第4回「ワールドカップセブンズ」(Rugby World Cup 7's 2005)が3月18日~20日、香港において開催されました。7人制日本代表は予選プールで5試合を戦い3勝2敗。決勝トーナメントでは、プレートトーナメントに進出し、初戦で敗退という結果に終わりました。
大会を終えて帰国した本城和彦・7人制日本代表監督、山口智史キャプテン、そして四宮洋平選手が25日、日本協会2階ジャパンクラブで会見を開きました。以下はその模様です。

◎本城和彦・7人制日本代表監督

本城和彦・7人制日本代表監督
本城和彦・7人制日本代表監督

「多くの皆さんにご声援をいただき、ありがとうございました。成績はご存じの通りですが、予選プール2日間の5試合。この間の選手のパフォーマンスについては、たいへん満足しています。選手に感謝しています。

ただぼくらは、真剣に勝負をしに行った。トップ8入りを狙って、その結果、そこまで到達できなかったわけで、ぼく自身悔しい思いでいっぱいです。それと同時に、チームをそこまで導けなかったことについて申し訳ないと思っています。香港で観戦してくださったファンの皆さんをはじめ、協会関係者など含めて、監督としてお詫び申し上げたい。

いくつかの課題のなかのひとつに、コンスタントに力を発揮する、ということをあげていました。最初の5試合は、どのゲームも選手が力を十分に出し切ってくれて満足でした。しかしこういう結果になったということは、チームとしていろいろな部分で少しずつ足りないものがあった、あるいはチームづくりのなかで、6試合、7試合までもたせられるところまで到達できなかったかな、というのが大きな意味での総括です」

◎山口智史・7人制日本代表キャプテン

山口智史キャプテン
山口智史キャプテン

「本城監督は、ぼくがセブンズのツアーに初めて参加したのときに就任されました。今回のワールドカップには、3年間やってきたことの集大成ということで挑んだのですが、ぼく自身、あまりいいパフォーマンスができなかったし、チームとしてもベスト8の目標を達成できず、最後のロシア戦の後は、本当に悔しい思いでいました。

主将として、チームをうまく率いることができたのか、いま考えると、もっといろいろできたのではないかと思います。ぼくは、予選プールでのオーストラリアとの試合をすごく意識して、勝てたらベスト8という目標が達成できたのですが、オーストラリアに負けてしまいました。それでも2日目は香港、ポルトガルと勝てて、最終日の決勝では、プレート優勝をにらんで、2回戦で当たるであろうサモアまでは絶対いこうという意思統一はできていたんですが、最初のロシア戦に負けて、みんな落胆してしまった。キャプテンとしてなにもできなかったのが悔しかったし、またセブンズを、このチームで戦いたいと改めて思いました」

◎四宮洋平選手

四宮洋平選手
四宮洋平選手

「今年の始めから南アフリカでプレーしている関係で、韓国で行われた(7人制日本代表の)セレクションマッチに出られなかったのですが、本城監督からワールドカップのメンバーとして呼ばれて、ひじょうに光栄に思いました。自分のラグビー人生の夢のひとつであったし、そこでプレーできたことについては、ファンの方々、日本協会の関係者など皆さんに感謝しています。ありがとうございました。

セブンズは多い日には1日に3試合することがあるのですが、特に我々日本代表がうまく調子を出せないのが、だいたい朝の試合です。そのあたりをいま考えてみると、気持ちの面でうまくコンディショニングできなかったのが敗因のひとつだったかなと思います。もちろん結果としては、トップ8の目標には遠かったのですが、チームの雰囲気は香港に着いたときからまとまっていて、ぼく自身もこのままいけばベスト8も夢ではない、ベスト8を超えて優勝をも狙えるチームだと確信していました」

記者からの質問に答えて

――世界の舞台に立って、いまのジャパンに足りないと実感したことは?
本城「細かい分析はまだ終わっていないのですが、先ほど申し上げたように、やはりいろいろな部分において少しずつ足りないものがあったように思います。しかしそう思いつつも一方で‥‥トップ8を全員で目指して真剣にやった結果、ディフェンス的には近いところにあるなという感覚のほうが大きいですね」


――トーナメントに入ってからのロシア戦で敗れたのは、5試合戦って余力がなくなったのか、あるいはなんらかの調整不足があったのか。

本城「四宮君もいっていたように、その日の最初のゲームではどのチームもナーバスになるものですが、ぼく自身の感覚では、前者なのではないかと思います。終わってみて、最高の準備、最高のウォーミングアップができたのが、2日目のポルトガル戦でした。これと比べてロシア戦の前の準備が劣っていたかというと、越えてはいませんが、いい準備ができたと思っています。
残念でならないのは、選手たちが力を出し切れずに敗れたということです。前半、一気に攻めて、ノット・リリース・ザ・ボールで反則をとられて、相手にボールをとられてしまった。そこでトライがとれていればという仮定の話が当然あるわけですが、勝負事ですから。一言でいうと、前日までのチームとはまったくちがっていた。

ぼくがこの3年間、選手に求めてきたラグビーは、本当に過酷なものです。本当に力のあるチームなら、多少コンディションが悪くても、ゲーム中に思わぬエラーが出たりしても、短い時間のなかで立て直してくる。トップ8を狙えるだけのチームに作り上げられなかったということです。

