香港での「厳しい6試合」制し

いざリオデジャネイロ五輪へ

11月7、8日、香港でリオデジャネイロオリンピック(リオ五輪)のアジア予選となる「7人制ラグビーアジア予選 香港大会」が行われる。

男子セブンズ日本代表にとっては、7人制ラグビーのアジアでの聖地・香港スタジアムでの「厳しい6試合」(瀬川智広ヘッドコーチ)を制して、リオ行きキップを手に入れるための命運を賭けた戦いとなる。

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香港でもこんなシーンが見られるか。リオ五輪予選に臨む男子セブンズ日本代表(写真はタイセブンズ時)
photo by Kenji Demura

「いよいよという感じ。緊張感が強い。正直、考えれば考えるほどいいイメージは浮かんでこない」

大会開幕を2日後に控えた5日午後。

この日、一気に蒸し暑さが増した香港での現地練習を終えた桑水流裕策キャプテンは、早くも緊張感に包まれていた。

それは「大事な試合の前はいつもそう。悪い結果ばかり考えてしまう」という桑水流キャプテンの個人的な性格によるところも大きいだろうが、今大会がそれほどの重圧をチームに強いる種類のものであることも確かだ。

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チームを引っ張る桑水流主将。「勝って日本ラグビーのブームを加速させる」と意気込む
photo by Kenji Demura

 

来年のリオ五輪で正式種目となる7人制ラグビー。そのアジア代表として出場権を獲得できるかは、泣いても笑っても、この予選にかかっているのだ。

 

今季のアジアセブンズシリーズ3大会(中国、タイ、スリランカ)全てで優勝するなど、日本がアジアの7人制ラグビーを牽引する存在としての地位を固めつつあるのは確かだ。

 

「決勝まで行けば、間違いなく勝つ自信はある。ただし、そこに行くまでに、先を見てしまうと難しい。一戦、一戦しっかり戦っていくことが必要だし、その一方で、メンバーの体力の温存も重要になる」

瀬川ヘッドコーチはそう引き締めるが、実際、9月26、27日に行われたタイセブンズでは、準決勝で対戦した香港に終了間際までリードされ、残りワンプレーからのトライ&ゴールで追いついての延長戦で辛くも逆転勝ちを収めるという際どい戦いも経験している。

 

11月とはいえ、気温が30度に迫り、独特の蒸し暑さの香港。しかも、試合会場は7人制ラグビーにおいては世界一の祭典と言っていい香港セブンズが行われる、泣く子も黙る香港スタジアム。緊張するなというのが無理と言っていい舞台装置でもあり、瀬川HCがいう「厳しい6試合」が待ち受けているのは紛れも無い事実なのだ。

 

「セブンズも15人制に負けないくらい

ハードワークしてきた。次は我々の番だ」

 

その厳しいアジア予選で日本が入っているのはプールA。大会初日の7日に、中華台北、シンガポール、韓国と対戦(対戦順)。

大会2日目にプール最終戦で中国と戦い、A組2位までに入れば、カップ準決勝へ進み、同・決勝戦を制した優勝チームがリオ行きキップを手にすることになる。

 

「1、2戦は自分たちのやってきたことをしっかり。意識するのはファンダメンタルの部分。変に軽く考えないで、ボール動かすという部分にこだわってプレーしたい」

 

「正直、力の差はある」という、中華台北、シンガポールと戦う序盤戦に関してのテーマを瀬川HCはそう語る。

 

また、同HCがひとつのポイントと考えている初日の3戦目と2日目の1戦目で対戦する韓国、中国に関してはそれぞれ「韓国はいままで若いチームだったのが、ベテランが戻りいままで以上にフィジカル。中国は調子の良かった青島大会(中国セブンズ=9月5、6日)に出場していたメンバーが戻ってきている。コンタクトの強さを前面に出してくる。ポテンシャルは高い」と分析している。

 

そして、もう一方のプールBを制してカップトーナメントでの対戦が予想されるのはスリランカと香港。

「スリランカは彼らの走力。アンストラクチャーからのカウンターを狙ってくる。香港はフィジカルにラグビーをしようとしてくる。そこで受けると苦しくなる」

 

「マノ(レメキ ロマノ ラヴァ)が戻ってきて、藤田(慶和)もアタックの部分ではいいものを持っている。チーム力は上がっている」

そう現在のチーム状態に自信を持つ瀬川HC。

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香港での前日練習中、リラックスした表情を見せる瀬川HC。「自然体で準備ができている」ことを強調
photo by Kenji Demura

 

コンディションの問題もありアジアシリーズではプレーしなかったレメキは「フィジカル面は100%、気持ちは200%。自分の役割であるラインブレイクを重ねたい」と抱負を語る。

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今年の香港セブンズでのレメキ。大舞台で完全復活をアピールする
photo by Kenji Demura

 

また、ラグビーワールドカップ2015でセンセーションを巻き起こした15人制代表から唯一五輪のアジア予選スコッド入りメンバーとなった藤田は「しっかり7人制モードに戻っている。外に速いランナーが揃っているので、走るだけというかたちでボール渡せればベスト。7人制ではそういう役割も大事になる」と、15人制とは違う面を見せることも示唆する。

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15人制RWC2015スコッドからは唯一五輪予選メンバー入りした藤田。「7人制モードに戻っている」ことを宣言
photo by Kenji Demura

 

「アタックはインサイドサポートでどれだけボールキープできるか。ディフェンスでは規律。まずは反則しないということ。あとはタックルで起き上がるスピードとか、やってきたことをどれだけゲームで出せるか。そして、最後は走り勝つ」

 

桑水流キャプテンは厳しい五輪のアジア予選を勝ち抜くポイントをそう語る。

 

「15人制の活躍は嬉しかった。セブンズも負けていられない。我々も15人制に負けないくらい、6月からハードワークしてきた。次は我々だ」(坂井克行)

 

イングランドからの朗報で日本中が盛り上がったように、次は香港からの朗報で日本でのラグビーブームに輪をかけてもらいたい。

 

text by Kenji Demura