昨年のこの大会で、早大に敗れるという「トップリーグのチームとしてあってはならない(朽木監督)」屈辱を味わったトヨタ。今日の試合は、トヨタにとって日本選手権の決勝進出と同時に、清宮監督をはじめ、昨年の早大の主力が活躍するサントリーを相手に、その雪辱を期する試合でもあった。一方、サントリーにとっても、トヨタはリーグ戦で接戦をした相手。東芝と再戦し、選手権を手に入れるためには、落とせない試合である。司令塔の廣瀬を怪我で欠くトヨタの戦い振りが注目された。

前半、トヨタは、廣瀬に替わりアイイをSOに入れ、攻撃面を強化するとともに、ディフェンスラインではSOの位置に右ウイングの遠藤を入れる布陣で臨んだ。前半からトヨタは積極的な攻撃で、2分には早くもハーフライン中央付近から左展開し、ゴール前5mまで迫った後、得意のモールで右PRの豊山がトライを挙げると、SOアイイも確実にゴールを決め先手を取った。
サントリーはなかなかリズムがつかめない中、10分から13分にかけてトヨタゴール前で再三ラインアウトを選択し、モールでトライを奪いに行くも反則を犯し、トヨタにPKを与え陣地を挽回された。トヨタはサントリーの強力なディフェンスを攻めあぐねながらも16分、10mL中間ラックからNO8菊谷が強引にタッチライン際を走りきりトライを挙げると、続けて20分にもSOアイイがDGを決め、17-0と優位に試合を運んだ。
サントリーは、前半の終盤32分に、ようやく10m付近のラインアウトからの攻撃でSO野村が、相手ディフェンスのずれた隙を縦に突き、SH田中が中央に回りこみトライを挙げ、前半を17-7で終えた。

後半、サントリーは、ハーフタイムの後トヨタがリズムをつかめない中、10m左中間からCTBニコラスがPGを決め17-10と1トライ1ゴール差まで詰め寄り、その後もトヨタ陣内で試合を進める。
トヨタは、10分過ぎにようやく、相手陣に入り込み22m中央ラックからすばやく早いパス回しで右展開し、WTB遠藤がライン際を走りきり中央に回りこみトライを決め24-10と差を広げた。17分にはPGも決め、ほぼ試合を決定付け、最終的には39-17でサントリーを振り切り、昨年の雪辱とあわせ決勝進出を決め、因縁のサントリー戦に勝利した。
サントリーの安定したラインアウト、分厚いディフェンスを上回る、トヨタの積極的なタックルと展開力で、花園の観衆に日本選手権にふさわしいラグビーゲームの醍醐味を存分に味わってもらった一戦であった。

トヨタ自動車 39-17 サントリー トヨタ自動車 39-17 サントリー

写真提供/長谷川昭男

 

清宮監督(左)、小野澤ゲームキャプテン
清宮監督(左)、小野澤ゲームキャプテン

 

トヨタ自動車ヴェルブリッツ 39-17 サントリーサンゴリアス(2月18日)

◎サントリーサンゴリアス
○清宮克幸監督
「負けると終わりの大会で、最後に力を出せず、非常に残念だ。今シーズンを振り返ると、若いメンバーがいい経験をし、これからさらに成長していく糧を得たのではないかと思う」

○小野澤宏時ゲームキャプテン
「ゲームキャプテンとして今シーズンを戦ったが、自分の力の無さを痛感し、非常に残念だ。結果が出ている時はいいが、今日のようなゲーム、つまり苦しい時にまとまらなければならないが、ゲームキャプテンとしてできなかったことに対し、(主将である山下)大悟に申し訳なく思う」

――力が出し切れなかったとは。
○清宮監督
「準備したことをゲームで出せなかった。東芝戦後いくつかのキーワードを挙げ練習したが、修正できなかった。ブレイクダウン時の劣勢だけではなく、ゲームプラン通りにできなかったということだ」

