マッチリポート
日本選手権


三洋電機ワイルドナイツ 25-16 NECグリーンロケッツ

【準決勝/2010年2月20日(土) at 東京・秩父宮ラグビー場】

NEC「ミラクル・テン」の奇跡ならず、三洋が日本選手権決勝へ
トップリーグの終盤戦の3試合から、ワイルドカード2試合と、ひとつも落とせない試合を連勝し、日本選手権の初戦では優勝候補のサントリーに引き分け、2回戦でも帝京大に勝利で準決勝進出と、チームのまとまりが出て、どん底から這い上がってきたNEC。東日本リーグ7位から日本選手権制覇した、2002-03年度のNECの「ミラクル・セブン」の奇跡の再現が起こるか? これに対し、三洋電機はトップリーグ・プレーオフトーナメントファイルでは、インフルエンザによる選手欠場もあり、東芝に敗戦し、その後3週間のブランクはあるが、ほぼベストメンバーがそろった。

前半は両チームとも堅い試合運びとなった。7分、三洋が敵陣22m付近でバックスの左右への展開の連続攻撃で、NECのペナルティを誘い、FB田邉がPGを決める(3-0)と、9分には三洋FL劉のレイトチャージのペナルティで得たPGをNEC SO松尾が決め、得点は3-3の振り出しとなった。両チームとも厳しいディフェンスが続き、なかなかトライチャンスにはならない。

三洋はNO8 ホラニを時々CTBの位置におき、突破を試みるが、NECのニリ・ラトゥ、権丈、浅野らのFW陣がしぶといディフェンスでこれを防ぐ。その後、24分に三洋FB田邉、26分にNEC松尾がPGを決め、6-6となった後、38分に三洋がようやく敵陣ゴール前に攻め込んだ。三洋はゴール前のスクラムからの「ハチキュー」でホラニ-田中からWTB北川がボールをもらい、2人抜きトライ。この貴重な得点チャンスを生かし、11-6とリードして前半を終了した。

後半10分にNEC松尾がPGを入れ、11-9と点差をつめたが、12分には三洋がスクラムからホラニがサイドを抜け、これにFW・BKの選手がよくフォロー、最後はSOブラウンからボールをもらったWTB三木が中央を抜けゴール下にトライ、三洋が再び点差を拡げた(ゴール成功、18-9)。
しかし、連戦での疲れはあるものの、チームのまとまりという面では最高のレベルに来ているNECの選手の足は止まらない。途中交替で入ったFB釜池が作ったチャンスで敵陣ゴール前に攻め込んだところで、三洋PR相馬のシンビンとなる反則を誘い、NECが人数的優位になった直後、24分に、ラインアウトからのモールを押し込みLO浅野がトライ(ゴール成功、18-16)、2点差とし、勝負の行方はどちらに転ぶかわからなくなった。

この日、決勝トライを奪ったラッキーボーイは、後半20分からSHに入った三洋の高安だった。35分、中央付近のラインアウトから出たボールを高安がグラバーキック。このボールをNEC WTB瀬崎がキャッチし、キックしようとしたところを、高安が自らチャージして、ボールを拾い、インゴールへ持ち込み、三洋が勝負を決めた。(ゴール成功、25-16)

両チームともいいディフェンスが続き、締まったいい試合だったが、三洋が得点力でほんの少し上回った結果となった。28日の決勝カードは三洋対トヨタとなった。(正野雄一郎)

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会見リポート
 

NECグリーンロケッツの岡村ヘッドコーチ(右)と、ラトゥゲームキャプテン
NECグリーンロケッツの岡村ヘッドコーチ(右)と、ラトゥゲームキャプテン

◎NECグリーンロケッツ
○岡村要ヘッドコーチ
「結果としては残念でしたが、シーズンを通して体も心もボロボロの中、選手が本当に献身的に、必死に、毎日、戦ってチームを作り上げてくれたことに感謝しています。そういうチームになれたことを誇りに思います」

──どのような準備を?
「コンタクトエリアで、いかに三洋さんをスローボールにさせるかというところです。ああいうディフェンスの良いチームに対し、どうコントロールするか準備してきました」

──コンディション的に不利だったのでは?
「確かに三洋さんと立場が違い、我々は体的にはボロボロで、何人かは力尽きましたが、利点もありました。連戦でゲーム感覚がつかめましたし、今日は三洋さんもいつもの三洋さんらしくなく、感覚のズレがあったのではないかと思います。良し悪しはフィフティ・フィフティだったと思います」

──ブレイクダウンでもっと圧倒したかったのでは?
「リアクション・スピーディがテーマでしたが、一歩を躊躇してしまい、その一歩の差でからまれました。まず、相手より早くボールキャリアに到達して、からまれないことを意識していたのですが」

