昨年、再び日本代表の指揮官に就任した世界的名将エディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)。2年目を迎える今年は「超速 AS ONE」というチームコンセプトを新たに掲げた。37人中16人が0キャップという若き選手たちを中心に、ハードトレーニングを重ねて強豪を倒し、世界トップ10入りを目指す!


 

◇「今年の方が強い」(ジョーンズHC)と37人を選出


(6月12日に行われた日本代表宮崎合宿メンバー発表記者でのエディー・ジョーンズHC)


 

6月12日(木)、ついに2025年の〝エディー・ジャパン〟こと日本代表37名(FW20人、BK17人)が発表された。

再び日本代表を率いて2年目となる世界的名将エディー・ジョーンズHCは、かねてから「2023年のワールドカップは、日本代表はかなり年齢層の高いスコッドだったので、日本代表を作り直さなければならない。今年もベストな選手を選ぶ」と話していた。その言葉通り、2025年、最初の日本代表37人中、2023年ワールドカップ組が11人いる一方で、0キャップの選手が16人(うち13名が初の日本代表選出)というフレッシュな顔ぶれとなった。

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(メンバー選考の意図を語るジョーンズHC。隣は日本代表スタッフに復帰した佐藤秀典通訳)


 

指揮官は「昨年よりも今年のメンバーの方が強いと感じています。残念ながら(コンディション不良などにより)13人の実力のある選手たちを選ぶことができませんでしたが、他の選手たちにチャンスが回ってきた。4月までのU23日本代表と(5月の)JAPAN XVの活動によって、日本代表でプレーするポテンシャルを持っている選手を発見でき、昨年よりも今年は選手層の厚さが増した。(2027年)ワールドカップに向けて毎年、ポジションごとに層の厚さを増やし、各ポジションに3、4人のレベルの高い選手を揃えることを目指しています」と胸を張った。


 

◇明治大3年の竹之下が初選出、リーチらも復帰


(大学生から唯一選出された竹之下仁吾選手とセブンズでパリ五輪にも出場した初選出の石田吉平選手)


 

大学生からの選出は、U23日本代表やJAPAN XVで躍動した明治大学3年の竹之下仁吾だけとなった。ただ、それ以外の初選出は静岡ブルーレヴズの司令塔でオーストラリア出身のサム・グリーンを筆頭に、指揮官が何度も視察に足を運んでいたリーグワンのディビジョン1で活躍した選手の名が並んだ。


(初選出となる静岡ブルーレヴズのサム・グリーン選手)


 

他には紙森陽太(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、小林賢太、木原三四郎(ともに東京サントリーサンゴリアス)、江良颯(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)、ワイサケ・ララトゥブア(コベルコ神戸スティーラーズ)、新人賞の次点だったヴェティ・トゥポウ(静岡ブルーレヴズ)、奥井章仁(トヨタヴェルブリッツ)、チャーリー・ローレンス(三菱重工相模原ダイナボアーズ)、セブンズでパリ五輪に出場した石田吉平(横浜キヤノンイーグルス)&植田和磨(コベルコ神戸スティーラーズ)、ハラトア・ヴァイレア(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)と、初選出の多くがリーグワンで活躍した若手となった。


(PRには昨年日本代表の主力に成長した竹内選手の他、小林選手などリーグワンで活躍した選手も多く選出された)

 


その一方で、ワールドカップに4度出場し、36歳ながらリーグワンの「ベストタックラー」を受賞したリーチ マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)が昨年7月以来、そしてリーグワン20試合すべてに80分間出場したジャック・コーネルセン(埼玉パナソニック ワイルドナイツ)が2023年ワールドカップ以来、さらに突破力に長けた中野将伍(東京サントリーサンゴリアス)が2年前の8月以来の代表復帰を果たしたことは朗報で、チームの大きな力となろう。


(リーチ選手やマキシ選手、ジャック選手など経験豊富な選手たちの存在はチームの大きな力となる)


 

