報告:三原一樹(日本協会普及育成委員会)

小学校の体育授業で「タグラグビー」が正式に単元として取り扱われている模様をレポートいたします。
鹿児島県南さつま市立加世田小学校では、新学習指導要領解説体育編の「タグ」や「タグラグビー」の例示により、本年度からタグラグビーに関する内容等を全学年の体育科年間指導計画(体育のカリキュラム)に取り入れています。

鹿児島の小学校体育授業にタグラグビー導入   鹿児島の小学校体育授業にタグラグビー導入

昨年度、ラグビー経験のない体育主任や若手の先生方が、県教育委員会が主催する夏休みの「来所研修(タグラグビーの指導法研修)」や県ラグビー協会が主催する「タグラグビー研修会」でタグラグビーを学びました。そして、その内容を職員に紹介したり、タグラグビーの校内研修会を行ったりしたことで、タグラグビーのよさを全職員に知ってもらい単元として取り入れることになりました。
平成23年度の新学習指導要領の完全実施から体育の年間授業時数が1年生で12時間、2~4年生では15時間増えます。加世田小学校ではタグラグビーが単元としての評価が高く、発達段階や系統を考えて全学年で取り扱うことになりました。

加世田小学校でのタグラグビーの年間指導時数(平成21・22年度)
1年生:7時間
2年生:9時間
3年生:7時間
4年生:3時間
5年生:3時間
6年生:3時間

鹿児島の小学校体育授業にタグラグビー導入   鹿児島の小学校体育授業にタグラグビー導入

加世田小学校では、タグラグビーを下記の通り取り扱いました。

(1)4年生の体育の授業3時間では
  男女混合の4人グループ(8チーム)を作り、タグやボールを使った遊びから簡単なタグラグビーゲームまでを2時間で指導し、最後の1時間をたっぷりと総当たり戦の試合をさせました。コートの広さは15m×30m、タグの回数なし、得点はゴールライン通過でトライ、レフリーはなし(選手全員で判断)、4コート一斉に試合、一斉に作戦会議をさせながら、総当たりの試合を行いました。わずか3回の授業でしたが、運動嫌いな子どもまでが体育の授業をとても楽しみに待っていました。

(2)学年対抗レクリエーションでは
   学年内でタグラグビーの3クラス対抗戦を行いました。校庭に12コートを作り、一斉に試合を行い、クラス間のコミュニケーションを図りました。タグラグビーを通して、クラスの枠が外れ、他のクラスの友だちを思いやる心が向上してきたように感じます。子どもたちから、ぜひ、3学期も交流戦をやりたいという声が出ています。

(3)運動会種目では
   トラック内に各クラス数の直径約10mの自陣を書き、各クラスが保持するボール10個を時間内にできるだけ多く相手自陣に置いてくるゲームをさせました。全員がタグを付けており、各クラスで作戦があり、ボールを持って行く人とボールを持ってこさせないようにタグを取る人に分かれて戦いました。ボールを持っている人は、タグを取られたら、自陣に返ってタグを付け再スタートしなければなりません。勝敗は、制限時間内で自陣にボールが少ないクラスが勝ちとなります。PTAは当然のことながら地域の方々にも好評で、「ぜひ、本校での伝統的種目に取り入れてほしい」との声も出ています。

(4)学年PTAレクリエーション(親子ふれあい活動)では
  親子男女混合でのチームで試合を行いました。子どもから大人までが一緒になってできるので、子どもが小先生となり、保護者にルールや作戦について話をしました。家族外の大人と一緒になって、同じレベルでプレーができるスポーツは他にはありません。終了後に、「タグラグビーはやってみてわかりました。きつかったけどとても楽しかったです。ありがとうございました」と多くの保護者からお礼の言葉をいただきました。

今回、タグラグビーが小学校の体育授業に正式に取り入れられた結果、体育の授業だけでなく、いろいろな場面でタグラグビーが取り扱えることがわかりました。将来、タグラグビーを経験した子どもの中からワールドカップの選手やオリンピック選手が育ったり、また、ラグビープレーヤーでなくても、ラグビーが大好きな観戦者・サポーター等に育ってほしいと願っております。また、体力向上に加え、人間としての大事な資質の一つとしてコミュニケーション能力が取れるスポーツだということを、体育の授業を通して確信することができました。

鹿児島の小学校体育授業にタグラグビー導入   鹿児島の小学校体育授業にタグラグビー導入