マッチリポート
「第52回 日本ラグビーフットボール選手権大会」

東芝ブレイブルーパス 38-24 帝京大学

【2回戦/2015年2月15日(日) /東京・秩父宮ラグビー場】
日本選手権1回戦で共に勝利した両チームの対戦。
2003年のトップリーグ創設以来、4強を維持し続けている東芝は、この試合に今季初出場となる主将のSO森田佳寿をスターティングメンバーに入れ、母校の帝京大学との決戦に挑む。
一方、1回戦のNECグリーンロケッツ戦で歴史的金星を挙げ勢いに乗る大学選手権6連覇の王者の帝京大学がトップリーグ勢連破となるか。1万4,000人を超す大観衆の注目する中、帝京大学のキックオフでスタートした。

先制したのは東芝ブレイブルーパス。
前半3分、帝京陣22m付近でのこぼれ球をSH小川高廣が拾い上げ、相手ディフェンスを振り切り左中間にトライ。自らコンバージョンゴールも決め7-0。
18分には帝京陣10m付近のラックから右展開、CTBリチャード・カフイが相手ディフェンスを交わしてゴールポスト脇にトライ(ゴール成功)、14-0とする。
更に25分にも帝京陣22m付近のラックから、ラック右サイドの空いたスペースをWTB大島脩平が左隅にトライ(ゴール成功)。21-0と差を広げる。

大学チャンピオンの意地を見せたい帝京大学も37分、東芝陣30m中央付近で得たPGのチャンス。SO松田力也のPGが左ゴールポストに当たってはね返ったボールを確保し、右展開から最後は前半13分からCTB権裕人の負傷交代で途中出場したCTB濱野大輔が東芝のディフェンスを外し右隅にトライ(ゴール失敗)。21-5で前半が終了した。

後半開始後も東芝の勢いは止まらず、セットプレー(スクラム・ラインアウト)で徐々に帝京大学に圧力を掛けて行く。
後半3分、帝京陣左ゴール前でのラインアウトからモールで押し込み、崩れたラックサイドをWTB大島脩平がこの日2つ目のトライ(ゴール失敗)。26-5とする。
14分には、帝京陣ゴール前ラックからのこぼれ球を右展開。後半4分から途中出場したSO廣瀬俊朗のキックパスを受けたWTB伊藤真が相手ディフェンスを振り切り、右隅にトライ(ゴール失敗)。31-5と突き放す。

帝京大学もその直後のキックオフでボールを奪い、東芝陣22m付近でBKに展開、最後はWTB尾崎晟也が相手タックルを2人交わして右中間に廻り込みトライ(ゴール成功)。31-12と反撃に出る。

21分には東芝はSH小川のスクラム左サイドの突破から、CTBカフイがポスト中央にトライ(ゴール成功)で38-12とされるが、ここからは『後半必ずチャンスが来る。もっとファイトして行こう!』とハーフタイムで流大主将が皆の気合いを入れ直した』という帝京大学が、東芝陣に攻め込み帝京ペースで試合が進む。
27分には東芝陣ゴール前のラインアウトのチャンスからモールで押し込み、崩れたラックから連続攻撃。最後は左展開しWTB磯田泰成が左隅にトライ(ゴール失敗)。38-17とし大観衆のスタンドを沸かせる。
更に36分には東芝のハンドリングミスから逆襲、ゴール前ラックから左に展開。最後はWTB磯田泰成が連続トライ(ゴール成功)を挙げ、見せ場を作るが反撃もそこまで。38-24でトップリーグ上位常連チームの地力の前に屈した。

試合終了後の記者会見で、帝京大学のSH、流大主将は『ブレイクダウンでは負けていなかったが、セットプレーで先週(NEC戦)とは違った圧力があり、前半流れに乗れなかった。今は悔しい思いでいっぱいだが1年間共にやってきた仲間に感謝したい。来年、更に進化したチームに期待して欲しい』と後輩たちに思いを託した。岩出雅之監督は、『チャンスは有ったので少し残念ではあるが、学生は良く頑張った』と選手を称え、最後に来年度の主将にHO坂手淳史選手を指名した。

