C:2010, JRFU(Photo by A. HASEGAWA) 神戸製鋼コベルコスティーラーズ 19-36 トヨタ自動車ヴェルブリッツ 【1回戦/2010年2月7日(日) at 大阪・近鉄花園ラグビー場】 花園での日本選手権1回戦は、ワイルドカードトーナメントでコカ・コーラウエストレッドスパークスを下し、日本選手権出場を決めた神戸製鋼コベルコスティーラーズと、リーグ戦4位で通過したトヨタ自動車ヴェルブリッツとの一戦。神戸製鋼は接点での支配を目指し、FWに外人選手を3名配した布陣で臨む。 時折強風の吹き抜ける前半、風上に位置したトヨタ自動車は、試合開始早々から神戸製鋼陣内深く攻め込み、優勢に試合を運ぶ。トヨタ自動車は何度かあったショットのチャンスにもゴールを狙わず、あくまでトライにこだわったが、神戸製鋼もゴール前の堅い守りでこれを防ぐ状況の中での18分、神戸製鋼は、キャプテンWTB大畑がハーフウェーライン右中間で相手のパスをインターセプトし、そのまま50m独走し右中間にトライ、7-0と先制点を奪う。 しかし、トヨタ自動車もリーグ上位の実力を徐々に現し、23分神戸製鋼のディフェンスが乱れる間に、25m右中間ラックから素早く左展開しWTB久住が左隅にトライを挙げ、35分にも30m左中間ラックから右展開。SH麻田→SOアイイ→FL中山、再びSOアイイが個人技で大きくゲインした後、FL中山と繋いで左中間にトライ。トヨタ自動車がこの試合初めてリードし7-12の5点差で前半を折り返す。 後半風上に立った神戸製鋼は、花園特有の風を利しSO森田のキックで地域を有効に進める試合が期待される中、8分、ゴール前10mまで迫り右中間ラックから左へSH苑田→SO森田に渡り、森田がトヨタ自動車BKディフェンスのギャップを突いてポスト右にトライ(ゴール)。12-14と逆転に成功。しかしトヨタ自動車は、12分にFL中山がゴール直前ポスト右のラックから強引に持ち込み14-19と再びリードを奪うと、18分にもNO8菊谷のターンオーバーからのチャンスをHO上野が中央にトライし、14-26とリードを広げる。 神戸製鋼は22分、ポイントに走り込んでパスを受けたWTB大畑が自陣から50m以上を独走、トヨタ自動車のディフェンスを振り切ってトライを挙げる素晴らしいパフォーマンスで19-26と追い上げたが、ここまで。地力に優るトヨタ自動車は27分にPG、28分にもWTB水野がトライ(ゴール)を挙げて加点、フルタイムを19-36として2回戦進出権を得た。(大阪府協会 山林右二・蜷川善夫) 神戸製鋼コベルコスティーラーズの平尾GM兼総監督(左)と、大畑キャプテン ◎神戸製鋼コベルコスティーラーズ ○平尾誠二GM兼総監督 「前半の展開(7-12)が接戦だったことに手応えを感じていたが、後半の中盤に連続失点したことが痛かった。シーズンを通じて、ONE ON ONE(1対1)を制することがテーマだったが、今日のゲームでは後半力尽きた。この点を修正して来季につなげたい」 ○大畑大介キャプテン 「前半よく耐え忍んだが、守勢に回っていたことが後半ボディーブローのように効いた。力の差を感じたが、自分たちがやるべきことは、やった」 ──ゲームプランについて。 ○平尾GM兼総監督 「トップリーグ後半から、ボールがよく動かせていたので、今日も大きく動かすことを意識していた。強風下の前半を良く耐え、後半敵陣で勝負するプランだったが、ちぐはぐな攻撃だった。もっとロングキックでエリアを取るべきであったし、連続アタックのリズムも重視すべきだった。いずれにしてもトヨタの粘り強さに屈した」 ──ゲームの感想は。 ○大畑キャプテン 「ゲーム前、出場登録外のメンバーに激励してもらったことに応えられず、悔しい」 ──外国人プレーヤーFW3名を先発させたことについて。 ○平尾GM兼総監督 「前半、彼らを中心によく耐えた分、BKの決定力に欠けた。CTBのフレイザー(アンダーソン)が体調不良だったことも一因だ」 ──今季のスローガン"超攻撃ラグビー"について。 ○平尾GM兼総監督 「今季の点数は60点。組織的ディフェンスの精度が上がっている中、それらを打ち破る単純で力強いプレー、1対1で勝るプレーが必要だ」 ──来季への収穫は。 ○平尾GM兼総監督 「若手が伸びてきた。ヴェテランが怪我がちで、フルシーズン出場できない中、それなりに頑張ってくれた。勿論このままではいけないが」 ──1年間のキャプテンシーについて。 ○大畑キャプテン 「怪我が多く、キャプテンとしての存在感を示せなかった。若手をリードし、チームの舵取りをしなければならない自分の職責を全うできなかったことを申し訳なく思う。ゲーム後の円陣では、自分たちの殻を打ち破るチャレンジができなかったことを反省しつつ、やるべきことをやったことに誇りを持とうと話した」 トヨタ自動車ヴェルブリッツの石井監督(左)と、麻田キャプテン ◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ ○石井龍司監督 「難敵神戸製鋼コベルコスティーラーズに勝ったことを素直に喜びたい。内容については、自分たちのやるべきことができるよう反省し、ビルドアップしていきたい」 ○麻田一平キャプテン 「ファンの方も多く、グラウンド状態もよく、気持ちよく伸び伸びボールを動かせた。積極的なアタックはできたが、修正点も多い」 ──前半なかなか得点できなかった点について。 ○麻田キャプテン 「最初から継続プレーを意識していたが、神戸製鋼の繰り返す反則と、ブレイクダウンの精度が低く得点を重ねられなかった。途中でボールキャリアがしっかり前進することを確認し、修正できた」 ──前半のPGチャンスを狙わなかったことについて。 ○石井監督 「ベンチサイドとしては、PGを選択してほしかったが、FW戦を選択した結果、後半神戸製鋼にダメージを与えることになった」 ○麻田キャプテン 「(きっぱり)PG選択の意思はなかった」 ──トップリーグより差が開いたのでは、の問いに。 ○石井監督 「リーグ戦はキック処理の拙さから失点したように記憶している。今日はプレーの精度を上げることを心がけ、結果反則も少なかった」 ○麻田キャプテン 「どちらが勝ってもおかしくないゲーム。攻め抜く姿勢が勝敗を分けたと思う」