大学選手権ベスト4が激突する正月二日はラグビーファンにはたまらない楽しい1日となる。今年は関東対抗戦グループの4チームということで、それぞれのチームからすれば幾度か目にした対戦であろうが、秋のシーズンから各チームどれ程 成長しているか興味が尽きない。 第一試合は今季二度引き分けている慶應と明治がいよいよ雌雄を決する一戦となった。やや風が吹くも快晴の国立競技場はグラウンドコンディションもよく、2万3千の観客を集め12時15分慶応のキックオフで始まった。 開始から積極的にバックスへボールを動かしていく慶應に対して明治のバックスのディフェンスが甘くなり、たびたびゲインを割られる。慶應ペースで試合は進み前半6分に13番増田、18分には11番出雲がトライ。それぞれゴールも決まり14-0で慶應リード。しかし体格で勝る明治はスクラムやモールでじわじわと慶應にプレッシャーをかけていく。27分明治は慶應ゴール前のペナルティーから再三選択したスクラムで慶應スクラムがつぶれペナルティートライを得る。ゴールも決まり14-7。前半戦はその後、慶應フォワードの踏ん張りや低いタックル、はやい球回しで慶應ペースが続く。31分に14番山田、38分には6番山崎がトライ、ゴールも決まり28-7。慶應は理想的な試合展開か。終了間際42分に明治はペナルティーゴールを得て成功、28-10で前半を終える。意外な点差となった。明治が風下を選択したのは作戦か。 後半は一転して明治ペースとなる。キックオフ直後から慶應ゴール前に迫り得意のスクラムで押し込もうとするが、慶應も意地でこらえる。攻防10分、何度スクラムを組んだだろうか。後半12分明治はついに慶應を押し切り8番宇佐美がトライ、ゴールも決まり28-17。意気あがる明治に対して前半ほどボールを動かせなくなった慶應だが、23分貴重なペナルティーゴールを得て成功31-17。明治フォワードの突進は続く。29分8番宇佐美のトライ、ゴールならず31-22。慶應も攻めて35分ペナルティーゴール成功、34-22。諦めない明治は38分、慶應ゴール前のモールから8番宇佐美この日3つ目のトライ、難しい位置のゴールならず34-27。ロスタイム3分の攻防は今年三度目の同点かとも思われたが、慶應が明治陣地内で戦えたことが余裕をもたらし、試合終了。慶應はゴールキックをすべて成功させたこととラインアウトで有利に戦えたことで持ち味を生かせたのではないだろうか。明治も力は出し切ったと思う。ナイスゲーム。(坂田光司) 慶應義塾大学 34-27 明治大学(1月2日、準決勝 at国立競技場) 明治大学の藤田監督(左)と、上野キャプテン ◎明治大学 ○藤田剛監督 「振り返ってみますと、前半は少し受けてしまったかもしれません。後半は良いラグビーをしましたが追いつけませんでした。明治のFWが、これだけ強いのなら、もっとこだわらせれば良かったと反省しています」 ――後半は速く素晴らしいテンポだったが。 「テンポを速くするより、明治のラグビーは『前へ』です。それが生まれて、初めてテンポが出てくると思います。前半は少し出し切れなかったが、後半は体を張って『前へ』修正できました。今日の前半は間合い、つまりBKのスペースが狭かったので、踏みとどまって前へ出られなかったと思います。しかしながら、明治の歴史の重みを上野キャプテンがよく理解して、一緒になってチームをつくってくれたので、良いチームになったと思います」 ○上野キャプテン「前半は体を張ったゲームができませんでしたが、後半は明治らしいラグビーができて良かったと思います」 ――後半良かったのは。 「後半の姿が本当の姿です。前半は、中盤に対してFWでこだわるところが見られなかったので、ハーフタイムにこだわろうと言いました」 ――早明戦以降は。 「早明戦はふがいなかったです。自分たちに何が足りないのか、学生たちで話し合って納得して練習したのが良かったと思います」 慶應義塾大学の林監督(左)と、中浜バイスキャプテン ◎慶應義塾大学 ○林雅人監督 「今日は慶應としては、ディフェンスは低いタックル、オフェンスは速いラグビーを目指しましたが、前半は遅くて、ハーフタイムにもっと上げようと指示しました。前半の4トライの貯金を何とか守りきった試合でした。四つのトライはラインアウトとカウンター攻撃からで、意図した通りでした。相手スクラムをどう堪えるか、自陣でスクラムが何回あるかで勝敗が分かれると思っていましたが、FWがよく頑張ってくれたと思います」 ――前半はうまく攻めましたが。 「相手のディフェンスがドリフトだったので、「タテから外」の予定をやめて、タテ、タテと行きました。四つ目のトライもラインアウトからタテに入って増田がトライしました。普段は外へ回すところですが、インサイドを突いた肝心なプレーが良かったと思います」 ――5mスクラムがなかったが。 「5mもそうですが、得点されたラインアウトモール、ああいう場面をつくらないように作戦を立ててきましたが、FWが頑張ってくれました。金井、加藤が抜けたなかで正直、フロントのメンバーリングは厳しかったのですが、互角にやってくれました」 ――決勝は。 「フィットネスで上回れると思ったら速いゲームをつくりますし、逆ならこちらのペースで行こうと思います」 ○中浜聡志バイスキャプテン「大きい明治のFWに、小さい慶應のFWが勝つには走り回って、低いタックルで行くしかありませんでした。前半はできたかと思いますが、後半は明治さんに圧倒されたと思います。次、決勝戦も頑張ります」 ――今日は攻め方を変えたのか。 「山田、出雲と二人のエースが居るので、相手は外を警戒していました。そのため、ドリフトディフェンスでしたので、増田がタテを突いたのが良かったと思います」 ――後半、風下ということだけでなく攻められたが。 「明治さんが体を張ったということですが、僕らも中身が変わったと思います。後半はキックオフでミスがあり、入りが悪かったのがこの結果だと感じています」 ――ペナルティゴールを狙ったのは? 「チャンピオンシップでは時間の使い方も大切ですが、7点差より10点差と考えたのと、明治がトライするまでの時間を考えて狙いました。2回成功できたのは良かったと思います」