マッチリポート
日本選手権


帝京大学 76-7 六甲ファイティングブル

【1回戦/2010年2月7日(日) at 東京・秩父宮ラグビー場】

念願の大学王者となった強力FWを擁する帝京大学と、クラブ初の日本選手権一回戦突破を目指す六甲ファイティングブルとの対戦となった。
帝京大学は大学選手権を制した強力FWで勝負したいところであるが、LOボンドとFL吉田(光)を怪我で欠き、主将NO8野口とFLツイの動きがポイント。
対する六甲ファイティングブルは、ワールド ファイティングブルのメンバーを加え、全国クラブ大会を危なげなく勝ち進み優勝。初の日本選手権出場で、帝京大OBのSO由良のゲームメイクも注目される一戦となった。

強風の秩父宮、前半風上を選択した帝京大学は、開始早々の4分にSH滑川の六甲ファイティングブルBKライン裏へのキック。そのラックを制しクイックでボールアウトし、六甲ファイティングブルのディフェンスラインが整う前にSO森田がディフェンスラインのギャップをつき左中間にトライ。ゴール成功(7-0)。
9分には帝京大学がハーフライン付近の六甲ファイティングブルボールのスクラムにプレッシャーをかけ、マイボールスクラムへ。そのスクラムから左展開しCTBでポイントを作り、クイックで順目に展開。SH滑川からボールを受けたSO森田が左にアウトフランクし左隅へトライ。ゴール成功(14-0)。
16分、六甲ファイティングブル陣営5mライン付近の帝京大学のラインアウトからFLツイがピールオフで抜け出し、SO森田にオフロードで繋ぎゴール中央にトライ。ゴール成功(21-0)。
23分には六甲ファイティングブル陣営5mライン外側の帝京大学ボールラインアウトから、モールを作り押し込み左中間にトライ。ゴール成功(28-0)。

一方的なゲーム展開になるかと思われたが前半26分、六甲ファイティングブルが帝京大学陣10mライン付近左サイドのスクラムから、ブラインドWTB藤原がラインブレイクし、縦にフォローしたFL鎌田にパスし、そのままゴール中央にトライ。ゴールも成功(28-7)。
一時はワンサイドゲームになるかと思われたが、六甲ファイティングブルのトライ後はスローペースの展開となり、両チーム互角の戦いでハーフタイムを迎えた(28-7)。

後半は六甲ファイティングブルのキックオフで始まった。
帝京大学はスピードアップした展開と、両プロップを入替えさらにスクラムで圧力をかけ、後半開始早々から六甲ファイティングブル陣に攻め込むも、イージーミスでなかなか得点には結びつかなかったが、11分に左中間5m付近のスクラムからモールを押し込み、1年生初スタメンLOマニングがトライ。ゴールは不成功(33-7)。
18分、16番浪岡が六甲ファイティングブルのラインアウトこぼれ球を拾いトライ。ゴール成功(40-7)。
20分、左ポイントから順目に展開しWTB伊藤がトライ。ゴール不成功(45-7)。
25分、左マイボールラインアウトからBKの裏を走り込んだFLツイがそのまま抜けトライ。ゴール成功(52-7)。

29分、右オープンに大きく展開し、右タッチライン付近のラックから逆目に振り、SO森田が裏に抜けHO安岡にパスしトライ。ゴール成功(59-7)
31分、六甲ファイティングブル陣10mライン付近の中央スクラムから右に展開。大きくゲインしラックから左に素早く展開しCTB南橋トライ。ゴール不成功(64-7)。
36分、六甲ファイティングブル22mライン中央付近のラックをターンオーバーし、右に展開。SO森田がタッチライン際を走り抜けトライ。ゴール不成功(69-7)。
40分、ハーフライン付近のタックルからターンオーバーし、右に展開。20番1年生小野が抜け、最後はSH滑川に繋いでノーサイドのホーンと共にゴール中央にトライ。ゴール成功(76-7)。

六甲ファイティングブルは、帝京大学のボールを大きく動かすテンポの速い攻撃について行けず、後半はフィットネスの差も出て大量の失点となった。
スキル・スピード・フィットネス・ブレイクダウンすべてに学生の域を超越している帝京大学だが、ワールドのメンバーが加わり、社会人クラブの中では頭抜けたクラブであった六甲ファイティングブルとの差が大き過ぎる事を考えさせられた一戦であった。(児玉隆一郎)

帝京大学 76-7 六甲ファイティングブル 帝京大学 76-7 六甲ファイティングブル 帝京大学 76-7 六甲ファイティングブル
会見リポート
 

六甲ファイティングブルの東田ヘッドコーチ(右)、遠藤キャプテン
六甲ファイティングブルの東田ヘッドコーチ(右)、遠藤キャプテン

◎六甲ファイティングブル
○東田哲也ヘッドコーチ
「ご覧のように完敗です。帝京大学さんのテンポにうちのラグビーがついて行けませんでした。こちらのFWの怪我が多く、BKでいこうと言っていましたが、力及ばず、BKのスピードでも負けていました」

