帝京大学 25-25 リコーブラックラムズ 帝京大学 25-25 リコーブラックラムズ 帝京大学 25-25 リコーブラックラムズ
マッチリポート

帝京大学 25-25 リコーブラックラムズ

(1回戦/2009年2月7日 at東京・秩父宮ラグビー場)2月7日、日本選手権、秩父宮での1回戦第1試合は、大学選手権準優勝の「帝京大学」と、来季からのトップリーグ昇格を決めたトップチャレンジシリーズ第1位の「リコーブラックラムズ」の学生対社会人の戦いとなった。
快晴の中、前半リコーのキックオフから帝京陣ゴール前に攻め込み、前半4分リコーSOがペナルティゴールにて先制の得点0-3、この後リコーペースで、FBラーカムを起点としたオープン攻撃、LOカウヘンガの縦攻撃を仕掛けるが、帝京の前へのタックル、粘りのサイドディフェンス、自らのミスも重なりゴールラインを割ることはできない。
前半15分、帝京は敵陣10mライン右タッチラインからの約45mの位置で得た反則をFB船津がロングペナルティゴールを決め3-3の同点とさせる。18分帝京はリコーゴール前の反則を、速攻で右に攻め、すぐに左に切り返した飛ばしパスよりWTB野田がゴール左隅に飛び込みこの試合最初のトライを上げ、8-3の逆転。
リコーはこの後21分、左22mラインアウトより、右に展開し、CTB金澤が縦に切れ込みそのままトライ、ゴール成功、8-10とリコー逆転。
この後、28分に帝京がペナルティゴールにて11-10と再リード、36分に帝京、39分にリコー、41分に帝京と各々ペナルティゴールを重ね、前半17-13と帝京のリードでハーフタイム。

後半、帝京は前半38分にシンビンとなったまま14名にてスタート、後半10分リコーのCTB金澤が右隅にトライを上げ、17-18と再逆転し、このままリコーのペースに持ち込むかと思われたが、14分帝京SOのハイパントがラッキーバウンドとなり、WTB野田がこのボールを手繰り寄せてトライ、22-18の逆転。
この後、帝京はキックの活用、ターンオーバーからのボールキープにて連続攻撃を仕掛けるが、リコーFBのラーカムにチャンスを断たれ、またミスで決め手を得られない。
後半31分リコー18番 相が力でねじ込みトライ、ゴール成功、22-25と再びリード。この後、両チームともミス、反則によりチャンスを得られないまま、後半36分に帝京は敵陣ゴール前22m中央にてリコーの反則を得る。ここで速攻、またはキックによるゴール前ラインアウトからトライを狙っていくとの判断も考えられたが、帝京はまずは同点にし残り時間での再逆転を狙いペナルティーキックを選択し、FB船津がしっかりとゴールを成功し、25-25の同点とする。残り時間で攻防を繰り返し、後半39分に帝京は敵陣10mライン右タッチライン付近でのペナルティーを得る。FB船津がこの距離、角度を前半も決めており最後の逆転チャンスに期待が高まる中、惜しくも足を痛め21番の内田が交替し、ペナルティキック。ボールは正確にゴールポストの中央に向かうが、あと約1mの距離が伸びずゴール不成功、25-25の同点でノーサイド。
トライ数を1本上回るリコーブラックラムズが準々決勝に駒を進め、次週NECグリーンロケッツとの対戦となる。

帝京大学は、社会人チームに対して80分間最後までチャレンジングに前へのタックルを行い、最後の最後までクロスゲームで同点まで追い込んだことに対して、心からチームの健闘を称えるともに若手選手の残る次年度の活躍にも大いに期待したい。
またリコーブラックラムズは、相手が学生ということもあり、自分達自身がこの日の敵であったとヘッドコーチも話すように、決してリコーらしい激しい試合に持ち込めなかった、今季一戦ごとに成長してきたチームであり、この日の試合で得た経験を是非次のNEC戦での活躍に繋げて欲しい。(高野 敬一郎)

会見リポート
 

リコーブラックラムズのローデン ヘッドコーチ(右)と、滝澤バイスキャプテン
リコーブラックラムズのローデン ヘッドコーチ(右)と、滝澤バイスキャプテン

◎リコーブラックラムズ
○トッド・ローデン ヘッドコーチ
「本当に、帝京さんはすごく良かったと思います。うまくスローゲームにされて、(大学生らしく)宿題もしっかりやってきましたね(笑)。やる気、気持ちがすばらしかったと思います」

──日本選手権は選手のもの、との発言があったが?
「今日は、試合前から自分たちが一番の敵だと感じていました。無意識にソフトな試合になるのではと。選手がそうなってしまった試合でした。今日まで、トップリーグ昇格のみを目指してやってきました。日本選手権出場はプレゼントのようなものですから、そういう意味で選手のものと言ったのですが、今日のソフトなパフォーマンスには自分もがっかりしています。でも、来週はまったく違うゲームをお見せしたいと思います」