◇2025年、新たに掲げたコンセプトは「超速AS ONE」


(会見では2025年のチームコンセプト『超速 AS ONE』がお披露目となった)


 

日本代表発表に伴う会見の前に、ジョーンズHCは2025年のチームコンセプトを発表した。今年の日本代表の戦い方や活動指針となる言葉は「超速 AS ONE」となった。昨年掲げた「超速ラグビー」に「AS ONE(一致団結して)」を加えた形となった。

「超速AS ONE」を掲げた理由を聞くとジョーンズHCは「もう一度、日本ラグビーをピークにもっていって成功するために、高校、大学、リーグワン、日本ラグビー協会も含めて全員が手と手を取って協力しないといけない。ファンが興奮して見られるようなラグビーチームを作りたい」と話した。


 (2025年のチームコンセプトの説明をするエディー・ジョーンズHC)


 

ラグビー面、つまり今年、〝超速ラグビー〟をどうバージョンアップしていくのか。「アタックでは、相手より畳みかけていくことが大事で、チャンスで絶対に仕留めることが大事。ボールを持っていないときのワークレイトは、トップ10のスタッツと比較したが、(日本代表は)強豪国と比べて33%減なので、そこを上げていく。理解度も上げて、なぜワークオブザボールが必要なのか落とし込み、キャパシティーを上げていけば良いラグビーができる」(ジョーンズHC)


(過去最強の日本代表を作るのが義務だと思っています、と力強く語るジョーンズHC)


 

2年目の今年、なぜ「AS ONE」を新たに加えたのか。ジョーンズHCは「まずは日本代表をファーストに持ってくる、ということです。特に選手はやることはすべてチームのために、チームをどう強くするのか、どう守るのか、勝ち癖を付けていくのか、ジャパンファーストに考えることから、このコンセプトが出てきました。ONEと言っていますが、全員が共同して、すべてのリソースを最大限に活かしていかないといけない。リーグワンの(ディビジョン1の)『ベスト15』は日本人選手が2人でした。ですから全員で一つになって育成システムで、選手を育てていかないといけない。そして、その後に過去最強の日本代表を作るのが義務だと思っています」と言葉に力を込めた。


 

◇目の前の大きなターゲットは「打倒・ウェールズ」

 

2年目の新生エディー・ジャパンの目前に迫った大きなターゲットは「打倒・ウェールズ」である。

現在、世界ランキング13位の日本代表は1つ上の12位のウェールズ代表と、「リポビタンDチャレンジカップ2025」で7月5月(土)に福岡・ミクニワールドスタジアム北九州で対戦し、12日(土)にも兵庫・ノエビアスタジアム神戸で激突する。

 

国内で日本代表が「レッドドラゴン」ことウェールズ代表と対戦するのは、以前、ジョーンズHCが日本代表を率いていた2013年以来のことだ(テストマッチの通算成績1勝13敗)。2013年6月、日本代表は史上初めて23-8でウェールズ代表から白星を挙げて、当時の日本代表にとっては大きなブレイクスルーとなり、それが2015年ワールドカップにもつながった。今回も当然、その再現を狙っている。


(2013年6月15日、日本代表がウェールズ代表に劇的な勝利。勝利直後、前主将の菊谷崇選手が現主将の廣瀬俊朗選手を持ち上げて、ファンとともに歓喜)


 

「日本でウェールズ代表と対戦するのは私も運命的なものを感じています。お互いに若いチームです。私たちはただフィールドに立って、最高の状態で臨むだけです。いずれにせよ、ウェールズ代表とは素晴らしい試合になり、私たちの現状を試す良い機会になるでしょう」(ジョーンズHC)

 

またウェールズ代表との2連戦の前に、6月28日(土)、東京・秩父宮ラグビー場で「JAPAN XV」としてマオリ・オールブラックスと対戦する。あくまでも「JAPAN XV」の試合はキャップ対象ではなく、テストマッチではないため、ウェールズ代表戦に向けての準備の一つだという。ジョーンズHCは「100%の準備をしますが、ウェールズと対戦する選手たちの中で、もっと試合に出る時間が必要だと感じた選手は試合に出しますし、トレーニングの時間が必要だと感じた場合はトレーニングに集中させます」と明言。いずれにせよ初選出の選手やリーグワンで試合出場時間があまりなかった選手で構成される予定だ。


 

◇2025年の目標は世界トップ10入り!

