就任会見に臨んだ北川俊澄・女子日本代表ヘッドコーチ(2026年8月25日、東京青山)
女子日本代表サクラフィフティーンが新ヘッドコーチを迎えて、2029年女子ラグビーワールドカップへ向けて新たなスタートを切った。日本ラグビーフットボール協会(JRFU)は8月25日、元男子日本代表ロックとして活躍した北川俊澄氏の女子日本代表ヘッドコーチ就任を発表。2029年にオーストラリアで行われるワールドカップでのベスト8入りを目標に活動をスタートし、9月4日の福岡での女子フィジー代表とのテストマッチで初陣に臨む。
「代表チームを率いることに、すごく責任を感じているが、このチームで新しい歴史を築くことをとても楽しみにしている。さらに魅力あるチームにしていきたい」
北川ヘッドコーチは就任会見で、そう抱負を述べた。契約は2029年12月末まで。
2026年アジアラグビーエミレーツチャンピオンシップに臨んだカザフスタンでの練習で、選手に注意点を伝える北川ヘッドコーチ代行(当時)
京都出身の45歳は日本代表のロックとして43キャップを保持し、2011年ラグビーワールドカップでもプールステージ4試合に先発した実績の持ち主。伏見工業高校から関東学院大学を経てリーグワン前身の旧トップリーグでは2004年からトヨタ自動車でプレー。40歳となった2021年に日野レッドドルフィンズで選手生活を終えるまで160試合以上に出場した“鉄人”として知られる。

2011年ラグビーワールドカップのフランス代表戦に臨む北川氏(右端)。男子日本代表ロックとして通算43キャップを獲得した
引退後は指導者の道に進み、日野でアシスタントコーチ、2023年からは男子高校日本代表のFWコーチ、女子のYOKOHAMA TKMではFWコーチ総監督補佐を務めた。女子日本代表でも前任のレスリー・マッケンジーヘッドコーチの下でコーチングスタッフを経験している。
昨年5月のアジアラグビーエミレーツチャンピオンシップは若手主体のチームで臨み、マッケンジーヘッドコーチが今田圭太ヘッドコーチ代行に指揮を任せる形で見守る中、北川氏はFWコーチとして参戦。その後、今年4月からはヘッドコーチ代行を務め、5月のアジアチャンピオンシップでチームを5連覇で通算9度目の優勝に導いた。
そして今回、マッケンジー体制での7年間で国際舞台での競争力をつけてきた女子日本代表にさらなるバージョンアップをもたらし、目標とするワールドカップでのベスト8入り達成のための指揮官に抜擢された。

2025年女子ラグビーワールドカップではスペイン代表に勝利(2025年9月7日、イングランドのヨーク・コミュニティ・スタジアム)
有水剛志JRFU女子ディレクター・オブ・ラグビーは、「2025年ワールドカップではセットピース、パワープレー、フィジカルでは2017年、2022年と比べて格段にレベルアップした」と前体制での成果を評価した上で、切望するワールドカップでの8強進出にはアタックでもディフェンスでもスピードが不可欠と指摘。「日本人の特性であるスピードを活かした」プレーを加えたいとして、チームマネジメント力に加え、目指す方向性でも新指揮官とビジョンが一致したと説明した。
「課題は強みになる」
女子日本代表は前任のマッケンジー体制下で、オーストラリア代表やアイルランド代表、イタリア代表などにテストマッチでは勝利を経験するように変貌。勝利目前という接戦も増えた。だが、ワールドカップの舞台ではなかなか結果が出ず、2大会連続6度目の出場となった昨年のイングランド大会では、スペイン代表に勝利したものの1勝2敗でプール戦敗退するなど、厳しい戦いが続いている。

セットプレーの安定度アップは前任のレスリー・マッケンジー体制での成果の一つ(写真は2025年ラグビーワールドカップ、スペイン代表戦)
新体制で最大のターゲットとなる3年後のワールドカップについて、北川ヘッドコーチは「このチームはベスト8を狙うに値するチーム。ヘッドコーチとして携われることは誇りであり、やりがい」と述べて、「レスリーさんの時に、セットプレーやキックでエリアを取るところがすごく安定していた。我々はそれに加えて、もっと展開力を持ってベスト8を狙いたい」と抱負を語る。
コーチングでは「選手の成長を個々にコーチングし、日本代表としてのスタンダードを明確に伝えていくこと」を信条とするとし、女子日本代表の選手たちには「サクラ・ファースト」を合言葉に「誇り、信頼、挑戦」を求めている。

