知らず知らずのうちに、よそ行きのラグビーをし、取り返しのつかない結果となってしまいました。プレーヤーは一所懸命でしたが、僕のリーダーシップに問題があり、チームを巧く(良い方向へ)持っていけなかった。トヨタには大きな宿題を与えてもらった感が強いですね」

──トップリーグ終了後、3週の間隔があったことにより、ゲーム勘が鈍ったのでは。
○廣瀬キャプテン
「ゲーム勘が鈍かったのは確かです。立ち上がり、トヨタのプレッシャーがキツく、普段どおりではなかった。ラインアウトのクイックスローは予想していたが、対応できなかったことが、象徴しています」
○瀬川監督
「最後の10分、(東芝が)疲れてしまいました。ゲーム全般を見ても、ところどころで集中力が欠如していました」

──今シーズン、トヨタに連敗したことについて。
○瀬川監督
「ブレイクダウンで、早い球出しができなかったことが敗因」

──クイックスローからトライを奪われたことについて。
○廣瀬キャプテン
「死角から入って来られ、対応が遅れた。WTBの僕がしっかりケアしていれば防げたトライだったかもしれない」

──シーズンを総括して。
○廣瀬キャプテン
「昨年はいろいろなことがあり、トップリーグ優勝の喜びも、内に閉じ込めざるを得なかったが、今年の優勝はチーム全体で喜びを分かち合いました。日本選手権までの間隔が空き、内から湧き上がるものがなかったかもしれません。3週間の練習は決して気の抜けたものではなかったのですが、感覚的にしっくり来ず、前日のキャプテンズランも納得いかなかった」

トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝
 

トヨタ自動車ヴェルブリッツの石井監督(左)と、麻田キャプテン
トヨタ自動車ヴェルブリッツの石井監督(左)と、麻田キャプテン

◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○石井監督
「トップリーグ覇者に勝てたことを素直に喜びたい。東芝は(3週間の空き時間で)ゲーム勘がなかったと思う。決勝では、東芝の思いも踏まえて戦うつもりです」

○麻田一平キャプテン
「先週の反省を踏まえ、ブレイクダウンを修正し、臨んだ。激しいブレイクダウンの応酬で、焦らずボールを動かせたことが勝利に繋がった。尊敬するチームである東芝がいたからこそ、今日のようなゲームができたと思います」

──FL中山のLO起用が当たったが。
○石井監督
「意図したものではなく、LO陣に怪我人が続出したため、LO経験がある中山を起用したまで。結果、彼の良い持ち味が出たし、バックロー陣もいい動きだった。スクラムも押せずとも、押されることはないと安心していた」

──ラインアウトのクイックスローについて。
○麻田キャプテン
「自陣ではキックでエリアマネジメントし、敵陣では、積極的にアタックする約束事のなかで、個々の判断から生まれたプレーです」

──東芝の鈍いゲーム勘が狙いどころだったか?
○石井監督
「そこまで意識はしていなかった。トヨタの目指すラグビーは、速く、大きくボールを動かし、フィジカルにプレーすることで、今日もその通りのプレーをしたまで。ただ、東芝に集中力がなかったとは感じた」
○麻田キャプテン
「東芝には、ひたむきさを感じた。東芝の出来・不出来ではなく、(トヨタが)ボールを動かせれば、勝ち目はあると感じていた」

トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝 トヨタ自動車 23-10 東芝
今回、新たに企画されたルールガイドシート ルールガイドのひとり、近鉄ライナーズの大西選手
今回、新たに企画されたルールガイドシート ルールガイドのひとり、近鉄ライナーズの大西選手