――声を荒げたあの監督、顔が青ざめたこの監督――

関東学院・有賀選手は動きすぎか?
石川: さて、関東学院は、有賀選手、北川選手です。
村上: 関東学院はいい選手がいっぱいいるので難しいんですよ。でも大東大戦の有賀君のステップ、すごかったです。北川選手も大事なところでトライがとれますし。
石川: 去年までの山村選手の存在は大きかったと思いますが、有賀キャプテンはどうですか。
春口: ちょっとタイプが違いますね。有賀はあまり人に言わないですね、いろいろなことを。亮さんもあまり言わないんですが、ニコニコ座ってる。有賀は自分からどんどん動くというか、だんだん変わってきましたかね。いいキャプテンです。この間の試合でも「オレを信じろ!」なんて。以前はそんなこと言わなかった。
上田: 法政との試合をみたときに、厳しさを感じました。
春口: 有賀が前に出たとき、みんな裏へのキックを狙ってきますから、北川ともうひとりのウイング――中園か、朝見か、妖怪って呼んでますけど――でうまくそこをカバーしてくれると、有賀が思いきり動けるんです。早稲田のコーチのイマキヨ?
村上: 今泉さん。
春口: イマキヨが「動きすぎだよ」とか言ってましたけど、有賀はもっと動いたほうがいいかな、と。
村上: いらんこと言うなと(笑)。
春口: この間の法政の試合では、フランカーもやってましたからね。‥‥早稲田はコーチ陣がそろってるよね。京都まで高校生の試合を見にいけるんだからね、監督が。高校生がやっているときは、大学生もやっているわけで。
清宮: 違うんですよ。空けてあるんですよ(笑)。
春口: ジャパンをみるべきであるようなコーチ陣が、早稲田だけをみている‥‥そこがちょっと不満だなあ。ましてや大監督が高校生を見にいくなんて。
清宮: 私がリクルート行くのはそのときが最後ですよ。高校生が勘違いしちゃうんで、監督は行くべきではない。
春口: それは高校の有名選手のところに行くから。我々は有名選手なんか声もかけたことない(客席ウケる)。
清宮: いや、1月になれば花園にいるし、今もう2年生をみてるでしょう?
同志社には人材がそろっていない?
石川: 同志社にいきましょう。正面選手、大橋選手、君島選手です。
村上: 正面君がすごくよくなった。トライへのお膳だて、ディフェンスも。髪形は変わりましたが(笑)。センターの大橋選手はものすごく突破力がある。
山神: 正面をブラインドサイドに使ってチャンスメイクをする。で、大橋のいいところは力を出し惜しみしないこと。一所懸命走って、一所懸命タックルもいくし、そういう意味では正面と大橋は計算がたつ選手ですね。君島は才能豊かな選手だと思うんですが4年生になって厳しさが分かってようやく花開いた感じです。パスも上手ですし。
同志社大学・山神孝志コーチングアドバイザー
同志社大学・山神孝志コーチングアドバイザー
上田: 3人ともユースの代表で私が担当したときのメンバーですから、彼らがレギュラーで出ているのはうれしい。正面はたぶんトヨタに入ってスタンドオフをやるはずなんですよ。スピードもあるし、おそらくボールをたくさん触れるポジションがいい。だからブラインドサイドでも機能しているんでしょう。だから外へ回すよりも、内側で勝負できるかが同志社のポイントではないでしょうか。
石川: 同志社というと、東京が苦手という話がいつも出ます。
山神: 3年前に早稲田とやったときに、早稲田の選手はすーっとグラウンドに出てくるのに、同志社の選手はスタンドを見回すんですよね。こりゃやばいなーと思っていたら、パンパンとやられましたね。どうもお上りさんになってしまう。
上田: 同志社は人材がそろっているじゃないですか。
山神: 関西のいい選手は、京都を通り越してみんな関東に行ってしまいますから。
春口: よく言うよ(客席ウケる)。
清宮: ちなみに早稲田のスポーツ推薦の枠は4人です。
春口: うちは15人。
山神: 8人です。
村上: 法政は?
齋藤: うちはないですね(客席ウケる)。
清宮: 枠がないって、制限がないってことなんじゃないの。
齋藤: 実際のところは11名です。
大学選手権でも出るか、法政・齋藤監督のカメラ目線
石川: それでは法政の注目選手を。森田選手、野村選手、和田選手ですね。
上田: 野村がキャプテンで、光ってますよね。
齋藤: 口数は少ないんですが、光ってます。
右から上田昭夫氏、村上晃一氏、石川アナウンサー
バトルの舵取り。右から上田昭夫氏、村上晃一氏、石川アナウンサー
上田: U21のワールドカップに出たときは、どちらかというと野村のほうがディフェンスがいいということでスタンドオフとして評価が高かったんです。でも森田も日本代表に選ばれましたし、この間の関東学院との試合では途中から出てきて、テンポアップしましたよね、パス能力が高いので。同じ試合でやはり途中出場したスクラムハーフの和田耕二選手もスピードがあっていいですね。
石川: ここで本音を言っているのかウソを言っているのかわからない齋藤さんに、村上さんから法政のポイント、3つあげてもらいました。まずひとつめ、スクラムハーフが起点。
村上: けっこういい選手がいるので、誰を先発にするのか、考えられているのかなと思ったんですけど。
齋藤: あんまり考えてないですね(客席ウケる)。
上田: ちょっとー、石川さん!