――マイクロソフトカップの敗戦を踏まえ、チームがプラスマイナスどちらの方向へ行ったか。
○清宮監督
「両方向だろう。マイクロソフトカップに勝っていれば、当然今日も違う内容になっていただろうし、あの戦いがあったからこそ、今日の戦いもある」

――トヨタが、ディフェンス時、WTB遠藤をSOに据えていた等予想外の戦法だったか。
○清宮監督
「意外性はない。こちらの力が出せなかっただけだ。準決勝というモチベーションや戦い方、様々な要素が絡み合った今日の結果だ」

――昨季は早稲田大学、今季はサントリー監督からみたトヨタの印象は。
○清宮監督
「御覧の通り、チェックやスピードは今日のほうがいい。トヨタが強くなっているということだ」

――これまでの戦術面から変更はあったか。
○清宮監督
「まったくない。チャレンジする気持ちも同じだし、(マイクロソフトカップの)東芝戦から戦術面でチェンジしたこともない。ただ練習中から、10数名いるフロントロー陣から観て納得できるスクラムが組めていない、仲間から観て納得できるプレーができていないという点からのチェンジは必要であるし、それは常に心掛けていた」

――トップリーグチームの指揮官初年度を終えて。
○清宮監督
「非常にエキサイティングだった。とても熱く、ボクにとって天国のような場所だった」

トヨタ自動車 39-17 サントリー トヨタ自動車 39-17 サントリー

 

トヨタ自動車 39-17 サントリー トヨタ自動車 39-17 サントリー

 

 

朽木監督(左)、麻田主将
朽木監督(左)、麻田主将

 

◎トヨタ自動車ヴェルブリッツ
○朽木英次監督
「トップリーグ第9節で(サントリーに)敗れ、涙したことを忘れず、また昨年の日本選手権で早稲田大学に敗れ、その時の将とキャプテンがいるサントリーへのリベンジができたことで、トヨタが1戦1戦力をつけていることを肌で感じた。
(ゲームについては)アタックの時間をどれだけ長く継続できるかが焦点だった。ボールキープのため、セットプレーに多くの練習時間を割いた。結果、接点でトヨタが優位にゲームをすすめることができた。東芝へは、チャレンジャーとして立ち向かいたい」

○麻田一平主将
「(監督と同じく)昨年早稲田に負けた悔しさ、"清宮" "佐々木(隆道)"サントリーを倒したいという気持ち、上手く言えないがそうした想いが形になったゲームだった。ゲーム前は、"トヨタの意地をみせよう"というメンタル面しかチームに言わなかった。"日本一"の目標に向けて、1週間しっかり準備したい」

――勝敗を分けたシーンは
○朽木監督
「これはというより、終始"前に"プレーできたことではないか。反則はトヨタらしく多いが(苦笑)、これも気持ちが前に出たという表れ。サントリーは接点で、人数をかけず、少人数でリサイクルするので、ここにプレッシャーをかけ続けた」
○麻田主将
「前半は久住、後半は赤沼の"ビッグタックル"でターンオーバーしたことが大きい。ペナルティーを減らせれば、絶対勝てると信じていた。(まぁ、相変わらず多いペナルティーでしたが、と苦笑)サントリーのプレッシャーは紙一重だったが、ディフェンスが前に出られたことが大きい」

――SO廣瀬選手の欠場について。
○朽木監督
「決勝戦のSOは廣瀬の起用を考えている。今週の木曜(15日)、本人に確認すると"行けます"と言う。廣瀬は多少の無理でも"いける"という(男気のある)ヤツだが、(指揮官の)ボクの目からも万全ではないと判断し、今日のメンバーから外した。100%のコンディションへ持ってこいと本人にも言ってあるし、次のゲームまでには持ってくるでしょう。そうなれば廣瀬起用です」

トヨタ自動車 39-17 サントリー トヨタ自動車 39-17 サントリー

 

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