C:2010, JRFU(Photo by A. HASEGAWA) サントリーサンゴリアス 10-10 NECグリーンロケッツ 【1回戦/2010年2月7日(日) at 大阪・近鉄花園ラグビー場】 トップリーグプレーオフトーナメントセミファイナルで東芝ブレイブルーパスに接点で競り負けたサントリーサンゴリアスと、日本選手権に照準を合わせトーナメント戦にはめっぽう強いNECグリーンロケッツとの一戦。 前半試合が動いたのは8分、サントリーは30m左中間付近でNECの反則を誘うとCTBニコラスがPGを着実に決め3-0とする。しかし、サントリーは運動量で勝るもののラックなどの接点でNECに支配を許し、いつもの素早い展開のリズムができずギクシャクした攻撃を繰り返す中、13分、NECは、サントリー陣に深く攻め込んだ15m左中間モールから左展開し、CTBロビンスがこの試合初めてのトライを奪い(ゴール)、3-7とリードを奪う。 なおも中々リズムに乗れないサントリーに、一方のNECもトライを奪えず、前半はNECが17分にSO松尾が25m左中間からDGを決め3-10としたまま得点が動かない試合展開が続く。40分のホーンが鳴った直後に、サントリーSO野村がゴールに飛び込み同点かと思われる場面があったが、グラウンディングが認められず、前半を終了。 後半も、サントリーの縦を衝く攻撃にしっかり対応したディフェンスのNECと互いに膠着状態が続く中、17分、ようやくサントリーは7m左中間ラックから左展開し、トップリーグトライ王のWTB小野澤が左隅にトライ、ニコラスが難しい位置からのゴールを決め10-10の同点に追いついた。サントリーは詰めのラストパスを再三のノックオンなどで好機を逸し、一方のNECも決め手を欠くまま試合は終盤へと進む。 NEC陣で優位に戦いを進めるサントリーは、何とか得点をと試合終了を目前にして懸命の攻撃、37分、39分、40分とSOピシ、CTBニコラスが飛び道具のDGを繰り出すもNECのディフェンスの前に奏功せず、同点のままフルタイム。両チームトライ数、ゴール数も同じため大会規定により、次の出場権をかけた抽選となった。 日本選手権初の出来事に両チームの選手・関係者はもとより、花園のすべてのラグビーファンが固唾を飲んで見守る中、勝利の女神は、「ミラクル10」を合言葉に試合に挑んだNECに微笑んだ。(大阪府協会 山林右二・蜷川善夫) サントリーサンゴリアスの清宮監督(右)と、佐々木キャプテン ◎サントリーサンゴリアス ○清宮克幸監督 「残念な結果となり、悔しい。多くのミスを犯し、NECの執念に飲み込まれてしまった。ファンの期待に添えなかったことは申し訳ない。今季のサントリーはここまでよかったが、最後に力を発揮できなかった」 ○佐々木隆道キャプテン 「(最初は言葉が出ず)何をコメントしていいかわからない。皆よくプレーしたが、(次回進出権がなかったのは)運がないとしか言いようがない。なにより抽選まで持ち込んでしまったのが全て。トライを取るべきところで取りきれなかった。トップリーグ終了後、自分にとって厳しい時間だったが、自分のプレーとチームの意識を変えてくれた全てのチームメイトに感謝したい」 ──今季の戦いを振り返って。 ○清宮監督 「ここ一番のゲームで結果を出せないのは、ここ数年サントリーの課題である。今年はメンタルタフネスがついたと思っていたが、結局足りなかった」 ──力が出せない原因は。 ○佐々木キャプテン 「いつもなら単純なプレーの選択でトライを取りに行くところを、パワープレーでいってしまった。相手のプレッシャーを受けながら、いいプレーを選択する気持ちと準備はしていたが。ただ勝ちにいく気持ちはNECに負けていなかった」 NECグリーンロケッツの岡村ヘッドコーチ(右)と、ラトゥゲームキャプテン ◎NECグリーンロケッツ ○岡村要ヘッドコーチ 「コンタクトエリアとスクラムを中心に準備してきた。ひたすら必死にプレーした。NECのストラクチャを信じ、自分を、仲間を信じ、戦ってくれた。これが全てであり、抽選結果は二の次である。プレーヤー全てに敬意を表したい」 ○ニリ・ラトゥゲームキャプテン 「ガッツを持ってチーム全てが戦い、モノにしたゲームだった。プレーヤー個々の力を誇りに思う」 ──アタックについて。 ○岡村ヘッドコーチ 「アグレッシブに攻めようと意思統一した。キックパスはその表れだ。ディフェンスから相手のミスを誘い、ターンオーバーからアタックを仕掛ける。ディフェンスだけではなく、アタックにつながる動きを常に意識していた」 ──抽選結果について。 ○ラトゥゲームキャプテン 「負けるとも思ったが、ハードワークが幸運を呼んだ。(抽選は)初めての経験だ」 ──リーグ戦では大敗したが。 ○岡村ヘッドコーチ 「サントリーにミスが多く幸運だったが、我々の必死なタックルが生んだ結果だと思う。ディフェンスでのプレッシャーが良かった。前評判はサントリーだったが、接戦では格上にプレッシャーがかかるもの。この点は幸運だった」 ──引き分けという結果について。 ○岡村ヘッドコーチ 「トップリーグでは同点の場合、延長戦という規定があるが、(同点の場合、抽選という日本選手権の規定下で)今日のNECには延長戦は無理だった。80分間で全てを出し切るようゲームに送り出し、タイムアップの瞬間、立てないプレーヤーも多かった。サドンデスなら1分ももたず、敗れていただろう。 ○ラトゥゲームキャプテン 「次回進出はうれしい。今日は、レギュレーションに則って次回進出権を勝ち取ったんだ」 ──抽選結果を待っている間の好対照な両チームについて。 ○岡村ヘッドコーチ 「一体感が醸し出す強さだったと思う。トップリーグ前半戦は散々だったが、その間もチームはバラバラにならなかった。危機感を持って迎えたリーグ後半はひとつになった。その結果が今日に繋がったと思う」