年が改まって1月2日、ラグビー大学選手権の準決勝が国立競技場で行われる。ベスト4がついに決定し、ファンからは、「大学ラグビーのなかで、いちばん面白いのが準決勝」という声も聞かれるが、今回は第1試合が早稲田大学 対 帝京大学、第2試合が明治大学 対 京都産業大学の顔合わせとなった。


 

1試合 早稲田大学  帝京大学


 12時25分キックオフ予定の早稲田大学対帝京大学は昨年度の決勝と同じカードとなる。そして、11月2日に行われた対抗戦では、帝京大が25対20で勝利し、その時点まで全勝だった早大に土をつけた。さて、今回の再戦ではどんなストーリーが待っているだろうか。

 

 まず、早稲田。早大は早明戦でも敗れ、対抗戦3位となって、準々決勝では関西大学リーグ1位の天理大学と対戦することになった。大田尾竜彦監督は、「今年最大のヤマ場と位置づけ、準備できることはすべてやってきました」と話したが、拮抗した素晴らしい試合となった。この試合で両校の「違い」を生んだのは、早大FBの矢崎由高だった。12対14とリードされて迎えた前半30分、自陣22m付近からカウンターアタックを仕掛けると、相手防御網を切り裂き、個人技で相手22m陣へと侵入。最後も相手3人の視線を引きつけてからSHの糸瀬真周へラストパス。逆転のトライを生み、これ以降、早稲田はリードを保って逃げきった。さすがは日本代表のFB、格の違いを見せつけたが、対抗戦の帝京大戦の時はリポビタンDツアー(日本代表欧州遠征)に参加していたため、試合に出場していない。準決勝での再戦で、矢崎がどんな働きをするのか、目が離せない。


(日本代表のリポビタンDツアーに帯同していた矢崎。準決勝での活躍にも期待が高まる)


 

 一方、大学選手権5連覇を目指す帝京大は、対抗戦で筑波大学、そして明治大学に敗れて4位。大学選手権に入り、3回戦の東洋大戦も思わぬ苦戦。最後は突き放したものの、不安は拭えなかった。そして準々決勝の相手は対抗戦で敗れた筑波大。相馬朋和監督は「弱気になるのか、勇気を持って臨めるか」と選手たちに問いかけ、選手たちは監督の思いに応えた。試合開始早々にスクラムを押される場面もあったが、そのあとは優勢に試合を進め、堅守を披露して36対0の完封勝ち。特に今季、躍動しているのは1年生のアントニオ・フィシプナ。対抗戦では6番で起用されることが多かったが、筑波大戦では5番で起用され、先制のトライを挙げた。大柄ながらもしなやかな走り、気持ちのこもったプレーぶりは、ゲームチェンジャーとなり得る力を持つ。準決勝でも鍵を握る選手のひとりだ。


(スクラムを安定させ、主導権を握りたい帝京大。大学選手権5連覇を目指す!)



 準決勝のポイントとなるのは、どこだろうか。帝京サイドから見れば、スクラムの安定が欲しい。筑波大戦でも不安をのぞかせたが、早大との駆け引きで主導権を握れるかどうか。プロップ出身の相馬監督としても沽券にかかわるところだ。早大の大田尾監督は、天理大戦勝利の後の記者会見で、「相手22mに入ってからのアタックの遂行力」をポイントに挙げた。

「試合を重ねていくにつれ、早稲田のアタックが研究されていることを感じています。帝京大戦では、しっかりとエリアを進めながら、22mに入ってから、スコアに結びつける確率を50パーセントから60パーセントにまで高めていきたいと思います」

 昨年度の決勝と同様のカードは、手に汗を握る接戦となりそうだ。



2試合 明治大学  京都産業大学

 

 そして14時45分キックオフの第2試合は対抗戦1位の明治大学と、関西学生2位の京都産業大学の組み合わせとなった。

 

 大学選手権に入ってから勢いに乗っているのが京産大だ。3回戦の慶應義塾大学戦では後半38分に逆転を許したが、その後のリスタートでボールを獲得。辛抱強く攻めて最後は一柳尚斗が逆転のトライ。ラストプレーで準々決勝進出を決めた。そして準々決勝の東海大戦も最後の最後まで試合はもつれた。京産大は、前半こそ7対21とリードを許したが、後半に入ってからエリアの獲得で優位に立った。21分に19対24にまで迫ると、残り時間がわずかになってきて、京産大の主将、伊藤森心が値千金のスティール。このプレーを起点に敵陣深くに入ると、FWの局地戦に挑む。最後の最後はバックスに展開して、SO奈須貴大がポール横に飛び込んで同点に。SHの髙木城治がノーサイドのホーンを聞いてから逆転のコンバージョンを決め、26対24と逆転し、5年連続の準決勝進出を決めた。試合終了後の記者会見で京産大の廣瀬佳司監督は、「これまでベスト4以上の結果を残したことがないので、突破していきましょうか(笑)」と、伊藤主将に同意を求めたのが、なんとも微笑ましかった。


(5年連続で準決勝へ駒を進めた京産大。悲願の決勝進出、そして大会制覇へ向けて気持ちを高めている)

 


 京産大を迎えるのが対抗戦王者の明大だ。早明戦では最後の最後、トライライン・ディフェンスで粘って優勝。大学選手権準々決勝では関西学生リーグ3位の関西学院大学に対し、後半21分に22対19と3点差までに詰め寄られた。しかし、ラスト20分に地力を発揮、ハイボールの争奪戦で優位に立つと、最後は46対19と点差をつけて準決勝進出を決めた。

 両校の激突のポイントはどうなるだろうか。明大は対抗戦の終盤から、SH柴田竜成、SOの伊藤龍之介、二人のキックを起点にして試合の主導権を握ることが増えた。ハイボールの競り合いに強いWTB陣もいて、戦術の意思統一が感じられる。準決勝でも京産大のハイボール処理を試していくはずだ。


(前回の大学選手権では準決勝で敗れている明大。伊藤龍之介のランとキックにも注目!)



 一方の京産大は、慶大、東海大と関東勢を倒し、接戦に持ち込めれば勝てるという自信に満ちている。伊藤主将は、「ずっとFWにこだわってやってきましたが、関東の二校と戦ってフィジカルで勝っていることで自信がついてきています。1月2日の準決勝はタフな試合になると思いますが、国立競技場の雰囲気に飲まれないよう、京産大の力を出していきたいです」と話した。

 明大と京産大、ともにフィジカルに自信を持つチームだけに、FWの激突が楽しみだ。

 

 今回の準決勝は早稲田大学 対 帝京大学、明治大学 対 京都産業大学と、学生ラグビーを代表する4校の激突となる。それはスタイルと、情熱の戦いだ。

 新春の1月2日は、晴天の予報も出ている。接戦が予想されるこの2試合、国立競技場に足を運び、歴史の「目撃者」になろうではないか。

 (文:生島淳)







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