寄稿:立川市立幸小学校 主幹 毛塚洋一

昨年公示された新学習指導要領において、初めて例示としてタグラグビーが取り上げられた。ラグビーに携わる人間としてうれしい限りである。かつて、小学校の体育において、ボール運動として示されていたのは、サッカー型とバスケットボール型に限られ、ラグビーの入る余地はなかった。それが現行の指導要領で緩和され、「ハンドボールなどその他のボール運動を加えて指導することができる。」と改正された。この頃から小学校においても、徐々にタッチフットボール等が導入されるようになった。しかし、この改訂では、同時にソフトボール、ソフトバレーボールが示され、その他のボール運動としても、例としてハンドボールをとり上げていた。そのため、小学校の体育でタッチフットボール等のラグビー系のゲームを扱っていたのは、ごく一部の経験者、愛好者などに限られていた。

今年度のタグラグビー教室は、あいにく雨天のため体育館での実施となった

本校では平成18年度より、PTA行事という形で、毎年タグラグビー教室を開催している。今では、複数の学年で体育の授業として行われるようになったが、当初は「タグラグビー」と言っても知っている教員は皆無であり、「危険なのではないか」という先入観から、敬遠する雰囲気が強かった。体育の教材として認知してもらうためには、タグラグビーの楽しさと、安全性、簡便性、豊富な運動量などを知ってもらう必要がある。そのためには一つの学級、学年だけの実践では全体には広がらない。そこで、イベントとして全学年の児童、教員、保護者が参加できる「タグラグビー教室」を企画した。

これが功を奏した。学校にはタグラグビーの用具はなかったが、休み時間にはタッチフットを楽しむ子どもたちの姿が見られるようになった。クラブ活動でも球技クラブの活動の中でタグラグビーを行うようになった。クラブ活動で使うということで、タグベルト等の用具も購入できるようになった。

2年前の平成19年度には6年生の授業において試験的に導入(3時間扱い)し、昨年度は4年生、5年生で正式に導入した。今年度は4~6年生で実施予定である。PTAのタグラグビー教室も毎年確実に参加者が増え続け、100名を越える参加者を集めている。

第1回のタグラグビー教室は、日本ラグビー協会より飯原雅和氏を講師に招いて開催された。ほとんどの児童がタグラグビー未経験者であったために、基礎的な知識、技能の指導とともにゲーム的な内容の活動を多く採り入れた内容であった。この教室を通して、多くの児童がタグラグビーの楽しさを経験することができ、興味をもち始めた。

第2回は学校独自で実施したが、内容的には第1回と同じ流れで行った。第3回以降は、タグラグビーについての理解が広がってきたこともあり、4年生以上は試合中心に行っている。第5回である今年度は3年生以上はすべて試合を行い、タグラグビー教室というよりもタグラグビー大会と呼ぶのが相応しいようなイベントになってきた。

また、第3回からはPTA有志によるサークル「こだまの会」の全面的な協力により、教室終了後に流しソーメン大会を行っている。流しソーメン自体、子どもたちには貴重な体験であり、スポーツで汗を流した後の冷たいソーメンの味わいは格別の感がある。

今年度のタグラグビー教室は、あいにく雨天のため体育館での実施となった。しかし、例年とは違い、同じ体育館内で他学年のゲームを観戦することができたため、応援の声が飛び交い、校庭で実施していたこれまで以上に声援が飛び交い、一体感のあるイベントとなった。

当日は開会式に続いて、低学年、未就学児の教室を実施。小平こげらラグビースクールの協力で、ボール送りや、パスゲーム、リレーなどラグビーボールを使った簡単なゲームを行った。その間、3年生以上の児童は、中学年、高学年に別れてルールの確認等の学習を行った。その後中学年が5分ハーフの試合を4試合、続いて高学年がやはり5分ハーフの試合を4試合行った。本校ではあまりルールが複雑にならないよう、タグの回数を数えず、基本的に攻撃側は反則をしない限り攻め続けることができることにしている。限りなく攻撃側に有利なルールであるが、得点しやすいことが楽しさにつながると考えている。また、オフサイドについては、慣れないと理解が難しい。そこで、タグ後の最初のパスをカットすることや、パス直後のタグを禁止することで、オフサイドに準じたルールを設定している。

野球、サッカーと違い、小学校ではタグラグビーの経験者は極めて少ない。しかし、これは小学校の教材としては好都合な条件である。なぜなら、既成のルールや経験にとらわれず、自由な発想でルールを工夫することができる。また、経験の差によって生まれる能力差が少ないことで、すべての児童が平等なスタートラインに立つことができる。

今後、多くの小学校でタグラグビーが体育の教材として位置づけられることによって、一人でも多くの子どもたちにラグビーの楽しさを知ってほしい。また、タグラグビーの経験が、ボール運動に苦手意識をもっている子どもにとって、その苦手意識克服の一助になることを願ってやまない。