サントリー 18-40 三洋電機 サントリー 18-40 三洋電機 サントリー 18-40 三洋電機
走って、タックル、ターンオーバー。三洋、初の日本一をつかむ

両チームの最後の決着は、待ちに待った日本選手権決勝の舞台。トップリーグを初の全勝で飾った三洋電機ワイルドナイツ、対してその雪辱をマイクロソフトカップ決勝で果たし優勝のサントリーサンゴリアス。ラグビーファン注目の3度目の対戦は、今シーズンのファイナルマッチとして秩父宮ラグビー場に16,117人の観衆を集めておこなわれた。

三洋のSOトニー・ブラウンのキックオフで始まったこのゲームは、開始当初からお互いの意地がぶつかり合う。モールからSH田原、SO菅藤のキックで前進をはかり、ラックからFW周辺をスローテンポで崩しにかかるサントリー。グラウンド全体にボールが動くアップテンポに持ち込んで、ターンオーバーから得点を重ねたい三洋は、1つのタックル、1つのイーブンボールに激しさを見せる。

開始6分、スクラムのコラプシングからFB田邉のショットで先制した三洋は、8分にラインアウトからのビッグプレーでこのゲームの流れを決めた。サントリー対策として準備したショートラインアウトから、思い切ったロングスロー。この試合のぺネトレーターとして起用したFWタイオネがゲインラインを突破、飛び込んでくるCTBの背中越しにSOトニー・ブラウン、BKラインへとパスがわたりFB田邉がトライ。ラインアウトに絶対の自信を持つサントリーだが、この試合直前に怪我で最長身のメイリング、ビッグゲームに勝負強さを持つ佐々木を欠くこととなり、自陣でのディフェンスに一瞬のとまどいを見せた。
さらに15分、サントリーボールのラインアウトからCTBのカットインを激しいタックルでターンオーバーし、ショートサイドをトニー・ブラウン、霜村、榎本、三宅が見事なパスとランニングでブレイク。「防御は最大の攻撃」(宮本勝文監督)と泥くささを売りにしてきた三洋らしい見事なトライ。

前半16分に予想外の点差(0-17)となり、サントリーがうつむきかける。ここでサントリーキャプテン山下が、チームに激を飛ばす。このままでは終われない。
23分、清宮監督はここで早くもSHを田原から経験豊富な田中に替える。サントリーにはトライが必要だ。サントリーはキック中心の展開から攻撃を切り替え、停滞からは近場でハンマー、FWとBKのギャップを狙ってランナーがしかけ、そこから外への展開を図ろうと三洋ディフェンスを崩しにかかる。
25分、ニコラスのショットで初得点。(3-17)
34分にはFB有賀がカウンターアタックからニコラスへとつなぎ、ビッグランニング。最後もニコラスが飛び込んでトライ。(8-17)

40分にもニコラスのショットで6点差まで追い上げた。(前半11-17)

後半の攻撃が期待されたサントリーだが、このゲームでの三洋ディフェンスは気迫溢れるプレーでゲームの主導権を渡さない。セットプレーで圧倒したいサントリーだが、スクラムはほぼ互角。ラインアウトも4人、6人と変化を加えながら、サントリーのジャンパーをうまくかわしていく。また、エリア獲得の攻防においても、トニー・ブラウンのスーパーキックで大きく前進を図り、自陣でのラインアウトを極力減らす徹底振りは、サントリーのゲームプランを大きく狂わせた。
早くも4分に田邉のショットで突き放すと、8分にはラックの連取からNO8ホラニ龍コリニアシがラインブレイクしてトライ。このシーズン素晴らしい成長を見せたSH田中の素早いパスワークはSOトニー・ブラウンだけでなく、ランナーとしてのタイオネ、龍コリニアシの力を十二分に引き出していく。ラックに8人全員を使い、ブレイクダウンで激しくチャレンジし続ける三洋FW。そこでFWがサポートできずBKだけの展開となっても、ボールをステイさせずに捌くSHの登場はラグビーの魅力をスタンドの観衆だけでなく、TV画面からアップで見守るラグビーファンをも堪能させてくれた。

31分にはサントリー平がトライを返すが、直後の34分には、またも龍コリニアシがタックルを振り切って独走し、決定的なトライ。勝負を決めた。(18-40)
三洋は最後まで走り続け、激しいタックルから、相手の持ち味を消すことで勝利を掴んだ。15人全員がひたむきに前に出て、タックルし、どこからでもトライを狙って攻撃をしかけていく、エキサイティングなラグビーを続けることで自信を取り戻した。第45回日本選手権は、古豪三洋電機が「防御からの攻撃」で日本一を勝ち取り、見事な復活を見せてくれた。(照沼康彦)

サントリー 18-40 三洋電機 サントリー 18-40 三洋電機 サントリー 18-40 三洋電機
サントリーサンゴリアス 18-40 三洋電機ワイルドナイツ(3月16日、決勝 at秩父宮ラグビー場)

サントリーサンゴリアスの清宮監督(右)と、山下主将 サントリーサンゴリアスの清宮監督(右)と、山下主将

◎サントリーサンゴリアス
○清宮克幸監督
「見ての通りの結果だと思います。ペネトレーター数名にラインブレイクされたことによってディフェンスが後手後手になりました。完敗と言えば、完敗です。ただ、トップリーグのチャンピオンを獲って、日本選手権の決勝にも出られたので、今年のサンゴリアスは十分に結果を出した‥‥とは言えませんね(笑)。今のシステムでは2つの選手権があるから、日本選手権を獲ると真のチャンピオンみたいになりますね。我々はトップリーグチャンピオンにプライオリティを置いているので、この仕組みをいつか変えてほしいという希望はあります。今日のグラウンドでのパフォーマンスは優秀な3人の外国人選手にゲームを支配されました。1回であれば、前回のようにいろいろな策で勝つことはできるのですが。今日は、そういう意味でパンチの応酬になって三洋さんの強みが出たなと思います。サントリーの強みを出したかったが。まとまらないことを言っていますが‥‥まあ、悔しいということですね」