──モチベーションが難しかったと思われるが?
「言い訳になりませんが、前週のホンダ戦は、今年の中でも一番くらいのよい試合でした。その後なので、自然に、無意識に相手は大学生というのが頭をよぎったのかもしれません。だが、ポジティブに捉えて、NEC戦は良い試合にしたいと思います。帝京さんには、何が大切かを改めて気づかせてもらえたと思います。きつかったけれど、こういうゲームで学ぶことが大事です。試合前からアティテュードが崩れていて、試合への入り方も良くなかったと思います」

○滝澤佳之バイスキャプテン
「完敗です。結果的に勝つことができませんでした。自分としては負けたと思っています。最低のゲームでした」

──学生相手で気持ちが入っていなかったのか?
「気持ちはあったと思いますけれど、ディフェンス、アタック、スクラム、すべての面で何もできませんでした。何も無いです」

──試合前の予想と、途中の指示は?
「帝京さんとは夏前にゲーム形式でやりました。20分を4本やりましたが、最初の40分は負けていて、スクラムの合同練習でも負けて、簡単に勝てる相手とは思っていませんでした。しかし、精神のどこかに学生相手という思いがあったかもしれません。試合後半は、選手に勝ちたいのか、負けたいのかと問いました。選手全員に本当に日本選手権を戦いたいのか聞いてみたいと思います」

──帝京の力は?
「帝京さんは強いチームでした。本当に帝京さんが力を出して、うちが何もできないゲームでした。トップイーストと変わりない力を帝京さんは持っています。本当に、今日は帝京さんの素晴らしいゲームだったと思います。出場していて、本当にきつかったです」

──スクラムは?
「完敗です」

──組んでみた感想は?
「うちのほうが弱かったです」

──学生相手にこの成績では厳しい見方も出ると思われるが?
「そのとおりだと思います。僕もそう思っていますし、これが今の力です」

──次戦について。
「今日のゲームで、今までやってきたことがすべて失われたと感じています。技術は1週間ではそう伸ばせませんから、気持ちの面で上げていきたいです。今日は、もう皆、人任せで、誰か取ってくれという気持ちだったと思います。自分もそうでした。正直、悪い予感がしていました」

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帝京大学の岩出監督(右)と、井本バイスキャプテン
帝京大学の岩出監督(右)と、井本バイスキャプテン

◎帝京大学
○岩出雅之監督
「良い準備ができている状況ではありませんでした。日程的に、テストがあったり、抵抗力の無い下級生がインフルエンザにかかったりと、時間的にメンバーが揃って練習ができない状況でした。しかし、大学選手権決勝へ初めて進出した力で、この日本選手権にもチャレンジしようと送り出しました。選手たちは持てる力で、しっかり今年やってきたプレーをしてくれて、クロスゲームになったと感じています。最後は、必ずワンチャンスが来ると思っていましたが、誤算はキッカーの足がつっていたことです(笑)。学生は良く頑張ったんじゃないでしょうか。大学決勝戦にピークを合わせましたが、ピークを過ぎても、日本選手権を狙う心構えをしっかりと持ち合わせないといけないこともチームにとって大きな経験でした。大学は、様々な条件下で、学生を無理やり引っ張るのでなく、チャンピオンになる意味と誇りを、学生の思いを高めながらやってきました。来シーズンはまだ未知数ですが、学生は日本選手権までを考えるシーズンになると思います。選手、スタンドのファンの皆様、スタッフに支えられてやってきましたが、胸を張って帰ろうと思います。学生の健闘を讃えたいと思います」

──両FLを代えたが?
「決勝戦の怪我が残念ながら治り切らなかったからです。今日は秩父宮に初めて立ったのが5名です。今日の選手たちも頑張りましたが、せめぎ合いの中でもう少し違った味が出せたかもしれません。もっとガンガン攻めるというプランもありましたが、フィットネスが落ちているので、前半、攻め過ぎるとエネルギーが残っていないのではと思ってこのような試合運びをしました。結果的に離されず、離し切れずセーフティなゲームになりました。チームは、新チームとしての進化も少し入れて戦いましたが、反応し切れない選手もいました。今日のゲームを良しとせず、今年のチームに満足している選手も、満足していない選手も新年度はチャレンジしてくれると思います。勝ちにこだわるという意味で面白いゲームでした。ウォーミングが終わって、正直、勝てる、行けるなと思いました。学生にも最初の10分で勝てると感じたら行けるぞと言いました。最後に足が止まったのは残念でした」

○井本克典ゲームキャプテン
「自分たちは、今年一年の総括として、来年につながるスタートとして準備してきました。本当に今日は勝ちに行くラグビーをしたかったので、社会人に対する準備を自分たちとしてはしっかりやってきました。少しの差で、悔しい思いをすることになりましたが、大学から、この日本選手権に出場する喜び、プライドをしっかり持ち、ここに立てたことは大きな誇りです。ゲームは、結果的に負けましたが、胸を張って帰ります。ありがとうございました」

──互角の勝負だったが?
「前半、BKのブレイクダウン、反則などのミスが起きても、しっかり我慢できたことがゲーム中の自信につながったと思います。80分、戦えるという気持ちはありました」

──準備は?
「今年一年、そうだったんですが、リコーさんだからという相手の分析でなく、80分、タックルし続けられるか、プレッシャーをかけ続けられるか、自分たちのラグビーをやり切ろうと準備してきました」