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正月2日、秩父宮ラグビー場は穏やかな晴天の天候に恵まれた。

今大会で前人未到の9連覇を目標とする王者、帝京大学に準決勝で対するのは、過去、大学選手権でベスト4には7回進出、そのうち、一昨年度、昨年度を含め3回は決勝で帝京大に悔し涙を飲まされている東海大学だ。今シーズンはリーグ戦の優勝こそ大東文化大学に譲ってしまったが、実力としては充分「打倒帝京大学」を掲げる力を持っている。フィフティーンが皆、「今年こそ、打倒帝京大学」の気持ちで一つになって準備してきているはずだ。

東海大学がキックオフで深く蹴り込んだボールを帝京大学FLブロディ・マクカランがキャッチしたところに、東海大学フォワードが襲いかかってボールをターンオーバーする。東海大学はすぐにバックスで右に展開、SO眞野泰地からFB野口竜司—CTB鹿尾貫太—CTB池田悠希とオフロードでつなぎ、池田からのパスがこの日初めてスターティングメンバーに起用された右WTB小野木晃英につながるとそのまま小野木がコーナーフラッグ際に飛び込んだ。東海大学がキックオフからノーホイッスルでのトライをとり、野口のゴールも決まり0-7といきなり東海大学がリードした。この試合開始直後のトライで20,237人の満員の観客も「ひょっとすると・・」という気持ちになったはずだ。

しかし、ピッチ上の帝京大学フィフティーンの気持ちは全く揺らいでいなかった。

帝京大学の落ち着いたアタックの連続に東海大学もナイスタックルを続けていたが、9分、東海大学のドロップアウトの大きなキックをキャッチした帝京大学が自陣からフェイズを重ねアタックを続けると、帝京大学CTB岡田優輝が中央をステップで抜け敵陣に入る。ラックからボールをつかんだLO秋山大地が東海大学のタックルを2人3人と突き放しゴール前に突進する。そこにいいスピードで走り込んできたCTBニコラス・マクカランがオフロードパスを受け取ると、ニコラス・マクカランがそのままゴールラインに飛び込み、帝京大学がすぐに7-7の同点とした。

帝京大学はその後も敵陣によく攻め込むが東海大学のディフェンスのプレッシャーからハンドリングミスとなることも多く、また、東海大学も攻め込まれても野口のロングキックやランプレーでしっかりエリアを戻し、スコアが変わらない時間が続く。しかし、前半終了前の37分、帝京大学は中盤でのラックから出たボールをSO北村将大—FB尾﨑晟也と素早くつなぐと、WTB木村朋也が快走、最後には木村がFB野口をステップでかわしトライ、帝京大学が14-7とリードしてハーフタイムとした。

ハーフタイムに選手へ「後半は更にミスをなくす」と指示を出した帝京大岩出監督。これに対して東海大木村監督は「しっかりディフェンスを続けて、じっくり攻めたい」とコメントしていた。帝京大学がボールを持って敵陣に攻め込んでいる時間がやや多くなってきたが、東海大学のディフェンスも崩れず、スコアは開かない。東海大学の強みはNo.8アタアタ・モエアキオラを軸にしたサイドアタックだが、帝京大学FWはダブルタックルでしっかり止めて、東海大学をいい形にはさせない。一方、帝京大学もボールを展開しようとするが、東海大学のディフェンスのプレッシャーでパスがつながらない。そんな中で、後半の最初にどちらがトライを取るのかが、試合の行方につながりそうだ。

後半、最初に得点したのは帝京大学だった。14分、低く組んだスクラムでNo.8のポジションに入っていたFLブロディ・マクカランから「8-9」で、SH小畑健太郎に展開すると、そこにいいスピードで走り込んできたCTBニコラス・マクカランがボールを受けゴールラインに飛び込んだ。竹山のゴールも決まり、21-7。帝京大学がいい時間帯に点差を広げ、勝利に大きく近づいたようだ。

東海大学の反撃も期待される時間帯だが、逆にこの時間になり帝京大学の粘り強いディフェンスに東海大学にミスや反則が目立つようになり得点機にはつなげない。後半21分、乱れた攻防の中でボールを手にした帝京大学右WTB木村が右端から中央に切れ込み大きくゲインすると、ラックから出たボールをFLブロディ・マクカラン—HO堀越康介とフォワード選手のラインで左に展開、左WTB竹山晃暉につなげると、そのまま竹山がインゴールに飛び込んだ(28-7)。その後、帝京大学は竹山のダメ押しPGで31-7に点差を広げ、最後には東海大学に後半からWTBにポジションを変わっている9番山菅一史にトライを許したものの31-12のスコアでノーサイドとなった。

前半は東海大学ディフェンスのプレッシャーに苦しむ場面も多かったが、逆に、攻撃力のある東海大学の強みを粘り強いディフェンスでしっかり封じ込め、「ディフェンスを通じて自分たちのペースの試合運びにつなげていった」(堀越康介主将)帝京大学が「今シーズンで一番会心のゲーム」(岩出雅之監督)をして大学選手権9連覇に向けての決勝進出を決めた。

1月7日は帝京大学対明治大学と、初の大学選手権決勝カードとなった。帝京大学はこの日の粘り強いディフェンスでの勝利でさらにチームとして成長し、決勝でもフィフティーンが80分間ディフェンスで明治大学のアタックを封じ込めることができれば、9連覇の可能性は更に高くなるだろう。(正野雄一郎)