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12月8日(秩父宮ラグビー場)

夕闇が迫る秩父宮ラグビー場に照明が灯り、このビッグゲームに集まった観衆の頬を映す。花園ラグビー場での第一試合に続き16時のキックオフとなったこのゲームは、あまりの熱気に時間も寒さも忘れる大激戦となった。

 サントリーサンゴリアスSOマット・ギタウが大きく左足を蹴り上げてキックオフ。ヤマハWTBゲリー・ラブスカフニが195cmの長身でこのハイボールをキャッチしてリターン。ヤマハはこの日SOに清原祥を起用し、外への展開を図った。

 開始2分に、いきなりサントリーのアタックが炸裂する。ゲーム最初のラインアウトでセットと同時にボールをスロー。プラン通りに後方でのクリーンキャッチから外に展開、SOギタウがゲインラインを突破。ヤマハDFのギャップを突いてWTB尾崎晟也が高速でトライ。(7-0)このトライが互いのアタックへのこだわりに火を点ける。

 ビッグゲームにありがちなエリアを奪うキックは封印され、互いがボールを継続し、徹底したアタックの攻防が続く。ヤマハはFWのショートサイドアタックでサントリーDFを減らすとCTBヴィリアミ・タヒトゥアが強烈なヒットで前進を図る。ジャブどころか、最初から互いが足を止めて打ち合う肉弾戦に観衆は固唾を飲んだ。

 ヤマハは相手陣で得たPGチャンスにFB五郎丸歩にボールを渡すが、選んだのはタッチキック。そしてモールからのトライに拘る。この徹底が固いパックとなって前に進み始める。タッチラインに押し出そうとするサントリーFWの圧力を突破して、HO日野剛志が反撃のトライ。(7-5) 
 18分にはラインアウトからモールを意識するサントリーFWの後方をSH矢富勇毅が崩し、CTBタヒトゥアが突破。ゴール前で素早い球出しからLO大戸裕矢が飛び込んで逆転。(7-12)両チームの超攻撃的ラグビーに観衆は息を飲む。互いがエリア獲得のためのキックを排除し、身体を当てて相手DFを下げると高速で外側にボールを動かす。ハンドリングエラーも極めて少ない、スクラム回数も無駄なペナルティもない徹底したハイスキルラグビーが展開される。

 この日のサントリー唯一の誤算は前半37分。自陣22M付近でのアタックで思うように前に出られない。HIAで代わって出場のSO田村煕に簡単にボールを戻してキックを選択。この状況を狙い澄ましたFLクワッガ・スミスが完璧なブロック。ゴールラインへ転がるボールを難なく抑えてトライ。(10-22)ヤマハに流れが来るか。
 しかし、その直後の41分、不用意なペナルティをSOギタウに決められる。この3点が後で効いてくる。(13-22)

 後半、エンジンが温まったサントリーは、正確なラインアウトを起点にヤマハDFを崩しにかかる。SOギタウのループプレーで外側を意識させると、ヤマハDFのギャップにFB松島幸太朗が走りこむ。7分、ゴール前ラインアウトでモール近くに寄ったDFをしり目に、外側でフリーとなったWTB尾崎が2つ目のトライ。30分にもSHマット・ルーカスが崩したショートサイドから一気に前進し、最後はWTB尾崎が3つ目のトライで逆転。(25-22)ラグビー日本一を狙う両チームの攻防は尽きない。

 サントリーはSHを起点としたFWのアタックだけでなく、SOギタウからのシェイプ、外へのループと15人の高速アタックを繰り返し、日本のどのチームよりも圧倒的なボールタッチ数で攻め続ける。
 しかし、ヤマハはあきらめない。執念はスクラムから甦った。愚直にスクラムを押し、そのプレッシャーがサントリーを追い詰める。疲れの中、身体を当ててボールを継続するが、サントリーの強烈なタックルを浴びて前進ができない。その苦しい中、サントリーボールのスクラムを押し込んで起死回生のターンオーバー。観衆がどよめく。時間が足りない。

 ヤマハの最後の攻めに、サントリーDFが犯したペナルティは終了間際の40分。このチャンスを名手五郎丸は確実に決めて同点とする。(25-25)

 後半終了時点で同点となり、まさかの延長戦。10分間のサドンデス方式のこの戦いを誰が予想できただろうか。

 互いが死力を尽くした超攻撃型のゲームは、延長5分、SOギタウのペナルティゴールで決着が着いた。(28-25)
 悔しがるヤマハフィフテーン。3連覇への道をギリギリで繋ぎとめて安堵するサントリー。激しさの中に互いが規律を求め、自分たちのスタイルを貫いたこのゲームは観衆の心を打ち抜いた。誰の目にもスキルの髙い、クリーンなゲーム。トップリーグの魅力を心から誇れる、記憶に残るゲームだったと言える。
(照沼 康彦)


ヤマハ発動機ジュビロ

清宮克幸 監督

「今日は両チームが持ち味を出して準決勝に相応しい試合になったと思います。勝敗が分かれたプレーはいくつかありますが、完全に崩しきったところの最後のプレーでノックオンがあったゴール前のシーンかと思います。サドンデスの延長戦では、サントリーのディフェンスの勇気と、ディシプリンの素晴らしさを見せてもらいました。両チームの選手達が持ち味を出し切った試合だったと思います。

次の試合は自分たちのために戦うことになります。選手たちは、来週、ヤマハのためにしっかり、頭を上げて戦ってくれることと思います」

──延長戦というケースも想定していましたか?また、延長戦はキックオフでのレシーブで始めることになりましたが、選手たちの戦い方に自信はありましたか?