齋藤: すみません。先ほど言われたように基本的に森田・野村がキーになるんですが、今年うちがいちばん弱いところが、フォワードからの球出しです。森田の場合、動きながら球を出されたときに非常に能力を発揮するんですけれども、逆にいえば野村は球が止まった場合でもそれを活かせるという特徴があるので、ハーフについては気をつかってますね。関東との試合では、ゴール前まで行ったときに、ここで和田を投入すればトライがとれるという感触があったので、入れました。そこまではよかったんですが、後半がちゃがちゃにやられました。
法政大学・齋藤実監督
法政大学・齋藤実監督
上田: あのタイミングが絶妙でしたよね。選手を入れ替えてすぐ、その入れた選手がトライをとるというのは、監督の入替えのタイミングですから。
齋藤: いや‥‥。
上田: あのとき、顔にそう書いてありましたよ(客席ウケる)。
石川: あのときちょうどNHKのカメラが前に回り込んで監督の顔をとらえたんですが、カメラ目線でしたね(客席ウケる)。
上田: どうだ、オレの采配だ、って感じでしたよ(客席ウケる)。
清宮: でも、お客さんからみると、なんで最初から出さないんだって思っている方が多いと思いますよ(客席から拍手)。
齋藤: それは皆さんから言われています。やはり関東さんに勝つためには、不意打ちみたいなことが必要だったもので。
石川: ふたつめ。タックル重視。
上田: タックル重視って、どこのチームも同じじゃない?
村上: シーズン前にお話をうかがったときに、小さくても低くてタックルがいい選手を並べたいとおっしゃってたんですよ。
上田: なるほど、そういうことですね。
齋藤: そんなこと言いましたか(客席ウケる)。今年は体の小さな選手が多いので。
石川: 3つめです。小さい。
齋藤: 小さいイメージがついてしまって、大きな高校生選手は早稲田や関東に行ってしまう。
村上: 小さくても法政ならできる、と。
清宮: いや、法政は小さくないですよ。
会場のお客さんの質問に答えて
石川: 同志社の中尾監督あてなんですが、展開ラグビーで関東学院大学に勝てる自信は何%?
山神: もちろん1回戦・2回戦をまず勝ち上がることが前提になりますが、そうですね、バックスにうまく展開できればフィフティ・フィフティ‥‥かなり厳しいと思っています。
石川: 同志社大学に。関西リーグの戦いで、対関東チームの対策は立ちましたか。
山神: やっぱり、当たってみるという感覚がすごく大きいですね。以前、関東の大学と試合をやったときに、選手に伸びしろを感じましたので、関西リーグを通してその経験をいかせればと思っています。
石川: 法政大学に。武村さん(元監督)はお元気でしょうか。
齋藤: はい。いまの時期、忙しいみたいで、季節の変わり目なので、きょうも2件ばかり入っていてグラウンドには来られなかったんですが。
上田: 本業が四谷にあるお寺の住職さんですからね。季節の変わり目っていうと‥‥。
石川: 春口さん。早稲田リベンジのキーワードは。
春口: まとまることでしょうね、早稲田の結束以上に。誰かが言ってたんですが、東芝(東芝府中ブレイブルーパス)が円陣を組んだときに、いいマルができていたと。そういうときには強いんだと。いまの早稲田もそうなんですよね。
石川: 選手指導で気をつけていることは。
春口: そうですね、たばこ・酒・夜遊び‥‥。
清宮: 酒飲むんですか。
春口: 未成年には飲ませないですよ。
清宮: ラグビー部員くらいですよ、大学生で酒を飲まない未成年者は。
石川: 清宮さんへ。テレビでみると口下手のようですが。
清宮: そんなことはぜんぜんない。
石川: 関西弁でないと本音が出ないのでしょうか、聞いてみたいです、ということですが。
清宮: (関西弁は)あんまり出ないですねえ。
石川: それは残念です。
清宮: そりゃあ、話せいうたら、話せますよ。この人、大阪人やから、大阪弁で話さなあかんわあ、みたいな感じやとね。
石川: 上田さんに。早稲田を攻略するポイントを教えてください。
上田:
やや暴走気味(?)か、コーディネーターの上田昭夫氏
やや暴走気味(?)か、コーディネーターの上田昭夫氏

いちばん頭に来たのが、シーズン中に東芝のBチームと試合をしたということです。チームをつくっていくなかで、なかなかそんな冒険できないし、しかも負けた結果、選手のなかに悔しさが出てきたときいて、次元がもう違う。この時点で早稲田を崩すのは難しい。矢富がボールを持ちすぎるところとか、ちょっとつけ入るスキはありますが、そこを突けないんですよね。早稲田にはまず先制すること。それで、曽我部のイメージ豊かなパスにまわりが対応できずにポロッと落とすとか、矢富がダミーを3回くらいして後ろにこけちゃうとか(客席ウケる)、そういうところを突くしかないような。

清宮: ちょっと、しゃべり過ぎじゃないですか?
