「第52回 日本ラグビーフットボール選手権大会」
マッチリポート

筑波大学 7-62 サントリーサンゴリアス

【1回戦/2015年2月8日(日) /東京・秩父宮ラグビー場】
所属リーグではともに5位と振るわなかった両チーム。筑波大学は全国大学選手権で決勝まで上り詰めての日本選手権出場。一方のサントリーサンゴリアスはワイルドカードトーナメントを勝ち抜いての出場だったが、筑波大学・古川拓生監督が試合後「スコアの差が力の差」と語ったように、前後半に5トライずつあげたサントリーがトップリーグの貫録を示した。

80分の経過を告げるホーンが鳴った時、筑波が最後のアタックを続けていた。中央付近で密集を連続支配した後、4年生FB山下一がラインブレイクして快走、同級生のNO8山本浩輝に繋いで最後に1トライを報いた。スタンドが最も沸いた瞬間だった。山下は、試合を通じて思い切りの良いタックルを繰り返し、この日の筑波で最も存在感を示していた。試合後、バックスリーダーとして出た記者会見では涙しながら悔しさを滲ませていたこの大型バックスは、同級生で高校時代の活躍から当時最も注目を浴びていたWTB竹中祥よりも早く頭角を現し、アウトサイドバックスとして4年間活躍した。その竹中も、大学のシーズンでは途中出場が多かったが、この日は先発し、後半24分までプレーした。やはり途中で退いたFL水上彰太ゲームキャプテンやHO村川浩喜など、チームを大学準優勝まで引き上げた4年生を中心に、サントリーのシェイプアタックに対しファーストタックルを決め続けたが、セカンドフェーズ以降で徐々に食い込まれ、崩されていった。「チャンスは少ない」(古川監督)ことは覚悟の上だったが、サントリーの強いプレッシャーを受け続け、最後に奪ったトライの場面以外にはトライチャンスを生み出せず。守っては、サントリーSOトゥシ・ピシや、豪NSWワラタス入りが報じられたCTB松島幸太朗らのキレとスピード溢れるランに付いて行けなかった。

そのピシや松島を後半から下げて、トップリーグではファーストジャージーを着る機会が限られていた選手を多く起用したサントリー。大久保直弥監督の期待に応えたWTB長友泰憲、ジャスティン・ダウニーと仲宗根健太の両FLやNO8西川征克らで構成したバックロー陣、CTB中村亮土らが活躍した。後半途中からSOに回った中村は、「今日はSOの方がチームにフィットしていたようだ」(大久保監督)という言葉通り、後半16分にはラインアウト後のラックから出たボールを受けると鋭く切れ込み、自らトライもマークした。試合後記者に日本選手権に向けた取り組みを問われ、「獲りたい!」と即答したLO真壁伸弥主将は、「トップリーグではやや考え過ぎの感があった。ボールへの反応とか、激しくプレーする気持ちを出していきたい」と話し、サントリーは2季ぶりの日本選手権奪回に向けた好スタートを切った。

会見リポート
 

筑波大学の古川監督と山下バックスリーダー

筑波大学

○古川拓生監督

「本日はありがとうございました。スコアがチーム力の差を表しました。戦う前から、決して多くはないチャンスに筑波のプレーを出せるかと臨みました。セットプレーやターンオーバーのこぼれ球への反応などを狙っていましたが、社会人が上回ったと思います。サントリーさんは我々のはるか上を行っていました。しかし、学生もあきらめることなく、最後までやってくれて誇りに思います」

──今日はキックを蹴らないように指示したのか?

「攻めている中で、わずかに空くスペースを狙い続けるよう指示していました。開始5分で内側に穴があったのですが、思い切ってのコールがなかったのが残念です」

──福岡選手は?

「まだ負傷が癒えていないので、出場はなしとしました」

○山下一バックスリーダー

「本日はありがとうございました。選手、スタッフ皆が勝ちに行ったゲームでした。悔しいですけれど…、このチームでやれた一年を本当に誇らしく思います」

──最後に山下君の突破からトライを獲ったが?

「何回もトライを獲られたのですが、そのたびに円陣の中で皆が『まず一本獲ろう』と言ってくれて、それが、あの一本につながったと思います」

──社会人の違いは?

「やりきる強さではないかなと思います。サントリーさんのアタックはスカウティングどおり、順目にしつこくアタックとわかっていましたが、最終的にはこの点差をつけられました。やり切る強さ、フィジカルの差も感じました」

──相手の同学年がいたが?

「やはり、キレだとか、コンタクトの場面でのかわし方、強さ、スピードがありました。自分と同学年とまったく思えなかったほどではなかったけれど、高いスキルをもつ選手だと感じました」

 

サントリーサンゴリアスの大久保監督と真壁キャプテン

サントリーサンゴリアス

 

○大久保直弥監督

「今日は雨の中、ありがとうございました。まあ、僕らとしては、日本選手権を取るためのスタートでした。とにかく、久しぶりにファーストジャージを着た選手が、自分のやるべきことを激しくやってくれました。次の神戸製鋼戦に向けて、良いスタートが切れたと思います。筑波大学さんは、低いひたむきなタックルをしてきて、学ぶべきところがありました。彼らの分まで、日本選手権でやっていきたいと思います」

──このチーム編成は?

「メインは、今までトップリーグの中でもベンチスタートのメンバーのプレー時間を、もう少し伸ばしたいと思ってのことです。バックスでは、長友が久しぶりにジャージを着て、ここのグラウンドのコンディションも考えれば、彼を生かす状況があるのではと思っていました。コンタクトの強さが彼の持ち味ですが、それを十分見せてくれました。普段の近辺の仕事は、ライアンと並んで、高いレベルにある選手で、十分に出してくれました」

──中村選手の出来は?

「本当に一戦ずつ、試合経験するたびに、自分が何をしなくてはいけないか、分かってきています。コンタクトは元々強い選手で、今日は12番より10番にフィットしていました。今後も日本ラグビーのためにもバックスの中心として伸びてほしい選手です」

○真壁伸弥キャプテン

「うちにとっては、次につながる良いゲームでした。筑波大学さんは良いチームで、筑波さんの分も含めて、次の神戸戦に向けて頑張っていきたいと思います」

──トップリーグで負けて、どういう思いで日本選手権に臨んでいるのか?

「(間髪入れず)獲りたい!獲りたいです。とにかく、しっかり優勝を獲りたいが、一戦一戦積み重ねて、優勝を獲りに行きたいと思います」