アジアラグビーセブンズシリーズ(AR7S)
第2戦タイセブンズ レビュー
“事実上の決勝戦”で香港に際どく逆転勝ち
中国大会に続き2シリーズ連続アジア王者に
9月26、27日、タイの首都バンコク近郊でアジアラグビーセブンズシリーズ(AR7S)2015第2戦となるタイセブンズ2015が行われ、カップ準決勝で香港を延長戦の末24—19で下した後、同決勝では韓国に45—7で快勝。
第1戦の中国大会に続き、シリーズ2連覇を果たした。
大方の予想どおり、香港と戦ったカップ準決勝が事実上のファイナルとなった。
「向こうが先制点を取ったら、香港は乗ってくる。先制はさせずにジャパンが先制しようと臨んだ」(桑水流裕策キャプテン)
試合開始のキックオフから敵陣に攻め込んだ日本は、いきなり1分にPKからボールを回して、後藤輝也が思い切った走りで香港DFのギャップを突いてトライ。
思惑どおりの立ち上がりとなったが、時間の経過とともに次第に試合は香港ペースとなる。
9月5、6日に青島で行われたAR7S第1戦の中国セブンズではカップ準々決勝で地元の中国に足元をすくわれた香港だったが、マックス・ウッドワード、アレックス・マックイーン、ローマン・バーティなどの力強い走りや
ブレイクダウン周りでの粘り強さなどは復活。
日本も粘り強いディフェンスで対抗していたが、6分にゴール前のPKからそのままねじ込まれるようにトライを奪われ、前半終了間際にもハーフタイム前のラストプレーのPKを「絶対にやってはいけないプレー」(瀬川HC)で自陣から攻めるが、アグレッシブに前に出てきた香港ディフェンスにターンオーバーされた後、キック&チェイスでトライを重ねられて、7—12で前半が終了した。
後半は3分に日本がゴール前スクラムから攻めて、トゥキリ ロテ ダウラアコが右サイドタッチライン際で強さを見せ、香港ディフェンスを吹き飛ばしてトライを奪い、12対12。
「10分ハーフなら香港に負けるとは思わないが、7分ハーフなら何が起きるかわからないのが7人制の怖さ」
常々、瀬川智広ヘッドコーチがそう語ってきたとおり、ここ数シーズン、日本とアジア王者の座を争ってきた香港は日本との戦い方を心得ているのも確か。
6分に日本ゴール前PKからジェイミー・フッドが自ら強引に突破を試みてトライラインを超え、12—19と勝ち越されてしまう。
「あとワンプレーから同点、そして逆転に持っていった頑張りを評価したい」(瀬川HC)
残りワンプレーでトライを奪い、さらにゴールも決めないといけない絶体絶命な状況に追い込まれた日本だったが、次のキックオフから全員が自分のやるべき仕事に集中。
香港のプレッシャーをものともせず、相手がキックしてきたボールをしっかりキープし、ラックからまず右へ大きく展開。
大外にいた松井千士が前に出て再びラックでボールをリサイクルした後、今度は左へ。一度、彦坂匡克がギャップを突いて香港ディフェンスを真ん中に集めた後、トゥキリ→合谷和弘→後藤輝也とボールをつないで、最終的には今大会で10トライを挙げることになる後藤輝が外側のスペースを悠々走り切ってトライ。
ゴールも決まって、19—19のままゴールデンポイント方式(先に時点を取った方が勝ち)による延長戦となった。
「ゲームのコントロールという点では、1年間ワールドシリーズを経験して、選手に任せてもいいレベルになってきている。前半最後のプレーを後半最後で取り戻したというのは大きい。
個人的なトライよりも組織的なトライを取りたいとずっと言ってきた。そのためには、チーム全体のフィットネスが相手を上回ることが重要で、そこにフォーカスしてきた。チーム全体の組織力、フィットネスで優った」
大会終了後、瀬川HCがそう振り返ったとおり、後藤輝が外側を抜けたにもかかわらず、内側から追いかけてゴール中央へのトライを防ぐような走りをした香港の選手はゼロ。後藤輝は悠々ゴールポスト下にトライし、中央から合谷がゴールを決めて延長へ。
この時点で日本のフィットネスが上回っていたことは明らかで、延長戦、最初のキックオフをキープした日本は後半4分から途中出場していたジェイミー・ヘンリーが大きくゲインして香港陣22mへ。
やはり後半6分から途中出場していた後藤駿弥、松井などが縦への突破を試みた後、またも後藤輝が左外を走り抜けて勝利を決めた。
「セミファイナルの一番苦しい状況の中、あとワンプレーから同点、そして逆転に持っていった点に関しては、選手たちの頑張りを評価したい。
ワールドシリーズで世界のお手本を見ながら、自分たちもそうあるべきだという意識が根付いて、グラウンドに来る前の準備などもしっかりできるようになってきている。
もっと自信を持って、さらにレベルアップしていきたい」と瀬川HC。
韓国との決勝は試合開始のキックオフから攻めて、縦に突破した彦坂のオフロードパスを受けた合谷が走り抜けたのを皮切りに前半3本、後半5本のトライを重ねて45—7で快勝。
気温が35℃を超える厳しい暑さの中、厳しい状況にあっても確実に勝ち切る力を見せつけたことで、11月に控える五輪予選に向けてチームは順調に成長を続けていることを印象づける大会となった。
text by Kenji Demura
カップ準決勝終了間際に同点に追いつくトライに続いて延長でサヨナラトライを決めて喜ぶ後藤輝(右端) ©JRFU, photos by Kenji Demura
カップ決勝の韓国戦でトライを奪う松井。この試合でハットトリックを記録するなど相変わらずの決定力を披露 ©JRFU, photo by Kenji Demura
攻守に存在感の大きさを披露したトゥキリの調子が上がってきたのは日本にとっては大きい ©JRFU, photo by Kenji Demura
一躍ヒーローになった後藤輝は真のエースランナーに成長できるか(写真は香港戦の同点につながるトライ) ©JRFU, photo by Kenji Demura