目標のベスト8へ「初戦がすべて」のフランス戦で開幕

「95%まではいっている。本番で100にする」(有水HC)

 

9日、アイルランドのダブリンで女子ラグビーワールドカップ(WRWC)2017 が開幕する。

昨秋のアジア・オセアニア地区予選でフィジー、香港を破り、同地区1位として15年ぶりとなるWRWC出場を果たした女子日本代表はフランス、アイルランド、豪州と同じプールCで1次リーグを戦うことになるが、初戦の相手は前回3位の強豪フランス。
現地時間の19時45分(日本時間10日03時45分にキックオフされる。

 

アジア・オセアニア予選を勝ち上がり、15年ぶりのWRWCに臨む女子日本代表。初戦に全てをかける
photo by Kenji Demura

 

「(チーム状態は)フランス戦で持っていきたい95%くらいまでいっている。あとは本番で100に持っていけばいい」(有水剛志ヘッドコーチ)

猛暑の日本を離れ、最高気温が20℃を下回る日々が続くダブリンで1週間にわたって調整を続けてきた女子日本代表が、とうとう世界最高峰の舞台への復帰の時を迎える。
8月1日に現地アイルランド入りして以来、毎日2部練習をこなしてきたサクラフィフティーンだが、大会開幕2日前の7日からは、初戦のキックオフ時間に合わせた夕刻に1時間だけの調整練習へ。

冒頭で紹介した有水HCのコメント通り、事前準備の段階では手応十分な状態で6カ国対抗の雄との対戦を迎えることになりそうだ。

もちろん、手応えを感じているのはスタッフだけではない。

アジア・オセアニア地区予選以降チームを引っ張ってきたHO齊藤聖奈キャプテンは「全体的にチームDFがよくなっているし、チームアタックもできるところはできるようになっている。セットピースの精度も上がっている」と、FWを中心としたチーム全体の総合力が上がっていることを強調。

 

練習時に言葉を交わすHO斉藤主将(左)とSH津久井(右)。152cmの高校生SHもキープレーヤーのひとり
photo by Kenji Demura

 

一方、バイスキャプテンを務めるSO山本実も「アイルランド入りしてからの練習でミスが続いたり、どうしようという感じもあったんですが、藤戸(恭平)BKコーチが『思い切ってやれ』とBKを集めて言ってくれたりして、みんな吹っ切れて、『消極的にプレーしても仕方がない。積極的にいこう』という感じになった。いまは(相手にとって)怖いアタックができるようになっていると思う。上がってきた」と、BK陣も上り調子で開幕を迎えられると断言する。

 

テリトリーを意識したSO山本副将のゲームメイクもフランス戦勝利のポイントになる
photo by Kenji Demura

 

フランスは男子同様、世界有数の大型チーム。
世界に出ればサイズで劣る存在として戦っていかなければいけない日本としては、いきなり超大型の相手に対して、磨き上げてきた「ワイドに高速フェイズアタック。セットのスピードを意識した速いフェイズDF」(有水HC)がどこまで通用するのか、目標とするベスト8に向けた試金石と言っていい初戦となる。

「フランスはワイドに振れれば、DFが詰めてくるので、チャンスがある。こちらのバックスリーは走力がある。そこまでうまくボール運べたらいい」と、SO山本バイスキャプテンがBKのアタックのポイントを語る一方、HO齊藤キャプテンは「向こうのキャプテンもHOなのでスクラムの取り合いになる。絶対に負けたくない。スクラムを取った方が勝つ。相当デカいですけど、ジャパンのような低いタックルを受けたことはないだろうし、結構、相手にとっては衝撃だと思う」と、サイズの勝る相手に対してセットプレーで真っ向勝負した上で、低いプレーで相手の勢いを止めることで勝機を見出せると語る。

 

6月の欧州遠征を経て、「ダブリンは
ホーム」の意識で15年のぶり大舞台へ

フランス戦の後、地元アイルランド、豪州とプール戦で対戦するが、「初戦がすべて。初戦で我々のワールドカップの結果が決まる」と、有水HCはフランス戦こそが15年ぶりに出場するWRWCでのポイントになる試合だと断言する。

「アイルランド、ウェールズ遠征以降、ブレイクダウン、セットピース、チームDFを強みにしてきた。そこで自分たちのテンポをつくりたい」

同HCは6月に行った欧州遠征以降、2002年以来となるWRWCでいきなりのベスト8入りを達成するため、持ち前の速さだけではないラグビーの基礎となる部分でも世界と戦えるベースを整えてきたサクラフィフティーン。
前述のアイルランド遠征でも今回のプール戦の会場となるUCDでの滞在も経験。

 

遠征で旧知の”第2のホーム”ともいえるUCDで戦えるのは日本にとってはアドバンテー
photo by Kenji Demura

 

「この場所を1度経験しているのは大きい。大学構内で何がどこにあるか知っているし、あとはごはん。自分たちでこれが足りないという準備もできた。日本人は1回経験している方が絶対に力を出せる。他の国よりは絶対に居心地よく過ごせている(齊藤キャプテン)という、ある種の“ホームアドバンテージ”も味方につけて、いきなり世界を驚かせるパフォーマンスを見せ、目標であるベスト8へ弾みをつける。

text by Kenji Demura