一方、東芝ブレイブルーパス/冨岡HCは『帝京大学近年まれにみる良いチーム。日本選手権は非常にタフな試合が続くので、いつもより早目の選手交替をしたが、後半リズムに乗れなかった』と自らの采配を悔やんだ。
森田佳寿主将からは『母校(帝京大学)と戦うことに気持ちは変えず、今日は東芝を応援してくれている方々のために全力で戦った。次のヤマハ発動機戦へ向け良い準備をして行きたい』と2006年度以来の日本選手権優勝に向け熱い思いを語った。

 

(橋本光一)
会見リポート
 

東芝ブレイブルーパスの冨岡ヘッドコーチと森田キャプテン

東芝ブレイブルーパス

○冨岡鉄平ヘッドコーチ

「学生相手が2週間続いたのですが、トップリーグの厳しい試合と同じように、ベスト8の試合としてしっかり練習して、森田キャプテンも帰ってきて、東芝らしい厳しいプレーが出たと思います。トップ4のチームとして戦いました。入りは厳しいプレーが出て、満足しています。帝京さんは、非常に大きな勝利を得て、また大きな試合が続き、スイッチを切ることなく良い準備をしてきたと選手も感じていました。まれに見る素晴らしいチームでした」

──後半はやられたが?

「後半は、次の試合も見ているマネジメントをしたと、選手に思わせないようにしました。日本選手権で優勝するためには、タフなゲームが続きます。前半は、もう少しもつれると思っていました。もう5千人入っていたら、10-7という試合になっていたと思います。前半の3本のトライには満足しましたが、あそこで1本獲られたのではチャンピオンになれないと思いました。後半、早々に力強いトライを獲って、ここから別の試合になりました。メンバーチェンジして、厳しいゾーンで少しでもほころびが出ると、一人ひとりトップリーグでもレギュラーになれる選手がいるチーム相手だと、ああいうパターンになります。ちょっとずつリズムが取れなくなったと思います」

──ヤマハ戦は?

「ラウンドロビンは台所事情があり、重要度が違うので、前の2試合ともイーブンでなかったと思います。今度は決勝へ向けて、しっかりチャレンジして必ず勝つ気で臨みます」

○森田佳寿キャプテン

「本日は、帝京さんはNECさんに勝って、非常に大きなエナジーをもって戦ってくると思いました。観ているお客様も期待していると。我々も応援してくれるファンの期待を背負って、そういう相手にどう戦うか、問いかけて入りました。前半は東芝のアイデンティティを少し見せることができましたが、後半はあまり良い内容ではありませんでした。次のヤマハ戦に向けて努力したいと思います」

──母校との対戦は?

「まあ、まず素直に、先週トップリーグの威信をかけて戦ったNECさんを倒したのは、OBとしてすごく嬉しかったです。しかし、私が戦うことになり、後輩や大学から応援してくださるファンの皆様に下手なプレーは見せられないと思いました。それに、学生相手だと言えども応援に来て下さる、同じ職場の方にも、しっかりしたプレーを見せたいと思い、すごく難しい感情ではありませんでした。また、今シーズン初めての試合で、ブレイブルーパスの10番として出る責任があり、私が何をするかを考えて臨みました。何も感じなかったと言えば嘘になりますが、それほど大きいものではありませんでした」

──後半は押されたが?

「ただ一つ、メンタリティです。メンバーチェンジしても、試合はピッチに立っている選手の責任です。たとえリザーブでも、まだまだ私たちの甘さが出たと思います」

──先輩、後輩でなくプレーヤーとしては?