それは最初からある程度織り込み済みで、チームづくりのイメージとしては、トップ8を狙えるだけの実力を身につけるというよりは、そこを目指しつつも、なんとか一戦一戦100%の力を出して乗り切っていくというところにぼく自身が目線をおいていたのは事実。それで予選プール5試合、すべてをそういうかたちで選手たちが乗り切ってくれたので、最後の6試合目になって、余力が足りなかったというところだと思います」

山口「ロシア戦前のアップは、ぼくもそう悪いものではないと感じていました。が、試合展開もありますが、外からみていて力をうまく出せないという感じがありました。みんなと話してみても、疲労の蓄積、けがというものはなかったのですが‥‥」


――国内でこれだけセブンズの試合が少なくなっている状況は、やはりマイナスになっている?

本城「当然マイナスになっていると思いますね。監督という仕事には大きくふたつあると思っています。ひとつは、そういったチームをとりまく環境を、各方面と折衝していい方向にもっていくこと。この部分、ぼくも3年間だいぶ力を入れたんですが、やはりできることとできないことがあります。しかしこれからも、そういった環境は改善していかなければならない。

ふたつめは、そういう働きかけをしたうえで、最大限のところにチームを導くことだと考えています。その腹がくくれなかったら、監督をやるべきではない。それを承知で監督を引き受けて、トップ8を狙うという宣言をしてきたわけですから、今回の結果はきちっと受けとめなければならないと思っています。

一応ぼくの3年間のチームづくりは、これでひと区切りです。今後のことで、個人的に思っているのは、ぼく自身、次のチームを強くする使命があるということ。それは監督かどうかということでなく、なんらかの関わり方があろうと思います。

今回、協会関係者の方も、ファンの方も、たくさん香港に来ていただいて、セブンズのひじょうにレベルの高いゲーム、会場の雰囲気を目の当たりにされていると思う。そういうタイミングもありますし、2006年のアジア大会はセブンズだけになり、2012年のオリンピックも(7人制ラグビー採用が)現実的にみえてきたという状況のなか、先ほど申し上げたような使命がぼくにはあるし、いまそれができるのはぼくしかいないと思っています。

やはりセブンズの発展が、15人制を含めて日本のラグビー界の発展にもつながるし、そういう目線で物事を考えていくべきと思います。もちろん、できることとできないことがあるわけで、大事なことはそういうことを1回出して、議論することでしょう」

――24日の日本代表のセレクションマッチのときに、セブンズでやったことがディフェンスの返りなどものすごく勉強になったと小野澤選手がいっていて、同時に、初めてセブンズのグラウンドにたったときはなにもできずにとまどったとも話していました。セブンズの強化を考えたとき、シーズンオフのときに特別なトレーニングを行う、あるいは15人制との連携のなかで行っていくという考え方ですか。
本城 「おそらく、15人制との連携をとりながらセブンズの強化を行っていくのが、日本においては現実的だと思います。海外では両者を完全にセパレートしてやっている国もありますが、選手層の厚さを考えると、セパレートするのはリスキーな感じがします。

組織的な強化ももちろん必要ですが、7人制のほうが個人の能力に負うところが大きい。ひとつひとつのプレーにおける個人の能力をいかに引き出していくかが重要で、そのことは、15人制にとってもマイナスになることはなにひとつないと思っているんです。だからこそ15人制ともっと連携をとっていくことが大事ではないかと思います。

やはり、国内のリーグのスケジュールをどうするのかまで含めて、抜本的にいろいろなことをトータルに考えていく必要があると、ぼくは思います。15人制の代表、7人制の代表、そして国内のラグビーをどう盛り上げていくか、そのためのひとつの理想の絵をまず描いていく必要があるのではないでしょうか」


――今回のワールドカップで印象に残った選手をあげてください。

本城 「チームではいつも選手を表彰しているんですが、今回のMVPはネイサンです。攻守にわたって大活躍をしてくれました。それと敢闘賞というか、カトニ。彼のポテンシャルはとても高いものがある。あとは有賀ですね。ビッグな大会は初めてだったのですが、そういうことを感じさせないバランスのとれたいいプレーヤーです。それにラッキーボーイ的なツキをも感じさせてくれました。

そしてここにいる四宮ですね。南アフリカでもまれてフィットした身体で香港に来てくれ、トライゲッターとしての使命を果たしてくれました。そして山口。ぼくがこういう性格できついことを選手にがんがんいったりしているなかで、癒し系キャプテンと呼んでいるんですが(笑)、背伸びすることなく、素のままでチームをまとめてくれて、ぼくとのいいバランスでチームをつくれたのではないか。最後にハレ・マキニ。今回、けが人が出た場合のバックアップとして連れていったのですが、本当に一生懸命練習してくれ、性格も明るく、チームの一体感をつくる上で大きく貢献してくれました」

――四宮選手、今後、15人制の日本代表に選ばれるチャンスがあったらどうしますか。
四宮 「可能かどうかはチーム、エージェントと話をしないといけないのですが、ぼく自身の意思としては、15人制の代表として活躍したいという気持ちは強くあります。海外でやっているのも、日本代表として活躍するためであり、日頃も、日本のラグビーに貢献したいと思いながら、プレーしています」