「うちにはロングキックのいいキッカーが多いので、そういう準備はしていました。自陣からボールをキープして攻めることを考えていました。最初にキックした時はツキもありマイボールになりましたが、そのツキで得たボールをまた手放すようなプレーをしてしましました。最後はキッキングコンペティションになり得ることも考えて、五郎丸を交替させずにプレーさせていました。後半10分から15分あたりには延長戦になる可能性も意識していました。本来は50分くらいには五郎丸を田中渉太に替えるプランがありましたが、延長戦の可能性もあったため五郎丸は替えませんでした」

──延長戦になってから、キックを2度使いましたが、あれは選手の選択だったのですか?

「あのような延長戦では、ロングキックを蹴って全員でそのボールをチェイスして相手ボールを奪うというのがセオリーだと思います。(ロングキックでなく)高いボールを蹴ったのは選手のミスだったと思います。1度目のキックではマイボールに確保できてうまく行ったのですが、2度目はピンチとなりました」

──バックスではタヒトゥア、ラブスカフニ、シオネの3人は、前半、効果的な動きをして運動量も多かったので後半には疲れも出てきたかと思いますが?
「彼らを交替させるつもりはありませんでした」

 

堀江恭祐 キャプテン

「今週1週間、いい準備をしてきて、最後まで勝利に向けて戦ったチームを誇りに思います。最後、取りきれなかったこと、こうしたら・・という点を次の試合に生かして、この負けを自分たちの成長につなげたいと思います。また来週の秩父宮での試合にしっかり準備して戦いたいと思います」

──ペナルティキックをもらった時、ショットを狙わず、ラインアウトからのアタックを選択することが多かったですが?

「前半にはPKからラインアウトからのアタックでスコアできていました。また、モールでも取れました。しかし、その後は時間も見ながら、もちろんショットでの得点チャンスがあったらショットも狙っていこうと考えていました」

 

サントリーサンゴリアス

沢木敬介 監督

「今日は非常にレベルの高い試合だったと思います。ヤマハのエナジーあふれるプレーに対して最後まで我慢ができたところ、それと、リザーブも含めて全員がその役割を遂行してくれたところが、次の試合への自信につながったと思います。自分たちが目指してきた3連覇という大きな目標を達成するために、次の試合にはもっとHungryになってチャンピオンだけを目指して準備したと思います」

──この試合に備え、延長戦も想定して準備してきましたか?また、実際に今日、延長戦になった時は選手達にどのような指示をしましたか?

「サドンデスの延長戦もキッキングコンペティションもシミュレーションをしっかりしていました。したがって、今日は、リザーブを含めチームとしてのいい勝利だったと思います。延長戦になり、まずペナルティをしないこと、グレーなプレーをしないこと、ボールを持ったらしっかりボールを持ち続けることという意識を持って戦うように言いました」

──後半、3点差でのリードの時間が続いたところでは、ディフェンスがとてもよかったと思いますが、ハーフタイムに特に指示しましたか?

「前半のディフェンスは淡白でした。『後半みたいなディフェンスできるのなら、最初からやれ』と思います。ハーフタイムでの指示というより、選手たちがトレーニングで意識してきたことをやりきることができたのだと思います」

──試合開始早々のアタックでトライを取ることができましたが、前半その後はボールを回すだけでなかなか得点チャンスにはなりませんでした。また後半はボールを回すよりタテに突っ込んでいくことが多くなったと思いますが?

「後半のプレーが前半からのゲームプランだったのですが、なかなかプラン通りにはできません。ただし、今日は後半によく修正できていました」

──延長戦ではサントリーのキックオフになりましたが、そのためヤマハがボールをキープしてアタックを継続してくると考えていましたか?

「あのキックのバウンドでヤマハボールになったのは想定外でした。ただし、皆、パニックにならずに良くディフェンスできました」

──決勝は対神戸製鋼になりました。ダン・カーターもいるいいチームですが?

「神戸製鋼は今年からボールを動かす、いい外国人の10番がいる強いチームになったと思います。サントリーが自分たちのスタイル、やり方をどれだけ出せるかにしっかりチャレンジしたいと思います」

──今日は11番尾崎晟也選手が3トライを取るなど若手選手が活躍しましたが?

「尾崎もよかったし、梶村はタヒトゥアにぶっ飛ばされたところもありましたが、梶村はあれがぶっ飛ばされないようになれば日本代表に出られると思います。尾崎ももっと成長させていかなければいけない選手だと思います」

──試合直後のインタビューで神戸のダン・カーターに対して『サントリーにはマット・ギタウがいる』と答えていましたが、今日のギタウはいかがでしたか? また、最後、ギタウに任せたサヨナラPGについては全く心配ありませんでしたか?

「ギタウは見ての通りです。彼はインターナショナルプレーヤーです。彼はたいへん負けず嫌いで、神戸にはリーグ戦で負けているので次の試合はもっといいパフォーマンスをしてくれると思います。最後のキックについては全く心配していませんでした」

 

流大 キャプテン

「ヤマハさんの素晴らしいプレーでタイトなゲームになりました。最後、延長戦に勝ち切れてよかったです。個人的にはこういった展開になってしまった判断ミス、自分のスキルの問題もあり次に向けて改善していきたいと思います。 神戸製鋼にはリーグ戦で負けています。自分たちのパフォーマンスをしっかり出し切ってリベンジャーとしてしっかり頑張りたいと思います」

──今日は我慢強いディシプリンの良さが光ったと思いますが?

「ディシプリンを守ってディフェンスをしっかりすることを練習してきました。試合中はペナルティをしないように選手達で声を掛けながらやっていました。ボールを動かして、選手たちが勝手なディフェンスをせず、我慢強いディフェンスをすること。それを選手達ができるようにすることだと思います」