大学選手権ベスト2がトップリーグベスト4に挑戦する日本選手権は大学チーム、中でも今年好調な早稲田ファンの期待は膨らむ。ここまでその期待に応えて順調に戦いを進めてきた今年のチームには期待以上のものが感じられる。対する実力の東芝ブレイブルーパスはマイクロソフトカップの準決勝で三洋電機に終了間際逆転負けを喫し、立て直しができているか気になるところである。強い風が吹くも良く晴れた秩父宮ラグビー場はグラウンドコンディションもよく、13,000人余りの観客を集め14時、早稲田のキックオフで始まった。

開始から積極的に攻めていく早稲田は前半4分ペナルティーからタッチを狙い、東芝ゴール前でラインアウトを取りモールを押し込んでNO8豊田がトライ。ゴールはならず0-5。早稲田の早いつぶしにあいながらも徐々にペースをつかんできた東芝は13分早稲田ゴール前のモールを押し込んでHO塚越がトライ。ゴール決まり7-5。東芝はその後接点での強さと早い球出し、BKへの展開から18分にはWTB吉田、21分にはSO廣瀬のトライ。それぞれゴールも決まり21-5とリードを確実に広げていく。
差は広がるかと思われたが早稲田も踏ん張り、東芝陣内に攻め込むが決め手を欠き、27分風下ながらSO山中の狙ったドロップゴールは惜しくも右にそれる。早稲田は前半終了間際東芝ゴール前まで攻め込みながら得点できなかった。東芝21-5で前半を終える。早稲田は後半風上を生かせるだろうか。

後半は東芝のキックオフで開始される。東芝のテンポの良い攻撃が続き2分早稲田ゴール前のラインアウトからモールを押し込みHO塚越のトライ。ゴールならず26-5。早稲田も負けずに攻撃。6分ペナルティーから得たラインアウトからモールを押し込みHO臼井トライ。ゴールならず26-10。早稲田は攻守にわたり随所に健闘を見せるがチーム攻撃の多彩さが冴え東芝は8分にNO8豊田が、20分にLOニコラスが、27分にWTB冨岡がトライ。すべてゴールが決まり47-10と大きくリードを広げた。学生のチャレンジもここまでかと思われたが、早稲田はここから粘りを見せ、35分FB五郎丸の好キックを22番田中が拾いトライ。ゴールも決まり47-17。ロスタイムに入ってからも諦めず攻撃、43分東芝ゴール前のラックからNO8豊田が持ち込んでトライ。ゴールも決まり47-24。ここでノーサイドの笛が鳴りゲームセット。学生チャンピオンのチャレンジが終わった。トップリーグ上位チームと学生との試合はともすると一方的になりがちだが、今日の学生は最後まで良く踏ん張り戦いを仕掛けたので、場内は両チームの健闘を称え拍手が鳴り止まなかった。(坂田光司)

東芝 47-24 早稲田 東芝 47-24 早稲田 東芝 47-24 早稲田
東芝ブレイブルーパス 47-24 早稲田大学(3月1日、2回戦 at秩父宮ラグビー場)

早稲田大学の中竹監督(右)と、権丈キャプテン 早稲田大学の中竹監督(右)と、権丈キャプテン

◎早稲田大学
○中竹竜二監督
「今日の試合は、例年になく長いシーズン、学生は日本選手権をターゲットにしてきたなかで、日本一前に出るディフェンス、日本一速いイーブンボールへの働きかけ、そしてもう一つ、エリアマネジメントのできるキッカーが揃って、精度が高いことを前面に出そうと練習してきました。1週間前に東芝さんと試合することになり、勝って奇跡と言われない戦いをしようと準備してきました。僅差、クロスゲームに持ち込むのがプランでしたが、簡単に東芝さんのアタックにトライを獲られ、なかなか僅差にならず突き放されました。モールからも学生相手と同じように獲れましたが、エリアを取れずにFWのブレイクダウンで崩され、完全に余った状態をつくられました。タックルした後のボールへの絡み、ブレイクダウンの強さがトップリーグの壁だと感じ、それを前提にクロスゲームをつくろうと思っていましたが、今日は獲られ過ぎでした。20~30点は絶対に獲れると確信していました」

