秩父宮ラクビー場での日本選手権大会2回戦は、トップリーグ3位「トヨタ自動車ヴェルブリッツ」に、次年度トップリーグに昇格を決め日本選手権1回戦を大学選手権2位の慶應義塾大学に勝利(45-14)し(日本選手権大会)過去3回の優勝経験の古豪「近鉄ライナーズ」が対戦した。

試合はトヨタのキックオフで前半が始まった。
トヨタは早い球出しからワイドに展開し連続攻撃で近鉄陣に攻め込みゴール前5mよりのラインアウトを押し込みNO8菊谷が飛び込むもトライならず、その後の7分、近鉄陣30m付近ラインアウトより右オープンに展開しCTB岩本よりWTB内藤に繋ぎ先制トライ(ゴール成功/0-7)。その後ペナルティも決まり(0-10)と早い時間より突き放しにかかる。近鉄は前半15分にトヨタ陣10m付近ラックよりチャンスをつかんだ近鉄は前へ前へと攻め込みCTBマイレーが相手ディフェンスラインの穴を突いてトライ(ゴール成功/7-10)、続く19分にはCTBアンドリューが逆転トライ(12-10)。
対するトヨタは前半22分に近鉄陣22m付近スクラムより左に展開し、CTB岩本選手より絶妙なパスをFB久住に繋ぎ、相手選手を振り切りトライ(ゴール成功/12-17)と再逆転。その後も両チーム得点を重ね"19-24"とトヨタリードで前半を折り返した。

後半は開始早々の2分、近鉄は前へ前へと連続攻撃を仕掛けトヨタ陣ゴール10m付近でのトヨタの反則よりPGをSO重光が決めた(22-24)。続く4分にはトヨタ陣10m付近スクラムより右オープンに展開し、SO重光からの絶妙なパスをCTBマイレーに繋ぎ、相手選手を振り切り逆転トライ(ゴール成功/29-24)。対するトヨタは後半10分に近鉄のゴール前でのキック処理ミスよりFB久住が同点トライ(29-29)。18分には近鉄陣22m付近ラインアウトよりモールより出たボールをSO黒宮が再びトライ(29-34)し逆転した。その後トヨタは近鉄に再逆転されるも3連続トライを奪い"36-53"と近鉄を突き放した。最後まで諦めない近鉄はロスタイムの後半46分トヨタ陣ゴール前20m付近での相手チームのペナルティをスクラム選択し右オープンに展開しラックから出たボールをSO重光が相手ディフェンスをかわし来シーズンに繋がるトライを奪った。10,216人の熱い両チームのファンを魅了した好ゲームはトヨタ自動車ヴェルブリッツが"43-53"で勝利した。

古豪復活の近鉄ライナーズは来シーズントップリーグに戦いを移し、トヨタ自動車ヴェルブリッツは次週(3月4日)花園ラグビー場にて三洋電機ワイルドナイツと日本選手権 準決勝(14:00キックオフ)を戦う。(佐藤克則)

近鉄 43-53 トヨタ 近鉄 43-53 トヨタ 近鉄 43-53 トヨタ
近鉄ライナーズ 43-53 トヨタ自動車ヴェルブリッツ(3月1日、2回戦 at秩父宮ラグビー場)

近鉄ライナーズの中谷監督(右)と、大隈キャプテン 近鉄ライナーズの中谷監督(右)と、大隈キャプテン

◎近鉄ライナーズ
○中谷誠監督
「本日はどうもありがとうございます。トップ4のチームに勝ちたいと臨んだ試合でしたが、選手はよくやってくれました。80分、最後のよいトライまで出て、どこまでトップリーグでやっていけるか心配していましたが、意義のある試合になったと思います。新しいシーズンの良い引き出しが増えました。選手たちは最後までよくやってくれて誇りに思います」

──バツベイ選手が走れていなかったが。
「現時点では確かにこういうプレーですが、トップリーグではスタイルを変えていくのは理解しています。彼がトップリーグで見せるプレーに期待しています」

○大隈隆明キャプテン
「トップリーグのトヨタさんに対して80分チャレンジしようと臨みましたが、80分、気持ちが切れずにできたと思います。トヨタさんは要所、要所でブレークしてきて強いと思います。こちらも最後のトライなど良い形で終えることができました。来シーズンは今日の試合を糧に、日本一を目指したいと思います。ありがとうございました。今日のような気持ちで来年もプレーしたいと思います」

──トップリーグはどこが違うか。
「セットプレー、FWのディフェンスラインにしても、後半もレベルが変わらないですね。僕らがバテて、動けないときも勝負どころの集中力がトヨタさんは上でした。僕らはラインアウトもミスしてちょっと苦しい展開になり、モールも食い込まれてBKに入ってもらう苦しい展開でした」

近鉄 43-53 トヨタ 近鉄 43-53 トヨタ 近鉄 43-53 トヨタ
 

トヨタ自動車ヴェルブリッツの石井監督(右)と、麻田キャプテン トヨタ自動車ヴェルブリッツの石井監督(右)と、麻田キャプテン

◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○石井龍司監督
「本日の試合は、近鉄さんのチャレンジ精神があるから気をつけようと送り出したのですが、受けに回ってしまい、タックルミスや単純なミスが出て、しまらない試合となってしまいました。ただ、こういう形でも勝てたということは大きかったと思います。近鉄さんに教えていただいた教訓を生かして次の試合に臨みたいと思います」

──どこが良くなかったのか?
「ラグビーは一生懸命、ひたむきにやることが大事です。一つひとつのプレーのひたむきさを近鉄さんに教えていただきました。見習いたいと思います」

○麻田一平キャプテン
「反省が多い試合でした。プレーの精度よりメンタル的に修正が必要です。次の三洋戦は僕らより格上ですから、チャレンジしないと勝てないと思います。1週間、しっかりチャレンジして臨みたいと思います」

──ラインブレイクされたが?
「しっかりしたディフェンスには、一歩の遅れが響きます。ラインブレイクされたのは動き出しで、遅れたからです。監督が言うとおり、一生懸命やればいいのに、一歩見てしまうから、そこでブレイクされたと思います」
──あせりはなかったか。
「始まって、すぐにトライを獲り合って、こういう試合では基本プレーをしっかりせなあかん、とチームには言ったのですが、ああいうゲームになってしまいました。あせりは、後半、風上だったのでなかったが、精度が悪いイラつきは感じました」
──簡単にタックルを外されたが。
「はい。タックルも高いし、ポジショニングも遅い。ひたむきでないということです。すべての面で修正しないと次はないと思います」