 

今年の日本代表は、7月のウェールズ代表との連戦に続いて、8月末から開催されるパシフィック・ネーションズカップ(カナダ代表戦など最大4試合)、10月25日の「リポビタンDチャレンジカップ2025」オーストラリア代表戦、11月には欧州で「リポビタンDツアー」としてテストマッチ3連戦(アイルランド代表、ウェールズ代表、ジョージア代表)と最大10試合のテストマッチを予定しているが、白星を重ねて世界ランキングを上げなければいけない理由がある。

 

それは今年の12月に2027年にオーストラリアで開催されるワールドカップのプール組分け抽選会が行われる予定だからだ。 

2027年大会からワールドカップは20チームから24チームに参加チームが増えて、6プール×4チーム(2023年大会までは4プール×5チーム)で開催されることになった。つまり11月終了時点で世界ランキング13位以下だと、予選プールでランキング上位の2チーム(1~6位の1チーム、7位~12位の1チーム)と同プールになってしまう。そのため、何としても11月終了時点までに12位以内に入っておきたい。


(宮崎で本格的な活動が始まった日本代表。まずはウェールズ撃破へ向け、ジョーンズHCのもと、ハードトレーニングを続けていく)


 

目標は「2027年ワールドカップでトップ4」を掲げている日本代表。2025年の目標について聞かれるとジョーンズHCは「私たちは、今年、若いチームとして、大きな飛躍を遂げたいと思っています。今年の大きな目標のひとつは、日本代表が2019年ワールドカップ以来、世界ランキングのトップ 10に勝つことができていないので、トップ10のチームに勝ってトップ10に入りたい。それが実現すれば、選手たちは自信をつけて、より強い信念を抱いてチームはより早く成長します。そのためには、新たな強みを創造し、日本の強みを活かす必要があります」と腕を撫した。

 

2年目のエディー・ジャパンは6月16日(月)から始まっている宮崎合宿で、代名詞となったハードワークをしつつ、「超速ラグビー」にさらなる磨きをかけていく。そしてマオリ・オールブラックス戦を経て、ホームの大声援を背にウェールズ代表に連勝し、トップ10入りへ大きな弾みをつけたい。

(文・斉藤健仁)



 

◇2025年 男子日本代表、JAPAN XV 試合日程 

6月28日(土)「リポビタンDチャレンジカップ2025」

JAPAN XV vs. マオリ・オールブラックス@東京・秩父宮ラグビー場(東京)※非テストマッチ 

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7月5日(土)「リポビタンDチャレンジカップ2025」

日本代表 vs.ウェールズ代表@福岡・ミクニワールドスタジアム北九州

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7月12日(土)「リポビタンDチャレンジカップ2025」

日本代表 vs.ウェールズ代表@兵庫・ノエビアスタジアム神戸(兵庫)

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8月30日(土)「パシフィック・ネーションズカップ」 プールB

日本代表 vs.カナダ代表@宮城・ユアテックスタジアム仙台

※プールBは日本代表、カナダ代表、アメリカ代表

 

10月25日(土)「リポビタンDチャレンジカップ2025」

日本代表 vs.オーストラリア代表@東京・国立競技場

 

11月8日(土)「リポビタンDツアー2025」

日本代表 vs. アイルランド代表@アビバ・スタジアム(アイルランド)

 

11月15日(土)「リポビタンDツアー2025」

日本代表 vs. ウェールズ代表@プリンシパリティ・スタジアム(ウェールズ)

 

11月22日(土)「リポビタンDツアー2025」

日本代表 vs. ジョージア代表@未定