チーム一丸で臨んだ2025年ラグビーワールドカップ初戦のアイルランド代表戦(イングランド、ノーサンプトンのフランクリンズ・ガーデンズで)
「今までの強みを残しつつ、さらに新しいものを積み上げていって2029年にベスト8に挑みたい」と北川ヘッドコーチ。「いろいろなところでボールをもらえるような、展開力を上げていきたいし、ラインスピードを上げて、相手のスピードが上がる前にこちらが止められるか。そこをどれだけできるかが課題だが、課題は強みになる部分でもある」と語る。
女子日本代表の指揮官就任は指導者として大きなステップアップだ。今回の任務を前に男子日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチのところに出向き、「代表ヘッドコーチとしての指導者の姿勢や、コーチへの役割分担や考え方の共有、選手育成のプロセスなどについて学んだ」と明かし、さらに「いつでも協力するというメッセージをもらった」として、強力な後ろ盾も得た。
9~10月に女子国際大会
今回招集したメンバーには齊藤聖奈や長田いろは、大塚朱紗、松田凛日など昨年のワールドカップを経験したメンバー数名が含まれていない。
だが、北川ヘッドコーチは「プレーしている以上は選考内」と明言。7人制で来年のロサンゼルス・オリンピックを目指す選手についても、「セブンズもあれば15人制もあるのが女子の良い文化。スピードあるラグビーをやっていこうと思うと、セブンズをやっている利点が出てくる」と、セブンズ経験者やその特性も取り入れる意向を示している。
今季は9月12日~10月31日に行われる女子世界トップ12チームで競う女子国際大会、WXV GLOBAL SERIESが控えており、これがメインの舞台となる。日本は9月19日にイタリア代表、同27日にアイルランド代表とそれぞれアウェイで対戦。(アイルランド代表とは10月3日に再びアウェイでのテストマッチを予定)。そして、今季最終戦を迎える10月にはウェールズ代表戦と24日に東京・秩父宮で、31日には埼玉・熊谷で、WXVの2連戦に臨む。
最新の世界ランキング(8月31日現在)では日本の11位に対して、イタリア6位、アイルランド5位、ウェールズ12位。ワールドカップで対戦するような相手との手合わせは、重要な強化ポイントであることは言うまでもない。
「一番大きなターゲットはアイルランド。世界トップ5のチームを相手にスピードのラグビーをどこまでできるか、我々のチャレンジになる」と北川ヘッドコーチ。「力関係で言うと、イタリア、アイルランドには十分勝てる力を持っている。それをどれだけ信用しながら挑めるか」と話す。
9月4日にフィジー代表戦
2024年6月のフィジー代表戦はアウェイで1勝1敗。通算成績は5勝1敗に。
そこへ向けて、9月4日に福岡のJAPAN BASEで行われる女子フィジー代表戦は、サクラフィフティーンの現在地をチェックして準備を進めるための重要な試合になる。
フィジーは世界ランキングで13位。通算対戦成績は日本の5勝1敗だが、今回はアウェイで臨んだ前回2024年6月に初黒星を喫して以来の顔合わせで、日本としては雪辱を期す一戦でもある。
北川ヘッドコーチは、「フィジーはスピードに乗るととても速い選手が多く、フィジカルも強い。それに対して我々がどうプレッシャーをかけていくか」と述べている。
3年後のワールドカップ8強入りを目標に、新たな可能性を探る女子日本代表サクラフィフティーン。今、新たな一歩が始まる。
取材・文:
スポーツジャーナリスト 木ノ原句望
◇JAPAN RUGBY CHALLENGE MATCH 2026
女子日本代表 対 女子フィジー代表
日程:9月4日(金) 17:00キックオフ
放送:(録画) 2026年9月4日(金) 23:00~ J SPORTS 3
配信:(生配信) 2026年9月4日(金) 16:45~ J SPORTSオンデマンド