──モールが不発?
「FW対FWでモールで獲れなかったのは三洋さんのFWの勝ちです。あそこで球を出すなら、BKのアドバンテージを取らなきゃいけないところでしたが」
──BKのムーブも読まれていた?
「読まれていたというより、三洋さんのBKのディフェンスが良かったということでしょう」
──SHを早く交代させたが?
「まあ、点を取らなきゃいけないのが一つです。僕はそんなに悪い入りとは思わなかったが、1本のSHからのキックがマークされたり、取られたりしていましたし、セットプレーからの球出しを邪魔されていましたので」
──けが人のせいかFWが疲れていたようだが?
「そうですね。ここまで来れば両チームとも体はきついのですが、でも、やっぱり攻めているほうがこたえないですからね」

○山下大悟主将
「本当に、完敗です。まあ、負けるとしたらこういうイメージでしたが、そうなりました。三洋さんのラグビーにちょっと付き合って、本当にパンチの応酬になってしまい、そこが悔やまれます」

──ハーフタイムに気合を入れていたが?
「前半、最悪の入り方で17点差をつけられて、まあ、自分で演じているところもありましたが、選手たちがパニックというか、眼がアップアップしていましたので」
──勝つのは難しい?
「まあ、そうですね。入りが悪かった。そうですね。17点差がついたのでチーム全員がまだまだということですね」

サントリー 18-40 三洋電機 サントリー 18-40 三洋電機
 

三洋電機ワイルドナイツの宮本監督(右)と、榎本主将 三洋電機ワイルドナイツの宮本監督(右)と、榎本主将

◎三洋電機ワイルドナイツ
○宮本勝文監督
「ありがとうございました。今週、先週と自信を取り戻せば行けるんじゃないかと選手が言っていましたが、昨日、今日、選手がとても良い顔をしていて、しばらくぶりに今日は勝てると試合前から思っていました。サントリーさんは強いですが、選手たちの勝ちたい気持ちが上回ったと思います。選手にありがとうと言いたいですね」

──同じ相手と決勝を戦うことになったが。
「過信ではなく、自信を取り戻すことが大事でした。自負というか、自分たちの一番強い、やってきたこと、自分たちを信じること。それだけです」
──ノータッチキックはゲームプランどおりか。
「ブラウンが際でキックを蹴っていたと思います。切らなければ守ればいいし、極力、自陣でのラインアウトを避けたかったので、出ても敵陣でのラインアウトでしたから」
──モールも止めたし、ディフェンスも良かったが。
「やっぱり、サントリーさんがモールで来ることは分かっていましたから、対策はしました。それがはまったと思います。ディフェンスはシステムどおりにやっていただけです。最初のラインアウトは失敗しましたが、レフリーもサントリーさんのノット1mのギャップも見てくれて、ミスしたのは3つか4つくらいでしたね。ターンオーバーは、もし、サントリーさんのブレイクダウンが強かったらできませんでしたが、1つ目の選手が当たり負けしていないみたいでしたから、選手がチャレンジしていったんでしょう」
──先輩の悔しさを晴らしたが。
「答えにくいね(笑)。確かに、僕自身、選手時代、3回2位を経験して、監督でも2回経験していますが、選手たちは感じていなかったのでは。サントリーさんに勝ちたいという気持ちしかなかったと思います」
──16勝1敗の成績には。
「何も言うことないけれど、まあ、毎週、毎週、必死で長かったんですが、やっと終わったという気もするし‥‥。長かったです」
──勝利を確信したのは。
「終わるまで、色んな歴史がありますからね(笑)。終わりまで、僕は実際、ハラハラして見ていました」

○榎本淳平主将
「最後の試合だったんですけれど、ゲームのこと、正直、覚えていないんです。勝てて良かった。それだけです」

──前回との違いは。
「前半、ポンポンと獲ったときは、サントリーさんのエンジンがかかっていないと感じました。前回よりディフェンスも前へ出ていないように感じました」
──サントリーのオフロードパスもあまりなかったが。
「もう、16試合して、どんなアタックが来ても大丈夫な経験を積んでいますので」
──キャプテンとしてどんな言葉を。
「決勝戦は、自分たちのラグビーを出そうというのもあったと思いますが、やっぱり絶対、勝ちたいという気持ちを伝えました」
──ラグビーをさせてくれたらと試合前はおっしゃっていたが。
「結果的に勝ったことがすべてですが、この前に比べれば、ラグビーさせてもらったと思います。僕らの持ち味のディフェンスからターンオーバーのトライもありましたし。最後の最後で自分たちのラグビーを出せたと思います」
──勝利を確信したのは。
「僕自身は、後半は時間がものすごく長く感じて、まだ30分、まだあれから1分と感じていました。みんなの表情を見ていたら、コリニアシがトライを獲った35、6分のところじゃないかと思います」
──ゲームプランは。
「今日の試合はサントリーさんに(前回のマイクロソフトカップ決勝のように)ああいうスローテンポでさせないように、常に先手、先手を取っていこうと言って来ました。時間をつぶすラグビーができないように早い段階で2本獲れて、プランどおりでした。今年の強さはどこからでも点が取れる強さでしたが、それが出せたと思います」