──改めて三洋の強さは?
「今日はこちらのキックの精度がブレていて苦しんだゲームでした。紐解けば、三洋さんのハーフ団へのプレッシャーがすごく速くて、良いキックする準備ができなかったと分析しています。こういう見えないところでのプレーが三洋さんの強さの秘密だと思います」

──12月の試合と比べて?
「最初の5分で、選手の自信を感じました。絶対、勝てるという姿を見たとき、行けるなと思いました。どっしり、腰をすえて見ることができました」

○ニリ・ラトゥ ゲームキャプテン
「逼迫した試合になると分かっていたが、ディフェンスでは勇敢に戦えたとは思います。ただ、ディフェンスの規律の部分で、ボールをターンオーバーされたことが響きました。しかし、ハードなシーズンを乗り切った選手を誇りに思います。ポジティブな気持ちで、来シーズンにつなげていきたいと思います」

──三洋の強さは?
「ブラウン選手のゲームコントロールが上手かったと思います。特にブラウン選手をターゲットにゲームプランを遂行しようとしましたが、やはり強いスタンドオフだったと思います」

──ゲームキャプテンになってから、どこが強くなったのか?
「お互い、チームを構成する選手同士で、同じレベルになることを目指してきました。お互い、チャレンジして、それをポジティブに出せたと思います。技術的には、選手を励ましてきました。キャプテンとして日本の文化になじもうと努力した結果です」

三洋電機 25-16 NEC 三洋電機 25-16 NEC 三洋電機 25-16 NEC
 

三洋電機ワイルドナイツの飯島監督(右)と、霜村キャプテン
三洋電機ワイルドナイツの飯島監督(右)と、霜村キャプテン

◎三洋電機ワイルドナイツ
○飯島均監督
「このグラウンドコンディションの中、よくボールを回したと思います。NECさんのブレイクダウン、コンタクトが強く、そこに勝ってやろうという意識が強すぎたので、ハーフタイムに冷静にやらなくてはと指示しました。最後は控えの選手が活躍してくれました。神戸戦で、5年目で初めてのスターティングメンバーになった高安選手が、プレーオフはインフルエンザで出場できなかったのですが、準決勝でああいう活躍をしてくれたのが嬉しいです。彼は三洋を象徴する選手です。苦戦しても勝てたことは良かったと思います」

──ペナルティが多かったが?
「もう一度じっくり見て確認したいと思います。今日、修正しなければならないことを学んだのは良かったと思います。ちょっと横から入っていたかな。ニリ・ラトゥ選手が素晴らしく、体幹も強いので、止めに入ったのかな。ちょっと自陣のブレイクダウンに入り過ぎています。冷静に見極めないといけません」

──(決勝は)トヨタが相手となったが?
「まあ、東芝さんとのプレーオフは悔しい負けでしたので。トヨタさんも強いチームですし、すべてをぶつけたいと思います。やはり、試合の間隔が開いたり、移動の距離が長かったりすると難しいなと思います」

──試合間隔が空いて、苦しかったのか?
「一つくらいアドバンがあっても良いとは思いますが、3週間空くと難しいです。NECさんも10位から上位のチームに勝って一致団結し、勢いがあると感じました」
(最後に立ち上がって)「明日は『ミラクル高安』と書いてください!(笑)」

○霜村誠一キャプテン
「プレーオフで東芝さんに負けてから、選手たちがプレーを見直して、自分たちのやってきたことをベースにチャレンジして、ステップアップして1週間、やってきました」

──前回はインフルエンザで出場できなかったが?
「出られなかった部分の気持ちも含めて、決勝へのチャレンジとして15分の1の仕事をしたいと思っていましたが、それができてよかったと思います。劣勢の時も声を掛けて、パニックにならず返せたので、収穫だったと思います。あの時は、前半・後半やってきたことをしっかり出そうと、まず、敵陣へ入って継続してリズムを作ろうとしました。僕も声が出ていましたが、入江がすごく出ていて、あんなに熱くなっている入江は見たことがなかったので、驚きました」

──スコア的にも人員的にも苦しい時に余裕があるように見えたが?
「余裕がそんなにあったわけではありません」

──次は、相手が東芝ではないが?
「どうですかね。前の試合、僕は出ていませんでしたが、もちろん、もう一度という気持ちはありますが、決勝に出てくるチームは力もあると思います。結果として、どちらでも、僕らがやることは変わりありません」

準決勝で企画された「ルールガイドシート」。決勝戦でも実施される
準決勝で企画された「ルールガイドシート」。決勝戦でも実施される