フォトギャラリーはこちら

昨年度のチャンピオン サントリーサンゴリアスの今年のチームスローガンは“STAY HUNGRY”。昨年度に日本一に返り咲いたことに満足せず、HUNGRYの気持ちをそのままにこの一年、再度、日本一となるためハードワークしてきた。
一方、昨年度、サントリーに日本一を奪われたパナソニックは“Keep the Dream Alive”を今年度のスローガンとして、ここまでのトップリーグのリーグ戦13試合と前節のセミファイナルを全勝ですすめてきた。
今年最後の試合となる決勝で、どちらのフィフティーンの気持ちが上回るかと、秩父宮ラグビー場を満員で埋めた23,416人の観客が80分間注目して見守った。

 

両チームの戦いは80分間、インターナショナルに通じる高いレベルのラグビーを見せてくれた。
試合はサントリーのオーストラリア代表103キャップのSOマット・ギタウがバックラインを好リードする。前半5分にSOマット・ギタウが絶妙なグラバーキックでCTB中村亮土のトライを演出し、自らのゴールで7-0とリードして試合をスタートした。パナソニックも8分にFLL布巻峻介、WTB福岡堅樹、PRヴァルアサエリ愛、FB藤田慶和らが次々とボールを生かし敵陣ゴール前に迫ると、最後はLOヒーナンダニエルがゴールラインに飛び込み、7-5として、一歩も引かない。しかし、サントリーは前半33分、ラインアウトからアタックでフェイズを重ね、ゴール前に迫ると最後はSOマット・ギタウが左WTB江見翔太に飛ばしパス、途中から交替・入替で入っていたパナソニックSO山沢拓也とCTB笹倉康誉を突き飛ばして、江見がインゴールにボールを押さえ、サントリーが12-5とリードして前半を終えた。

後半は、司令塔SOベーリック・バーンズとFLデービッド・ポーコックが負傷交替したことも影響したのか、パナソニックはなかなかトライチャンスを得られないまま時間が過ぎた。後半16分、パナソニックはPGで3点加点して12-8の4点差となってからは、一つのプレーで勝敗が決まる白熱した戦い。サントリーFB松島幸太朗がカウンターアタックからパナソニックのスペースを突くと、パナソニックのFL布巻峻介が一発のタックルで松島を仰向けにする。若手として日本代表を担う2人の選手のマッチアップは見ごたえがある。

特に最後の10分間は圧巻だった。

後半32分、残り8分となった時間にサントリーはスクラムを獲得。そのスクラムからのボールをCTB中村亮土が、FL西川征克が、FLツイヘンドリックが、SOマット・ギタウがと、つぎつぎとスペースを突く。これに対し、ディフェンスに自信があるパナソニックはFLデービッド・ポーコックが途中で交替していたが、FL布巻峻介、NO.8谷昌樹、FL長谷川峻太らをはじめ、ピッチに立つ全員がタックルを決め続ける。アタックを続けるサントリーも決してボールを手放すことなくキープし続ける。SOマット・ギタウのグラバーキックにも、WTB中鶴隆彰がボールをしっかり確保してフェイズを続け、フェイズの回数は20回を超えるが、パナソニックはダブルタックルを続け、サントリーのブレイクは許さない。しかし、サントリーのフィフティーンは、全くあわてず、この時間を“PRIDE TIME”と呼び、「苦しい時間にこそ、しっかり声を掛け合ってしっかりプレーしよう。」と、選手が声を掛け合っていた。

サントリーの連続攻撃が7分を超え、フェイズの回数はなんと38回になったところで、サントリーFWがノットリリースザボールの反則をしてしまった。すると、フルタイムのホーンが鳴る。点差は4点。パナソニックはこういったシテュエーションに強い。PKからタッチでラインアウトからの攻撃を狙い、敵陣に入る。パナソニックにとっては、ノックオンもタッチも許されず、ゴールラインを目指すしかない。パナソニックがラインアウトからフェイズを重ね敵陣を少しずつゴールラインに近づけていったところで、パナソニック選手がラックでノックオンしたかと思ったら、サントリー選手のホールディングの反則をとられ、パナソニックが再びPKからラインアウト攻撃をねらう。今度はゴール前5mのラインアウトだ。パナソニックのサポーターは「ラインアウトからのモールで逆転」と最後の期待をかけ、また、サントリーのサポーターはサントリーがディフェンスで止めきることを祈ったに違いない。ラインアウトに投げ入れられたボールはLOサム・ワイクスがナイスキャッチしたが、その直後のモールの中でノックオンとなり、麻生彰久レフリーのノーサイドの笛が吹かれた。

実力差はほとんどなく、どちらのチームが勝ってもおかしくない試合であったが、沢木敬介監督の厳しい指導の下、“STAY HUNGRY”をチーム全員で実践し、自己管理の意識がこの1年間で向上したサントリーに栄冠が輝いた。ロビー・ディーンズ監督も沢木監督も目標としているチームとしてのインターナショナル・スタンダードが日本代表のチームレベルの向上にも間違いなく直結することを期待したい。

(正野雄一郎)