世界最高峰のセブンズ(7人制)大会、ワールドシリーズ「HSBC SVNS 2026」は、昨年11月末の開幕からレギュラーシーズン6大会を経て、4月からディビジョン2の上位4チームを加えた「ワールドチャンピオンシップ」が始まっている。このプレーオフでは3大会で得た合計ポイントによって最終順位と昇降格が決まる。ここでは、サクラセブンズのここまでの歩みと、5月29日から2週に渡っておこなわれるバリャドリード大会(スペイン)と最終ボルドー大会(フランス)を展望する。
尻上がりに調子を上げた昨季とは異なるシーズンを、今季のサクラセブンズは過ごした。レギュラーシーズン初戦のドバイ大会で初めてメダル(3位)を手にするこれ以上ない好スタートを切るも、以降は5位、7位、6位、7位、6位と順位は振るわなかった。

(HSBC SVNS 2026ドバイ大会で見事3位入賞を果たしたサクラセブンズ)
ベスト8を目標としていた時期が長かったから、「振るわなかった」と書くことに抵抗こそあるけれど、毎大会後に選手たちが振り返る言葉には悔しさが滲んでいた。兼松由香ヘッドコーチ(以下、HC)も同じ思いだ。
「数年前であれば6位という順位でも嬉しかった。負けた時の悔しさは当時といまでは全然違います。タックルの成功率が上がるなど自分たちの成長を感じられているし、勝てる自信があるからこそ、一つのミスで勝ちを逃してしまうことが悔しかったです」
生みの苦しみもあった。兼松HCは今季だけで大内田夏月、葉月姉妹ら7人もの選手をデビューさせる。昨シーズンはケガで招集できなかった代表キャッパーの復帰もあり、序盤戦は選手間のコネクションが課題だった。フェーズを重ねればトライを取れていたアタックで、ミスが頻発していた。

(ビッグゲインを試みる大内田葉月選手)
(トライを狙う大内田夏月選手)
大胆な起用は選手層を厚くするためだった。「連戦で選手たちがどれだけダメージを受けるかを学んだ」という。今季は参加国が上位8チームに絞られただけでなく、2週連続でおこなわれるタフな大会だ。第1戦・ドバイ大会、第2戦・ケープタウン大会では複数の長期離脱者が出ただけでなく、ケープタウン大会での最後の2試合はリザーブ2人での戦いを強いられていた。
「コンディションが万全な選手でなければ試合に出しません。なので、新しく加わった若い選手にもどんどんチャレンジしてもらいました。それ以降は大きなケガがなくこられています」
(選手のコンディションを見極める兼松由香HC)
兼松HCは終盤戦でもチームに仕掛けた。パリオリンピック以降、大会ごとにキャプテンを変えていたが、第5戦・バンクーバー大会から須田倫代に固定したのだ。
「人生で初めてキャプテンをやる選手もいたのですが、みんなそれぞれのリーダーシップを昨シーズンは発揮してくれました。一方でキャプテンをやらなかった時に、チームを変えるような厳しい言葉をなかなか言えていなかった。私が言わなければいけない状況だったので、アプローチを変えなければいけないなと」
須田は2年前の春に左ひざの大ケガを負い、パリオリンピック出場を直前で逃している。そのリベンジの思いの強さを、兼松HCは評価した。
「サクラセブンズが目指しているひたむきなプレーができるし、みんなをいつも和ませてくれる明るいキャラクターです。ただ、チームを締めなければいけない時に私ではなくキャプテンができるように乗り越えてほしいと伝えました」
(サクラセブンズのキャプテンを務める須田倫代選手)
さらに、レギュラーシーズン最後のニューヨーク大会前にはオリンピックを経験してきた選手たちにも発破をかける。アタックやディフェンス、セットプレーなど、エリアごとにリーダーを指名し、発言の場を与えた。
「オリンピックを経験してきたメンバーは私以上に世界の厳しさを分かっているし、一番悔しい思いもしてきました。彼女たちの言葉は重いので、練習で何を意図しているのかを話してもらうようにしました。いまでは、私が話すことはほとんどなくなっています」
パリオリンピックでキャプテンを務めた平野優芽も、前向きな変化を実感する。リザーブでウォーター役を務める際には、効果的な声かけで士気を上げていた。
「私たち(オリンピック経験選手)も先頭に立って引っ張っていくべきなのか、一歩下がってサポートするべきなのか、迷いながらやっていた時期がありました。でも、いまは迷いなく引っ張れていると思います」
(トレーニング中に発言する平野優芽選手)
役割の明確化が実を結んだのは、ワールドチャンピオンシップの初戦、香港大会だ。順位こそ6位ながら、サクラセブンズ本来の姿を取り戻していた。
フィジーとのプール初戦はロスタイムでの逆転劇(12-5)。アメリカとの5位決定戦は残り5分で7-24と3トライ以上の差をつけられていたが、終盤に猛追した。最後のパスこそ繋がらなかったが、19-24まで追い上げた。
(女子フィジー代表戦選手入場)
(体格が勝る相手にも果敢にトライを決める大内田葉月選手)
(女子フィジー代表相手に逆転勝利を収め、喜びを分かち合う選手たち)
(女子アメリカ代表戦で相手を抜き去る大谷芽生選手)
(同点トライを試みる平野優芽選手)
「久しぶりに、僅差に持ち込んでラスト30秒で勝負するサクラセブンズのラグビーを見せる展開にまで持ち込めました。レギュラーシーズンでは、一度流れが崩れてしまうと立て直せませんでしたが、今大会ではうまくいかない時にどうするかを、リーダーを中心に話し合えていました」(兼松HC)
欧州でのラスト2大会に向けて取り組むべき課題もはっきりした。疲労度が高くなり、プレッシャーのかかる終盤に、「当たり前のことを当たり前にできるか」だ。
「しんどくても頑張らなければいけない"サクラタイム"でみんなが同じ絵を描けるように、試合の時間帯、スコアなど細かいシチュエーションを想定した練習を組んでいます」
バリャドリード大会(スペイン)は5月29日から31日、最終ボルドー大会(フランス)は6月5日から7日におこなわれる。総合順位で8位以内に入れば、来季もトップディビジョンで戦える。ただ、サクラセブンズの目標は残留ではない。トップを走るニュージーランド、オーストラリアを破り、表彰台からの景色をもう一度見たい。

(ワールドチャンピオンシップバリャドリード大会のキャプテンズフォト)
(文:明石 尚之)


