早稲田大学 55-13 タマリバクラブ 早稲田大学 55-13 タマリバクラブ 早稲田大学 55-13 タマリバクラブ
マッチリポート

早稲田大学 55-13 タマリバクラブ

(1回戦/2009年2月7日 at東京・秩父宮ラグビー場)

タマリバ、早稲田の壁を崩せず
6年連続で全国クラブ制覇を成し遂げ、悲願の日本選手権1勝にかけるタマリバは、全国のクラブチームの夢を背負い秩父宮に登場した。創設当時のメンバーには早大中竹監督ら現スタッフが多数在籍していたこともあり、お互いを知り尽くしたチーム同士の対戦にファンの興味は高まった。
試合開始からタマリバは思い切ったディフェンスで先にしかけた。早大のセットアタックをなんとか止めると、2次、3次のオープン攻撃に対し、外側のディフェンスが前に出ることで早大の攻撃を遮断した。早大はSO山中が同じリズムでパスを繰り返し、BKはタマリバの激しいタックルに苦しんだ。この日の早大はFB田邊、CTB長尾をリザーブにおいたこともあり、アタックでの対応に苦慮し前半を19対5の僅差で終えた。

後半が期待されたタマリバの誤算は、FWのセットプレーでの力負け。スクラムでは早大フロントローの圧力に屈し、球出しが安定せずにセットアタックが機能しない。ラインアウトでもゴール前では全員が並ぶ秘策を今年も見せたが、トライを奪うことはできなかった。SO竹山のコントロールは熟練の技を見せ早大を翻弄するが、スローでの展開が多くBKの持ち味もなかなか出せない。結果、早大から2トライを奪うが、スピードランナー大松らの走りを充分に活かすことはできなかった。
この日の早大は、大学の試験をわずか3日前に終えたばかりということもあり、ゲームでのスコア感覚が鈍く、ストレスの多い戦いとなった。スクラムを押して、セットアタックも確実にゲインするが、オープンへのアタックが単調でゴールラインに届かない。SO山中からFB飯田まで5人の2年生がスピードある展開を図るが、ディフェンスをブレイクするスキルはもう一歩。しかし、勝負どころでは、NO8豊田がライン参加し、一瞬でタマリバディフェンスをペネトレイトすると早大のリズムが動き出した。この日の注目はFLで出場した1年生山下。豊田とともに球際に強く、今後の早大のゲーム作りに必要な存在感を持つプレーヤー。また、この日WTBとして出場した村田は、思い切り良くプレーしCTB以上に幅の広さを見せた。

来週、早大の2回戦の相手は、監督、選手共にOBを多く含むサントリー。早大の選手たちにとっては、自分たちの力を試す格好の相手となる。日本選手権の魅力は勝敗だけでなく、格上の相手へのあくなき挑戦。トップリーグ、大学、クラブ、それぞれのチームがプライドをかけて世界にチャレンジするダイナミックなプレーを秩父宮で競い合って欲しいとファンは心から願っている。(照沼 康彦)

会見リポート
 

タマリバクラブの高橋代表(右)と、井戸キャプテン
タマリバクラブの高橋代表(右)と、井戸キャプテン

◎タマリバクラブ
○高橋清貴代表
「この試合のために、この1年、積み上げてきました。我々は対戦相手を分析し、効率的な練習をして、サラリーマンでも対等に学生相手にラグビーができることを証明したいとやってきました。点数については真摯に受け止めますが、要所要所では意図したことができた部分もありました。全国のクラブラガーマンに認めていただける試合だったと思います」

──打倒学生チャンピオンとして何かもう少し工夫は?
「今年のシーズン当初に世代交代があって、チーム状況を踏まえて基礎・基本の徹底を図ってきました。その成果はある程度出せたと感じています。来年は、さらに積み上げて行きたいと思います」

──結果的に昨年度と同様の点差になったのは、練習量の差か?
「現実として練習量は差があると認識しています。その現実にチャレンジするのがクラブとしてのタマリバの意義です。差があってもラグビーを研究し、相手を研究し、効率よくその差を埋めたいが届いていません。練習量が増えれば、縮められると思います」

○井戸聞多キャプテン
「本日の試合は、早稲田さんを徹底的に分析して臨みました。しかし、セットピースで思った以上に圧力を受けてしまいました。また、序盤にペナルティが多く、相手にリズムを作らせてしまい、本来のゲームプランが崩れた試合になってしまいました」

──対策と、思ったより通用したところは?
「特にラインアウトのサインはしっかり読んで対策してきましたが、高さで上回られました。通用したのは、1年間やってきたコンタクトと切り替えの早さでしょうか。進化したところはスクラムとラインアウトの高さでしたが、実際、本質的な強さが劣っていると感じました。ただ、チーム全体として意識されていたとは思いませんが、選手個人の気持ちが切れることはなかったと思います」