上田: だって面白くないじゃん。
石川: 春口さん、よろしいですか。
春口: 早稲田はあまり見ていないので‥‥大東文化のなんとかトンガ、見ないといけないから(客席ウケる)。
清宮: 早稲田は今年なにがいいかって、スクラムですよ。この5年間でいちばん強い。そこを見るだけでも、東芝とやる意味はあった。シーズン中に試合をしたのは、元々の年間スケジュールで決めてあったんです。
上田: やっちゃいけないんじゃなくて、そういうふうにスケジュールを組めてること自体、予定通りチームができている、スキがないってことでしょ。褒めてるんだよ(客席ウケる)。
春口: だけどうちにはオックスフォード行くなって言ったんだよ(客席ウケる)。
清宮: うちが前にオーストラリアに行ったでしょ。あれでチームがガタガタになった経験があるから、春さんに言ったんですよ。
法政大学・齋藤実監督
「五寸クギ打つのと同じ」
石川: それでは皆さんに質問です。試合前の儀式について教えてください。ちなみに慶應はどうですか。
上田: ジャージの授与式というのはぼくが始めたんですよ。以前はなかったらしい。
清宮: ジャージは試合前日に監督から手渡ししますね。塩と水と米、あとお札(ふだ)をつけて渡します。これはメンバー以外は見られない。伝統です。
上田: 早稲田の選手は昔、お守りをジャージのえりの後ろにガムテープで付けている選手が多かった。いまはえりが短いのでどうしているか分かりませんが。
清宮: ガムテープじゃないですよ。
上田: テーピングのテープでしょ。おんなじようなもんじゃない。
石川: 関東学院は前日に、監督からグラウンドでジャージを渡されるんですよね。
春口: はい。みんなを代表してジャージを着るわけですから。で、けがをしないようにということで塩ですね。
上田: 早稲田はあと、タックルダミーに相手のジャージを着せてタックルするじゃないですか。
石川: 毎試合ですか。
清宮: あれは慶應戦からですね。慶應・明治・関東‥‥同志社もありますね、在庫は(客席ウケる)。法政もあります。
春口: メーカーから提供されるんでしょ。
清宮: 買うんですよ!
春口: 五寸クギ打つのと同じじゃない(客席ウケる)。なんとなく試合の前の日、体がおかしいんですよ(客席ウケる)。
石川: 同志社はどうですか。
山神: キャプテンが全員の前で渡すという伝統です。ぼくらの頃はジャージに神社の塩がまかれてまして、キリスト教系の大学でいいのかな、なんて違和感がありました(客席ウケる)。
上田: 早稲田は寮の中でジャージを渡すんですか。
清宮: そう、ミーティングをする部屋があるんです。
上田: 全員ではなくて。
清宮: ジャージは(試合に出るメンバー以外に)見せるなっていう伝統があるんです。
上田: 春口さんはグラウンドですよね。
春口: みんなのジャージですからね(客席ウケる)。
清宮: でもそういうふうにして、ジャージは手の届かない存在、憧れの存在ということを昔からつくってきたわけですよ。洗濯も人の前ではしない。それは早稲田も明治も慶應も、みんないっしょです。
上田: 慶應の場合は、見えないように黒いビニール袋に入れてましたね。
石川: 法政はどうですか。
齋藤: やはりジャージは見せないというのが伝統で、合宿所でメンバーに渡していたんですが、年々、ジャージの重みというものが薄れてきた感じがあったので、今年は思い切ってグラウンドで、春口先生と同じようにして、みんなの代表だということで渡してます。まあちょっと、OB会でもめちゃったんですけど(客席ウケる)。
上田: 武村さんがお祓いしたりはしないんですか。年末は忙しいか。
齋藤: そういう能力はないみたいです(客席ウケる)。
上田: 大阪体育大学はなにかありますか。
村上: いまは知りませんが、ぼくらの頃はタックルダミーに同志社のジャージを着せて似顔絵を描いてました。ちょっとお笑いが入るんです(笑)。でもジャージには全員お守りをつけました。必ず自分で縫い付けろって渡されて。
最後は今回もプレゼント抽選会
終了後は会場のお客さんを対象に、抽選で各種プレゼントがそれぞれの監督から手渡されました。賞品は早稲田・関東学院・同志社・法政の各大学から、そしてNHK、日本協会からの提供です。当選された方、おめでとうございました。またご来場くださった皆さま、ありがとうございました。今年も大学選手権をどうぞお楽しみください。