○権丈太郎キャプテン
「本当に、今年1年、自分たちがやってきたことを出そうと臨みました。普通に臨むのではなく、頭から狂って突き刺さろうと言ってきました。僕自身、一昨年、リザーブで東芝さんと対戦したのですが、今年は通用するプレーもあって、絶対に勝てる試合でした。早稲田は勝つことがすべてです。出し切った思いもありますが、悔しい気持ちが強いです。後輩たちもトップリーグに通用することを感じてくれたと思いますので、強いチームをつくってくれると思います」

──やってきたこととはモール?
「モールはトライが獲れましたし、ディフェンスはしっかり前へ出ることができましたが、相手のスタンドオフの廣瀬さんが浅く広く立っているところへのプレッシャーが中途半端でした。こちらのテンポでボールをつないだときはしっかりゲインできましたし、余っているチャンスをつくれました。停滞しているときのオプションが少なかったので、仕方なくキックを使って相手に取られて攻められたので、攻撃のオプションを増やすことが課題です。また、後半、点差をつけられて、無理して攻めて取られることがありました。もう一度、自陣からの攻撃のオプションを増やすことが課題だと思いました」
──大学最後の試合となったが。
「本気で、この試合、勝つつもりで臨んだので、今は悔しい気持ちで一杯です。自分たちの、今年貫いてきたことはできたので満足もしています」
──最後に何を後輩たちに?
「どんなに良いゲームと言われようと、早稲田は勝たないと否定される。来年、この壁を突破してほしいと言いました」
──東芝のブレイクダウンは?
「やっているほうとしては、そこまであまりプレッシャーは感じませんでしたし、負けていなかったと思います。ただ、こちらが孤立したときはほとんどターンオーバーされたので、社会人とやるときは2人目の寄りが大事だと分かりました」

東芝 47-24 早稲田 東芝 47-24 早稲田
 

東芝ブレイブルーパスの瀬川監督(右)と、廣瀬キャプテン 東芝ブレイブルーパスの瀬川監督(右)と、廣瀬キャプテン

◎東芝ブレイブルーパス
○瀬川智広監督
「まず、学生チャンピオンの早稲田さんにしっかり勝利することができ、本当に嬉しく思っています。あと2試合残っていますので、しっかり準備をして臨みたいと思います」

──失点が多いが。
「練習でも、選手たちに言っていますが、今シーズン失点が多いのは、相手もあるので、東芝どうこうではないし、システムも大きく変更したわけではない。ただ、昨年はブレイクされても2人目、3人目がどうにかカバーできた。今はブレイクされると脅威を感じて修正できないと感じています。また、後半に失点が多いのは、交代選手と前半からの選手の運動量に差があるのではと感じています」
──サントリー戦に向けて?
「開幕戦は東芝もサントリーさんもベストメンバーではなかったと思います。まったく手探り状態でした。シーズンの最後にサントリーさんとやれるのは楽しみですし、自分たちの強みを出せるよう修正して臨みます」

○廣瀬俊朗キャプテン
「早稲田さんという学生チャンピオンらしい、素晴らしいチームと対戦できて楽しかったです。非常に実りのある良い試合ができて感謝しています。三洋戦の最後の最後で逆転され、僕たちの強みはブレイクダウン、スタンディングラグビーだと分かって、そこのところをしっかりやろうとモチベーションを上げて臨みました。ブレイクダウン、モールは困ったときに帰れる原点だと思います」

──立ち上がり、獲られたが。
「まあ、今日の入りとしては良くなかったですし、反省点です。学生相手に最初に叩かなくてはいけないのに。サントリーさんなどが相手だと、7点は大きなビハインドになります。しっかり反省したいと思います。まあ、眼が覚めたとも思います(笑)。でも、まあ…反省ですね(笑)。あせりはまったくありませんでした。試合の入りをキャプテンとしてコントロールできなかったのは大きな反省点です」
──ちょっと獲られ方が悪かったのでは?
「モールに関しては、正直、僕は分かりません。監督、コーチが来週、厳しくやるんじゃないかと思いますが(笑)。終了間際に獲られるのは、メンタル的なものが大きいと感じています。他の70何分を止められて、最後に獲られるのは。別に技術も体力も負けていないし、今年、ずっと相手チームどうこうでなく、東芝の中のちょっとしたミスが課題です」
──フィジカルの差は?
「大きな違いは感じませんでした。試合中も試合後も印象は変わりませんが、もうちょっとプレッシャーは楽かなと思っていました」
──サントリー戦に向けて?
「サントリーさんのことはまったく考えていませんでした。まずは早稲田と。これからしっかり考えます。特にFWのセットプレー、しっかり修正して、しっかり組み合っていけば面白いゲームになると思います」