サントリー、ラインアウトを制圧し前半で勝負を決める

トップリーグ優勝の勢いに乗るサントリーは、宿敵東芝に序盤のセットプレーから激しいプレッシャーで挑んだ。197cmのサイモン・メイリング、196cmの篠塚を中心に、佐々木、大久保と4人のジャンパーがラインアウトで、東芝の攻撃の芽を次々に摘んでゆく。東芝は前半のラインアウト9回からマイボールの確保はわずかに2回。それに対しサントリーは12回中ミスはたった1回。この空中での圧勝がゲームの流れを決めた。

ライアン・ニコラスのショット(3-0)で先制したサントリーは、16分東芝ボールのラインアウトを奪い、SO管藤の仕掛けからCTB平がカットイン。ブラインドからCTBの裏へ回ったWTB小野澤の動きにDFがドリフトする一瞬の隙を的確についたSO管藤の見事な判断。ラインブレイクした平がライアン・ニコラスへとパスをつなぎトライ(ゴール成功10-0)。
23分にはラインアウトから佐々木がセーフティゾーンに走り、タテのアングルで飛び込んでくるBKの裏にブラインドWTB山下が走りこむ得意のプレーからトライ。さらに28分にはゴール前ラインアウトからモールを作り、そのまま前へ進めないと見るや、押す角度を変えながら縦に長くモールを組み替えプロップ尾崎がゴールに飛び込んだ(前半22-0)。

後半、東芝はSHに伊藤を投入し、なんとか流れを変えようとする。修正されたラインアウトからリズムを取り戻し、激しいブレイクダウンで前進を図る。マクラウド、オトが前でボールをもらいラックの起点となれば、いつもの東芝のラグビーがやっと始まる。SO廣瀬のオーバーラップに外から、また内側へランナーが次々と飛び込みゲインを繰り返す。
後半23分、ペナルティからキックで前進し、そのラインアウトを確実にキャッチしてサントリーFWを圧倒する。ゴール前の停滞からモールをつくり、豊田が待望のトライ(ゴール成功22-7)。
32分にもモールから渡邉がゴールに飛び込み、連覇を信じて駆けつけた東芝ファンの溜飲を下げた(ゴール成功22-14)。

セットプレーに勝るサントリー、ブレイクダウンの激しさを生命線にする東芝の一戦は、両チームがそれぞれの持ち味を発揮し8704人の観衆を沸かせた。
トップリーグ優勝の自信からか、サントリーの落ち着いたゲーム運びは確実な成長を感じさせる。安定したスクラムとラインアウトの圧倒的優位は、今年のサントリーラグビーが築いてきた基盤であり、次週の決勝での大きな原動力になるに違いない。(照沼 康彦)

サントリー 25-14 東芝 サントリー 25-14 東芝 サントリー 25-14 東芝
サントリーサンゴリアス 25-14 東芝ブレイブルーパス(3月8日、準決勝 at秩父宮ラグビー場)

東芝ブレイブルーパスの瀬川監督(右)と、廣瀬キャプテン 東芝ブレイブルーパスの瀬川監督(右)と、廣瀬キャプテン

◎東芝ブレイブルーパス
○瀬川智広監督
「我々は今日、今年の集大成としてトップリーグチャンピオンのサントリーさんに対して、何も考えずチャレンジしようとぶつかりました。試合巧者のサントリーさんだけあって、ゲームの立ち上がりからいろいろとやられてしまいました。こちらも後半は、やってきたスピード、オプションプレーもすべて練習どおり出すことができましたが、さすがにチャンピオンチームだと思いました。今シーズンが終わってしまう悔しさ、反省する部分を、また、来年生かしたいと思います」

──サントリー対策は。
「準備してきたオプション、駆け引きの面でサントリーさんが一枚上手でした。前半の入りが悪く、ターンオーバーのチャンスがないなか、焦ってディフェンスに行こうとして、うまくそこを突かれたと思います。ハーフタイムにはもう少しボールを動かそうと、SHを代えました。ゲームの流れが押せ押せになったところは次につながると思います」

──ラインアウトは。
「FWはよく研究してくれました。もちろん、取られないことを前提に準備してきましたが、相手が合わせにくいと思われるオプションを使って取られたことには悔いが残ります」
──うまくいったこと、そうでなかったことは?
「後半、ボールを持って立てれば行けると分かったところです。お互い、相手を立たせない対策を考えてきて、うまくやられたところがありました」

──マクラウド選手も最後と聞くが。
「今年、私自身も含めて、初めての監督を4月に引き継いだときと、修正部分がまったく違います。今まで、勝って反省できていたのが、これから負けて反省になります。王者だったのがこれからはチャレンジャーとして戦いますが、もう一度晴れの舞台に立ちたいと思います。これから、土台からつくり直したいと思います」

