欧州の強豪イタリアを破り春シーズン終了
スクラムを制御しBKが仕留める好循環

21日、今季の日本代表の総決算となる「リポビタンDチャレンジカップ2014」、対イタリア代表戦が行われ、前半4分のWTB山田章仁のトライで先制した日本が終盤イタリアの追い上げを凌いで26-23で勝利。
昨年のウェールズに続いて6カ国対抗の強豪から白星を挙げた日本代表は、テストマッチ連勝記録を10に伸ばし、目標である世界トップ10に向けて着実にステップアップした姿を披露して、今季の戦いを終えた。

(text by Kenji Demura)

前半4分、WTB山田のトライで先制した日本は26-23で欧州の雄イタリアから初の勝利を挙げる
photo by RJP Kenji Demura
後半19分、CTBサウがイタリアFLベルガマスコを振り切りトライ
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過去5度の対戦で一度も勝っていなかった、6カ国対抗の強豪に対する勝利後の記者会見。
日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーとFLリーチ マイケルキャプテンは、それぞれ同じようなコメントで試合の総括を始めた。

「勝ったことは素晴らしいが、いいプレーはできなかった」(ジョーンズHC)
「勝って嬉しいが、内容には納得していない」(リーチキャプテン)

一方、FB五郎丸歩バイスキャプテンは、「日本ラグビーの歴史を変えた」(ジョーンズHC)勝利にもかかわらず、「それほど嬉しくない」という意外な感想を語った。
「(昨年の)ウェールズの時と比べてもそれほど嬉しくない。勝って当たり前という感じ。この精神状態は成長した証かなという気はします」

調子が良くないのに、6カ国対抗の強豪に当たり前のように勝ってしまう。
そんな地力をつけたチームに確実に成長を遂げている姿を秩父宮ラグビ―場を埋めた1万3816人のファンに印象づけたのが、この日の日本代表だった。

間違いなく、試合の注目点のひとつは「人生を懸けてスクラムを組んでくる」(ジョーンズHC)というイタリアに対して、カナダ、アメリカとスクラムで圧倒して勝利してきた日本のFWがどう立ち向かうかだった。
「ファーストスクラムがすごく大事。受けに回らずにこちらがいかにいい姿勢つくれるかが鍵になる」
試合前、そう語っていたPR畠山健介の言葉どおりに、開始3分のファーストスクラムは日本の進化を証明するようにピッタリと止まる。
そのファーストスクラムから1分後。
ハーフウェイライン付近で相手キックを処理したNO8ホラニ龍コリニアシがイタリアDFを突き破って前に出た後、右についたWTB山田が走り切って先制。
いきなり主導権を握った日本だが、17分、先制トライを決めて秩父宮ラグビー場を盛り上げた山田が今度はチームを窮地に追い込んでしまう。
日本ゴールに迫ったイタリアBKのラストパスに反応した山田が必死に腕を伸ばしてボールをはじいたプレーが故意のノックオンと判断され、イタリアにペナルティトライが与えられ、しかも山田は10分間のシンビン退場となった。
このイタリアのトライ(ゴール)でスコアは10-10。

同点に追いつかれた上に、数的不利な状況で戦うことになった日本だったが、HO堀江翔太バイスキャプテンが「DFでは全体に粘れた」と語ったとおり、14人で戦った10分間に失点は許さず。
ハーフタイムまでに日本とイタリアがPGを1本ずつ加え、13-13で後半へ。

突破をはかるPR畠山とフォローするPR三上。スクラムだけではなくフィールドプレーでも活躍した
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攻守に激しいプレーでチームを引っ張ったリーチ主将。「内容には納得していない」とも
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最後は「世界一、長いスクラム」で勝ち切る

「キックオフは良かった」
試合後ジョーンズHCが振り返ったとおり、後半のリスタートでボールキープに成功した日本がいきなり敵陣に攻め込み、今度は反則の繰り返しによってWTBジョヴァンバティスタ・ヴェンディッティにイエローカード。
2分、8分とFB五郎丸PGを決めて日本がリード(19-13)。
12分にイタリアにPGを返されたが、19分に粘り強くアタックを続けた後、CTBマレ・サウがイタリアDFを突き破ってトライ。
34分にイタリアNO8ロベルト・バルビエリにトライ(ゴール)を許して、3点差に迫られる。

PGで同点、トライならもちろん逆転。
劇的な逆転勝ち、あるいは引き分けに持ち込もうとしたイタリアだが、最後の最後に待っていたのは「世界一、長いスクラム」(ジョーンズHC)
確かに、試合終了間際の3分間のプレーはほぼスクラムのみ。
最後までしっかり組み勝ち、途中フリーキックでもう一度スクラムを選択しながら、時間を使うクレバーな試合運びも見せて、3点差のままイタリアを葬り去った。
「スクラムがテストされる試合だったが、優位に立っていた。足のポジションもボディポジションもいいし、しっかり8人で組めている」
ジョーンズHCは北米遠征に続いてスクラムが一番の勝因であることを強調。
イタリアのLOクインティン・ゲルデンハウス主将も「以前はスクラムで苦しんでいたが、いまは武器になっている」と、日本のスクラムの成長ぶりを讃えた。
「あれだけスクラムにこだわってくるイタリアにしっかりスクラムを組めたのは自信持っていい。バックファイブが押してくれているのが大きい。イタリアのスクラムはイメージ通り強かったし、こちらもイメージ通りいい準備できて、しっかり組めた」(PR畠山)

再び、安定したスクラムをベースに試合をコントロールし、この日はBKが仕留める好循環も。
ラグビーワールドカップ前哨戦のサモアやカナダ、欧州の強豪イタリアも含めて8テストマッチ全てに勝利した日本代表は、着実に世界トップ10に向けて成長を続けていることをアピールして春シーズンの戦いを終えた。

テストマッチ連勝記録を10に伸ばし、春シーズンの有終の美を飾った日本代表
photo by RJP Kenji Demura