RWC2大会連続引き分けた好敵手との
ジャパンの進化を証明するアウェー戦

北米遠征中の日本代表は現地時間の7日(日本時間8日)、バンクーバーでIRBパシフィック・ネーションズカップ(PNC)第1戦、カナダ代表とのテストマッチを迎える。
07年のフランス、11年のニュージーランドと2大会連続してラグビーワールドカップ(RWC)で引き分けた因縁の相手とのアウェー戦。
前週のサモア戦で日本代表としてのテストマッチ史上最多連勝記録(7連勝)を更新。IRB世界ランキングでも史上最高位タイとなる12位に浮上したエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)率いる日本代表としては、進化を証明する一戦となる。

(text by Kenji Demura)

カナダ戦を前にバンクーバーでチームに合流したSH田中
photo by RJP Kenji Demura
香港戦の後、1試合だけSRレベルズの試合に出場したHO堀江副将もカナダ戦で復帰
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前週のサモア代表、翌週のアメリカ代表という来年のRWC前哨戦シリーズに挟まれるかたちでのカナダとのアウェー戦。
もちろん、来秋のイングランドでの直接対決が決まっていない相手との対戦とはいえ、日本代表のモチベーションは全く下がっていない。

「全部のテストマッチが重要。ひとつのテストマッチが他のテストマッチより重要ということはない。日本がテストマッチで7連勝したのは過去なかったこと。連勝を8に伸ばすのが目標となる」(ジョーンズHC)

「ワールドカップまでの15試合で少しずつレベルアップしていかないといけない。いままでのジャパンはワールドカップの前の試合では勝てていても、ワールドカップ本番では勝てていない。カナダとはワールドカップで2回続けて引き分け。勝つのはもちろん、W杯でも自信を持って臨めるように内容にこだわっていきたい」(FLリーチ マイケルキャプテン)

リーチキャプテンが認識しているとおり、カナダは日本がRWCで2大会連続引き分けている相手。
「11年ワールドカップでは試合の中で問題が起きた時、対応できなかった」と、リーチキャプテンは自身のRWCでの苦い経験を振り返るが、後半2トライを取られて追いつかれた2年前のカナダ戦も「対応できなかった」一戦であることは間違いないだろう。

「今度はそういうことにならないように、対応できる、しっかりしたシステムをつくっていきたい」(同キャプテン)
昨季のPNCではホームゲームで辛勝(16-13=13年6月10日、名古屋市瑞穂公園ラグビー場)しているが、アウェー戦の今回こそ、より「進歩した対応力」を試すかっこうの機会となる。

RWCへの進化の過程をチェックするという意味では、サモア戦やアメリカ戦よりも重要かもしれないカナダ戦で、ジョーンズHCは再び「ベストメンバー」で臨むことを宣言。

8大会連続となるRWC出場を決めた香港戦(5月25日、国立)の後、一度、所属するメルボルン・レベルズに戻っていたHO堀江翔太、CTBマレ・サウと共に、今季初めてSH田中史朗もバンクーバーで日本代表に合流。
現況では最強と言っていい布陣で宿敵のカナダと対峙することになる。

バンクーバーでの練習中にE.ジョーンズHCと共にFB五郎丸副将に指示を出すL.ジョーンズコーチ(右)。DFとブレイクダウンを担当
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ラインアウト担当のボーズウィックコーチ(左端)も合流。大野、トンプソンのLOコンビはRWCで2度カナダと対戦済み
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「相手をゼロに抑えたい」(SH田中)

コーチングスタッフも香港戦後に加わったリー・ジョーンズ前香港代表監督に続いて、5月31日のイングランド・プレミアシップ決勝戦で現役を引退したばかりの元イングランド代表スティーブ・ボーズウィック主将もバンクーバー入り。
ジョーンズコーチは主にディフェンスとブレイクダウンを、そしてボーズウイックコーチは主にラインアウトとキックオフを担当する。

「ベースにあるストラテジーは変わらないが、ふたりのコーチが持ち込んでくれている新しいテクニックによって、タクティカルは少し変わるかもしれない」(ジョーンズHC)

日本代表メンバーの中で唯一、過去2度のRWCのカナダ戦で先発出場しているLOトンプソン ルークは今回のアウェーでのカナダ戦のポイントを「フィジカル、メンタル両方のチャレンジ」と、表現する。
若手中心だったとはいえ、ジョーンズHCが「フィジカル的には世界で一番大きい」と評価するサモアの当たりをしっかり受け止めて快勝したような戦いを続けたいところだ。

「みんな自信を持っているのを感じた。キックが増えたり賢く戦えるようになっているし、コミュニケーションの部分も随分良くなっている」
南半球でのタフな経験を続けるSH田中は、久しぶりに加わった日本代表の着実な成長ぶりに関して、そう語る。
ひとりひとりの、そしてチームとしての進化を感じとっているからこそ、カナダ戦に関して突拍子ないような目標も立てている。
「(相手の得点を)ゼロに抑えたい。極端な話、3-0でもいい。まずはDFを強化した上で自分たちの戦いをしたい」(田中)

「フィジカルだし、メンバーの半分が欧州でプレーしていて経験値も高い」とジョーンズHCが警戒するカナダに対して、田中が求めるような理想に近い戦いぶりを実現して、RWCベスト8入りへ弾みをつけたいところだ。