○廣瀬俊朗キャプテン
「まず、1年間東芝ブレイブルーパスを応援してくださったファンの皆様に感謝申し上げます。今シーズンは過去数シーズンと違い、負けも多く、ファンの皆様も辛い思い、悔しい点も沢山あるなかで後押ししてくださってありがたかったです。期待に応えられず、残念です。今日の前半はアップも良く、練習も良かったのにもかかわらず、最初の40分がどうしてああなったのか、僕自身、分かりません。最後、2トライ獲って40分ゲームを支配したのは来年への収穫になりました」

──東芝の反省点は?
「相手が強いとかでなく、僕たちのミスが多かったことです。特に前半、レフリーのジャッジの傾向が分からないまま、反則を繰り返したこと。確かに豊田の反則は仕方なかったが、後は厳しかったと思います」

──何がうまくいかなかったのか。
「ゴール前に、結構、行ったじゃないですか。そこで、獲りきる力がなかったことです。前半はほとんど攻められず、後半、初めて攻めて、相手のディフェンスのどこを崩すか、考えるのに時間がかかった点です」

──後半、ラインブレイクもできた。
「ハーフタイムにしっかり持って走っていろんなアングルから入ろうと話し合いました。前半は僕が仕掛けるより、もうちょっと外でリズムをつくろうとしました。内を見たら、インサイドに人がいないこともありました。流れの中でいてくれたら、というところだったが、前のペナルティのブレイクダウンで、FWを使っていたのかなと思います」

サントリー 25-14 東芝 サントリー 25-14 東芝 サントリー 25-14 東芝
 

サントリーサンゴリアスの清宮監督(右)と、山下キャプテン サントリーサンゴリアスの清宮監督(右)と、山下キャプテン

◎サントリーサンゴリアス
○清宮克幸監督
「去年、サントリーがトップリーグで超えられなかった東芝さんを超えることができました。充実感がみなぎっています。リーグ戦で勝ってはいるものの、シーズン終盤で調子を上げるのが過去の東芝さんでしたから、今日、負けたら終わりのファイナルゲームに勝つことができて非常に嬉しいです。内容は、前半からゲームプランがこれほどはまったのは今シーズン初めてでした。ハーフ団のゲームコントロール、BKのムーブとも申し分ない出来でした。後半は、決勝に向けて良い課題を与えてくれたと思います。もろ手を挙げて決勝に行くより良かったと思います。少しけが人が出て心配していますが、こういうときこそチーム全体の力が試されるときだと思います」

──メイリングを早めに下げたのは?
「ちょっと課題を与えようかと思って(笑)。このまま、パーフェクトに終わるより、時間を考えながらのプレーを見たかった。ハーフタイムにも、簡単に獲らせてはいけない、獲られるにしても、粘って、粘って、粘ってと指示しましたが、それがあのスコアに表れたと思います。点数が開くと、必ず相手に偏る時間がありますから。予測どおり、相手に傾くレフリングの時間を乗り切れました」
──ゲームプランどおりか。
「タッチに出すのも難しいんですよね。長く距離を稼ぐか、短く地域を取るか、敵が前にいれば後ろへ蹴るし、後ろにいれば前へ蹴るし、ハーフ団は良い状況判断をしてくれました。ラインアウトは、東芝さんは良く工夫して来ましたが、こちらが75%くらい支配したのではないでしょうか。結局、前半は、今まで、東芝さんがやったことのない並び方やムーブで入ってきたのですが、やっぱり難しいんですよね。サントリー相手に、これまでやってきたことを出せなかったということです。サントリーはすべてオールメンで、リフティングの精度とタイミングで制覇しましたね」
──マイクロソフトカップを制覇して自信が感じられたが。
「そう思います。トップリーグ優勝がチームに力を与えてくれました」
──三洋戦に向けて?
「2回目なので、しっかりと前回の戦いを見直して臨みます。優勝したゲームでしたので、あまり真剣に見ていないので(笑)。これからです」
──ラインアウト、セットプレーも居残りして練習していた。
「いつもどおりやっているだけです。僕は毎試合、選手に違う動きを求めています。それが、リーグ戦の緒戦からの積み重ねでできるようになりました。選手は一回見た動きはすぐに反応できるようになったと思います」
──次もファイナルラグビーなのか?
「もちろんですよ。今日もファイナルラグビーでしたし」

○山下大悟キャプテン
「ここ数年、トップでトップリーグを引っ張ってきた東芝さんに2回も勝てて本当に嬉しいです。1週間、練習してきて、ホッとしました」

──マイクロソフトカップを制覇して自信が感じられたが。
「そうですね。そのせいか、前半のハーフ団の動きは落ち着いていましたね」
──三洋戦に向けて?
「三洋さんともう一回やるということで、良い練習を1日1日重ねて臨むだけです」