──社会人、トップレベルと比べて?
「やはり、企業スポーツも継続してできない状況があります。ワールドもそうでしたし、だからこそ、クラブはこれから強くなっていかねばならないと考えます。地域で盛り上げてもらって、何とかラグビーのレベルを上げたいと思っています。今は悔しい思いでいっぱいです。ただ、10年ぶりにクラブ日本一を奪回したのが第一歩で、次の目標が見えました。次に大学チャンピオンを倒すという気持ちです」

──組織のあり方は?
「我々は、ラグビーで勝つだけでなく、地域貢献も大切に考えています。ラグビークリニックや、去年から始めた知的障害者へのラグビー指導などで元気付けることができています。これからも地域貢献をして、強いチームになりたいと思います。もちろん、現実はグラウンド探しから始めていますが」

○遠藤信太郎キャプテン
「今日は本当に完敗です。自分たちのやってきた得点パターンを作れず、ブレイクダウンも完全に負けていました。最後にあれだけ差がつくのは、メンタルの面が課題です。学生チームを倒せるように練習し、ここにまた帰ってきます」

──クラブチームが出ることに意義があるのか?
「可能性はあると思います。クラブ選手権でも自分たちの力がついてくることを感じていました。飛躍的に伸びた選手もいます。コンスタントに春から1年かけて続けていけば、縮められる力の差だと思います」

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帝京大学の岩出監督(右)、野口キャプテン
帝京大学の岩出監督(右)、野口キャプテン

◎帝京大学
○岩出雅之監督
「クラブチーム代表に対して、我々もしっかり良い準備をして、臨みたいと思っていました。しかし、昨日まで試験で、なかなか全員揃わず、大学選手権で学んだことを出して、2010年のチームとして進化し、準備不足ではあるが何かをつかもうと臨みました。社会人で、名のあるチームに所属していた方もいて、要所、要所で良いプレーを出してくるので、しっかり80分トータルで走り切ろうと、いつものゲームプランと違い、ボールを動かそうとしました。学生がしっかり走り切る良いラグビーをして、新シーズンの良いスタートとして位置づけることができました。次のゲームはNECさんと決まったそうなので、自分たちの良いところを少しでも出して、願わくば、少しでも勝利に近づけるような試合がしたいと感じています」

──去年はリコーと引き分け、そのリコーがNECも破ったが?
「去年はリコー戦を終えた直後の学生が、『これ(日本選手権)はこれで、良い結果で終わりたい』と言ったことがありました。去年は大学の決勝戦までという気持ちでしたから、その後が弱かったです。学生から、決勝戦は勝ち切り、その後、日本選手権の準備をしたいという声が出ていました。コンディションの部分は難しいが、一週間、学生が乗っていないときはあれやこれや言っても仕方ないので、今日のゲームに向けての展開重視プランを示して、来ている学生だけでも意思を統一しようとしたところ、練習の数は少ないが、かみ合ってきました。学生も良いスタートにしたいと、まとまってきました。そういえば、リコーさんにNECさんは負けているので、今度は気合を入れて来ると思います。勝ち負けも楽しみですが、1分でも自分たちの良い部分を出したいと思います」

──相手の六甲には帝京OBが3名出ていたが?
「第一試合前にロッカーを尋ねてきてくれて、由良選手は『恩返しができる良いチャンスです』と喜んでいました。僕も嬉しく思いました。そこで、グラウンドコンディションが緩く、滑るので、無理なプレーで怪我しないように頑張ろうと励ましました。最後に、二、三、言葉を交わしましたが、現役の学生にも良かったと思うし、僕としては、嬉しい気持ちと社会人の良いところを見せてくれたことへの感謝の気持ちを感じていました」

○野口真寛キャプテン
「お疲れ様です。次につながるゲームとしてチャレンジしようと臨みましたが、前半はうまくやろうと軽いプレーになってしまい、ハーフタイムに引き締めて修正して臨みました。次の帝京ラグビーのきっかけはつかめた試合だったと思います。NEC戦に向けて準備していきます」

──大学日本一となり、気持ちが切れてしまった部分は?
「自分としては大学選手権と違わず臨めました。チームとしては休みもあり、テスト期間で、だれたわけではありませんが、ふわっとした部分が見られたので引き締めました」

──去年はリコーと引き分け、そのリコーがNECも破ったが?
「そうですね‥‥。(岩出監督が『火を付けるような事を言うなよ(笑)』と助け舟)去年のことは意識せず、目の前の試合に臨むだけです」

──NECの印象は?
「NECさんに限らず、トップリーグのチームはブレイクダウンが強いので、どれだけプレッシャーをかけてボールを出せるかが、キーとなると思います」