大学王者・帝京大がNECから歴史的金星を獲得
サントリー、神戸製鋼、東芝は大学勢を退ける
8日、第52回日本ラグビーフットボール選手権大会が開幕。東京・秩父宮ラグビー場と愛知・名古屋市瑞穂公園ラグビー場で1回戦4試合が行われ、大学選手権覇者の帝京大学がNECグリーンロケッツを31-25で破り、2回戦に進出を果たした。
日本選手権で大学勢がトップリーグチームを破るのは第43回大会以来(2005年度/早稲田大学 28-24 トヨタ自動車ヴェルブリッツ)という歴史的偉業。
他の3試合はトップリーグ勢が大学勢に順当勝ちした。

text by Kazuhiro Tamura

「第52回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
秩父宮ラグビー場で真紅のジャージーが躍動。歴史的勝利を堂々と手にした。

先制トライはNEC。前半6分のラインアウト時、後方から走り込んできたNO8ニリ・ラトゥがタテに切り裂きインゴールまで走り切った。
それでも、帝京大はすぐに追いついた。前半10分、相手ラインアウトを奪った後の攻撃。相手ゴール前でフェーズを重ねた後、SO松田力也が勝負に出た。
「デイフェンダーが内を向いたので」
トイメンにFWが立っていたのを見逃さなかった。鋭く外に抜き、トライラインを越えた。自らコンバージョンも決め、同点とした。

帝京大学は、何があっても全員で勝利を信じ続けた。前半13分、カウンター攻撃後のキックパスでトライを許しても、攻守で前に出続ける心は折れない。FL杉永亮太は言った。
「ブレイクダウンで低く。そして激しく。これまでやってきたことをやるか、やらないか。それだけでした」

前半30分、同点に追いついた場面も迷いのない決断がトライを呼んだ。ラインアウト後のアタックで、NO8河口駿がSH流大主将のパスに真っ直ぐ走り込む。インゴールにボールをつけた。コンバージョンも決まり、14-14とした。

互いに1PGずつを加えて前半は17-17。同点で迎えた後半に、帝京大は1年間蓄積してきたことを活かした。

1PGずつを加えて20-20となった後の残り15分強。帝京大は忠実なキックチェイスから好機をつかみ、相手の反則を誘ってPGを決める(27分/23-20)。そして35分にはWTB尾崎晟也がトライ(28-20)。スクラムからのアタックでフェーズを重ねると、相手はついて来られなくなっていた。SH流主将が転がしたキックにも、反応よく走ったのは真紅のジャージーばかりだった。

後半39分、攻め込んだNECはPKから速攻を続けてFB吉廣広征がトライを返したが、その後のコンバージョンが外れた後に80分経過を告げるホーンが鳴った。かろうじてキックオフがおこなわれ、帝京大がNEC側にボールを蹴り込んだものの追走者は攻めきれず反則。帝京大がPGを追加して歓喜の時が訪れた。

学生王者は自分たちの積み上げてきたものを冷静に、激しく、そして余すことなく出し切った。
岩出雅之監督は「ゲームプラン、描いたシナリオ通り」と話し、流主将は「体を当てて、いけるなと思った。自信を持って、やる気と楽しさを感じながらやった。仲間を誇りに感じます」と笑った。

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NECを31ー25で破り、歴史を塗り替えるトップリーグ勢への金星をものにした帝京大。2回戦では東芝へのチャレンジとなる

photo by Aki Nagao
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トップリーグのプライドを賭けて大学王者との対戦に臨んだNECだったが、まさかの敗戦。日本選手権制覇も夢と消えた

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秩父宮ラグビー場でのもう1試合(第1試合)、サントリーサンゴリアス×筑波大学は62-7でサントリーが快勝した。

大久保直弥監督は「僕らとしては日本選手権(のタイトル)を獲るためのスタートのゲーム。ファーストジャージーを久々に着た選手たちがそれぞれの役割を果たしてくれた」と語り、筑波大に対して「低くひたむきなタックルには学ぶべきものがあった」と敬意を表した。筑波大のBKリーダーを務める山下一が、「勝ちにいったゲームでした。(敗れたのは)悔しいですが、このチームでやれた1年は楽しかった」と涙を浮かべた姿が印象的だった。

愛知・名古屋市瑞穂公園ラグビー場では神戸製鋼コベルコスティーラーズが慶應義塾大学に76-7、東芝ブレイブルーパスが東海大学に59-12でそれぞれ大勝し、2回戦に駒を進めた。

日本選手権2回戦は15日、東京・秩父宮でサントリー対神戸製鋼、東芝対帝京大の顔合わせで行われる。

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筑波大の挑戦をはね除け62-7で勝利したサントリーは2回戦ではトップリーグ4強の神戸製鋼と対戦する

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