「今週一週間、きちんとしたスカウティングをしました。準備したディフェンスと前に出るアタックは自分たちの形で最後までやりきっていました。総じて、自分たちのやるべきことをやりきる奴らでした。自分がOBであること関係なく、すべての面で、一人ひとり志高く、素晴らしいチームだと思いました」

 

帝京大学の岩出監督と流キャプテン

帝京大学

 

○岩出雅之監督

「よろしくお願いします。学生たちには必ず自分たちの力を信じて、余裕をもってやれば勝てると伝えて臨みました。しかし、前回のNEC 戦にくらべ、勝てるという確信の部分をもてず、少し迷いがあったのかと思います。とても良い試合でしたが、監督の力量が足りないため残念な結果となりました。ここで勝てるイメージを学生たちに持たせられれば、スケジュールや学生の心技一体のモチベーションの問題もありますが、1回勝ったことで満足しないで、様々なところへの挑戦ができると思います。今日も勝つことを学生にイメージさせれば、ほほえむチャンスもあったかと思います。後半の最後に笑っていられるからと、もう少し上手く選手にラストワンプレーを信じるようにさせてあげられたらと思います。選手はよく頑張りました。大きな挑戦をした4年生の財産を次のチームが引き継いでくれると思います」

──ブレイクダウンについては?

「見えてきたものは、サインプレーのサインを知っているOBがいました。だいぶバレていました(笑)。除名せにゃ(笑)。感覚的なもの、身に付けるべきもの、テストなどのスケジューリングもありますが、NEC戦と東芝戦は監督として難しかったです。NEC戦は火曜、水曜で仕上がっていましたが、東芝戦では遅れてしまい、水曜日にファーストミーティングでした。落とし込めず、スタッフが負けの原因を作ったとも言えます。何より、学生に『行ける』というあきらめない気持ちをしっかりもたせることです。他の学生が流キャプテンと同じように、今日は勝ちゲームを落として最高に悔しい気持ちになっているかということです。負けてサバサバしているチームは、試合中に終わっています。今日は良いものを残していただいたと思います。最後の悔しさを残さないような文化が、我々の努力を高めてくれます。この戦いに当たって、2つ勝つ程度ではないことを、監督は考えなくては準備不足になります。日本一になる思いをもっていないと。ベスト4とかに目標が設定されると、学生のマインドが変わってしまいます」

──スリークォーターバックスが4本トライしたが?

「BKとFWの両方で獲れる力強さのバランスが大事です。そうすれば、もう少しあわてた向こうの姿が見られたと思います」

──日本選手権を取るためには?

「1年かけて、どこがターゲットかを示したいと思います。今は、年内に勝っても誰も喜ばない。大学の決勝戦でようやく喜ぶ、そういう文化になりました。志あれば、いつか現実になる。僕の役割です。今シーズンは学生に問いかけが足りなかったと思います。どこかで、どっこいしょと休んでしまうと感じました。監督はもっと先を見て、学生のマインドを上げてやらなくては」

──帝京史上最強のチームか?

「毎年、昨年のチームを追い越せと言ってきています。後輩は先輩のやってきたことを追って、必ず努力します。次のリーダーが流のキャプテンシーを追い越してくれると思います」

(最後にマイクを取って)「一年間、ありがとうございました。次のキャプテンは坂手です。キャプテンが替わって再スタートになります。よろしくお願いします」

○流 大キャプテン

「よろしくお願いします。まず、もう一度日本選手権で試合ができたことを誇りに思います。東芝さんは最後まで、僕たちにファイトしてくださって、感謝申し上げます。負けたことについては悔しい思いで一杯です。今日の試合で得たものは、社会人らしい大学生と違うプレーにもひるむことなく、最後までやったことです。最後に獲りきるところ、精度の部分をやっていければ、違う結果になっていたかもしれません。キャプテンとしてここまで来ることができたのは、誇りに思います。苦しい練習を、誇りをもってやりとげた選手に感謝したいと思います。これで、帝京の今シーズンは終わりですが、3年生以下が、きっと後を継いでくれると思います。これからもよろしくお願いします」

──学生と違う圧力は感じたか?

「スクラムは圧力を受けましたが、前半、トライを獲られたのはディフェンスのコミュニケーションのミスが原因でした。悲観的になることなく、コミュニケーションをとって、しっかりディフェンスしようと声をかけました。もっとファイトするということですが、僕が言う前に、選手皆が話していました。皆、面白い展開になってきたと言っていました」
(横から岩出監督が『ハーフタイムに笑顔になって出てきましたね』とフォロー)

──ブレイクダウンについては?

「先週と同じで、行けると思いました」

──自信はあったのか?

「今日に限って言えば、絶対に勝つと思っていました」