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早稲田大学の中竹監督(右)と、豊田キャプテン
早稲田大学の中竹監督(右)と、豊田キャプテン

◎早稲田大学
○中竹竜二監督
「毎年、日本選手権1回戦でタマリバクラブと戦っていますが、うちのOBが多いチームで、この試合に1年をかけてくるので、モチベーションに20倍くらいの差があります。一昨日、試験が終わってコンディションが厳しいこともあって、無理に気合を入れろとは言えず、選手たちはその中で頑張ってくれたと思います。キャプテンも、そうは言いながらも、理想と、そうでない状況があってフラストレーションはあったと思います。次につながる激しいプレイとディフェンスをやろうとしましたが、結果的に2トライを獲られたのは反省点です。
この試合はクラブが出ることに意義があるのかとよく問われますが、当然、ものすごく意義がありますと答えます。それが、タマリバを創った僕のいわゆる『愛』ですね。毎年、クラブの意義を説くだけでなく、クラブの代表が日本選手権に出られるようになった経緯を選手に伝えています。それはタマリバに対する敬意でもあるし、途中、僅差の試合になったのもタマリバの良さだったと思います」

──クラブ出場の意義とは?
「意義はすごくあります。そもそも、意義を問うこと自体、疑問です。日本選手権はクラブラグビーをやっている人の大きなモチベーションになっていますが、それを言うまでも無く意義があります。これを勝ち取ったんだということを新しくクラブに入った人にも伝えて継続させていくことが大事です」

──社会人もクラブ化が激しいが?
「それは今後考えることです。タマリバのようなクラブと企業チームのクラブ化はまったく違うものです。日本選手権の枠を『そのレベルじゃない』と言われ続けても、勝ち取ったのと、ちょっと企業がうまくいかなくなってクラブ方式に運営を変えたのと一緒ではないでしょう。きちっとマスコミの方にも認識していただくことから始めないといけませんね」

──試験などのハンディは?
「まったくもってハンディです。練習やっても人が集まらないし、徹夜もしているし、怪我のリスクもあるし。社会人には外国人を出さないように枠2つをこちらが選べるようなシステムにしないと(笑)」

──若い選手が多かったが、経験値を上げるためか?
「怪我人が少しいて、今日は外しました。次は大丈夫と思います。経験値と両方です。タマリバは個々の選手を見ると良い選手が居て、我々としては1ヶ月ぶりの試合で、毎年、怪我人が出てしまいます。去年もキーマンの長尾が東芝戦に出られませんでした。また、そういう選手に外からゲームを見させるのも狙いの一つでした。シーズン中、こんなにメンバーを代えたチームはなかったと思いますが、シーズン当初に出ていた選手に、チャンスをもう1回、期待を込めて与えました。次へというより、本人たちの成長を期待してのことです」

──サントリー戦に向けて。
「当然、向こうは外国人もいるし、日本人も代表クラスがゴロゴロいるチームです。普通に戦えば、真っ向勝負は分が悪いでしょう。ダイナミックチャレンジをやり抜くしかありません。勝算はあるし、勝つ前提で、日本で一番速いシャロウディフェンスをやってきています。アタックで奇策は考えていませんし、理屈じゃないディフェンスで勝機をつかみたいですね」

──相手は旧知の清宮監督だが?
「それは、監督同士の素質で言うと相当及ばないですね。僕はよくサントリーに行って勉強させてもらっていますが、清宮さんは惜しみなく色々なことを教えてくれる。『師匠』というとおかしいけれど、その差は明らかにあると思います。後は、僕ができること、選手と一緒に考えて、どう良いパフォーマンスをさせてあげるか、一番頑張れる環境を作るのが僕です。まったく同じ作戦は使いません。負けて当然、勝てればこっちのものですので、もう1回、思い切ってぶつかれる最高の舞台だと感じています」

○豊田将万キャプテン
「久々の全員が出揃うゲームで、うまくいかなかったこともありましたが、怪我無く次の試合に万全で臨めるのは良かったと思います。気持ちを切り替えて臨みます」

──タマリバの印象は?
「クラブを創った当事者のいる前では言いにくいのですが、今年は例年に比べて淡々とやっている感じがしました。熱くなるところを違えているところもあったし、僕はタマリバを尊敬していたのですが、そうじゃなくなりました」

──サントリー戦に向けて?
「やるなら、サントリーさんが良かったですが、(佐々木)隆道さん(元早稲田主将・現在リハビリ中)が居ればもっと良かったです。相手に早稲田のOBが多いし、誰が見ても強いチームです。いかに勝つことができるか、早くやりたいです」

──調子は相当良さそうだが?
「自分のやるべきことを考え、チームにどう貢献するかを考えたら、僕はボールを持って前へ出ることだと。一点に集中して仕事できたと思います」