若干の風が舞っている状況下、風上のトヨタがキックオフ。トップリーグ同様、BKラインに谷口をはじめとするキープ力のあるFWを絡めつつ、展開攻撃を仕掛けるトヨタに対し、SOブラウンを中心に献身的なディフェンスで応戦する三洋。 序盤トヨタの連続攻撃にゴール前で、ピンチを向かえた三洋だったが、ブラウンが、相手ボールを奪取、キックで大きく陣を取ったことで、流れが三洋に傾く。9分、トヨタゴール前で得たPGチャンスを狙わずFWで仕掛けた三洋は、トヨタディフェンスの踏ん張りにあうも、リズムに乗った攻撃で、ラックからLO川口-FLタイオネと繋ぎ、最後はSOブラウンがトライ。(G不成功0-5) SO正面を起点に、高いランニングスキルをみせるBKにFWが絡み、しばしば三洋ゴール前に迫るトヨタだが、三洋の‘攻める'ディフェンスの前にターンオーバーされ、チャンスを逃す。33分三洋ゴール前から得た反則も、PGを狙うしかない。(3-5) SOブラウンを起点に、狭いスペースを巧みに生かし、確実に前進する三洋だったが、37分トヨタWTB水野が一瞬の隙を突きパスをインターセプト、60mを走り切り逆転のT。(G成功10-5)このまま前半終了かと思われたが、直後のキックオフで確実にボールキープできなかったトヨタに対し、オーソドックスにBK展開するも、確実なボールキープで連続攻撃する三洋がトヨタゴール直前に迫り、左中間ラックからSH田中-FLタイオネと繋ぎ左隅にトライ。(ゴール不成功 10-10)ハーフタイム直前での集中力に僅かな差が垣間見られたプレーだった。 後半は大きな開きになるかと思われた開始直後の41分、ハイパントのこぼれ球をトヨタCTB岩本がキャッチ、エアポケットに入ったような三洋ディフェンスの間隙を走り抜け左中間にトライ。(ゴール成功17-10) プレッシャーをかけ、攻め続ける三洋に対し、真っ正面から跳ね返すトヨタ。膠着状態気味の55分、ハーフウェイライン付近のラックから、狭い左サイドを突いたブラウンが創ったスペースに、反応したCTB霜村が絶妙なランを披露、途中交替のWTB吉田と繋ぎトライ。(ゴール成功17-17) 流れを掴んだ三洋は、60分PGチャンスで確実に加点(17-20)し逆転。トヨタFWの足が止まり始めた67分には、トヨタゴール前スクラムから形成されたラック、NO8ホラニが左中間に飛び込みトライ。(ゴール不成功17-25)諦めないトヨタは、70分過ぎから、しばしば三洋ゴール前に攻め入るが、三洋FWの巧みなディフェンス力の前に、ゴールラインが割れない。トヨタは三洋タッチキックからカウンターアタックを仕掛けるも、ポイントゲッターである遠藤を‘面'で三洋ディフェンスが確実に止める。75分、三洋NO8ホラニがシンビンとなったところで、PGを狙わず、ラインアウトでアタックするトヨタは、右中間で形成したモールをゴールポスト下へドライブさせトライ。(ゴール成功24-25)勢いに乗ったトヨタは直後のプレーでも攻め続けるが、安定感をみせる三洋ディフェンスの牙城を崩せず、最後は自陣22m付近のボールをターンオーバー、タッチに蹴り出した三洋電機ワイルドナイツが逃げ切り、初の決勝進出を決めた。(廣島 治) C:2008, JRFU(Photo by A. HASEGAWA) トヨタ自動車ヴェルブリッツ 24-25 三洋電機ワイルドナイツ(3月8日、準決勝 at近鉄花園ラグビー場) トヨタ自動車ヴェルブリッツの石井監督(右)と、麻田キャプテン ◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ ○石井龍司監督 「三洋さんのディフェンスを上回るアタックができなかったのが敗因」 ○麻田一平キャプテン 「トヨタらしい戦いをしようと思っていた。三洋さんはトップリーグ全勝したチーム。80分間チャレンジできた。今は悔しさしかないが、いい目標ができた」 ──三洋のディフェンスのどのへんがよかったのか。 ○石井監督 「攻め込まれてからのジャッカルからターンオーバー(前半だけで5個)、それに簡単なミスが少ない。ディフェンスのところで差が出た」 ──「また目標ができた」とは具体的に。 ○麻田キャプテン 「今はまだ具体的なものはないが、とにかく自分たちより強いチームがあり、それに勝つ!という目標」 ──監督としてシーズンを振り返って? ○石井監督 「監督として何をするのかが整理できないままスタートしたが、よくチームがついてきてくれた。うちの選手は高いポテンシャルを持っている、来シーズンはそれを開花させていきたい」 ──ゲーム前にサンヨーのディフェンスに対して対策は立てたか? ○石井監督 「早くポジショニングしてそこで何をしていくのかを指示した」 ──トヨタらしさは十分に出せたと思うが、勝敗を分けたのは? ○麻田キャプテン 「三洋さんのディフェンスは80分間崩れなかった。そこで根負けしないようにしたかった。またうちのトライはインターセプトやキックのこぼれ球などであったのに対し、三洋さんは理詰めのトライだった」 ──三洋が一人減ったとき(後半35分、ホラニの一時退場)流れが変わりかけたが。 ○麻田キャプテン 「あそこでどこを攻めるという具体的な話は出なかったが、とにかくゴール前ラインアウトから継続して、その流れの中でチャンスを見出し、崩していきたかったが及ばなかった」 三洋電機ワイルドナイツの宮本監督(右)と、榎本キャプテン ◎三洋電機ワイルドナイツ ○宮本勝文監督 「今日は強いトヨタさん相手に燃え尽きてしまうくらいの気持ちで戦うつもりだった。トヨタさんの激しいスピード、パワー、それにディフェンスが80分間がんばった。そのなかで競り勝てたことで選手を誇りに思う。 今日のゲームは6個トライをとるチャンスがあった。そのうち4個とれた。逆に7個くらい取られても仕方ないところがあった。これを2個に抑えた、この集中力はすごい。形にこだわらず、どんなことでも自分で判断して動ける」 ○榎本淳平キャプテン 「激しいゲームだった。今日はディフェンスにつきる」 ──後半14分での、オライリー、吉田の投入が成功したが(直後に吉田がトライ)。 ○宮本監督 「予定通りの交替で、はまりました。びっくりしました」 ──最後は一人足りない状況、どんな心境? ○宮本監督 「8点差、ひとつ取られてもしかたがないと思っていた。もう少し辛抱してくれると思ったが、あっさり取られてしまい、精神的にはきつかったと思うが、そこからあわてず、パニックにならずによくディフェンスしてくれた」 ○榎本キャプテン 「ラインアウトミスから長くディフェンスが続いたが、一人ひとりが倍ほど動いて対応した。今シーズンのチームを象徴していた」 ──次戦の抱負は? ○宮本監督 「腹立つこと言いよるね!・・・爆笑(マイクロソフトカップ決勝でのサントリー清宮監督のコメントに対して)、今シーズン、確かにうちの調子がよかったのも事実だが、うまいのも事実。ボクシングのようにクリンチせずちゃんとファイトしよう、それで負けたら認める」 ○榎本キャプテン 「ラグビーをさせてもらえれば、いいゲームができると思う」